竹とんぼ

先達の秀句を味わいながら
自得の一句を求めて多作多捨です
古希すぎの晩学で楽しみながらの遅々緩歩です

歳晩の夕餉は醤油色ばかり 櫂未知子

2018-12-28 | 



歳晩の夕餉は醤油色ばかり 櫂未知子

今はそうでもないかもしれないが、昔の「歳晩(年の暮)」の食卓情景は、たしかにこういう感じだったと懐かしく思い出す。歳晩の主婦は、なにかと新年の用意に忙しく、あまり日々の料理に気を遣ったり時間をかけたりするわけにはいかなかった。必然的に簡単な煮しめ類など「醤油色」のものに依存して、そそくさと夕餉をやり過す(笑)ことになる。煮しめと言ったつて、正月用の念入りな料理とはまた別に、ありあわせの食材で間に合わせたものだ。したがって押し詰まれば押し詰まるほどに、食卓は醤油色になっていき、それもまた年の瀬の風情だと言えば言えないこともない。昔はクリスマスを楽しむ風習もなかったから、師走の二十日も過ぎれば、毎日の夕餉の食卓はかくのごとし。農家だったころの我が家は、晦日近くになると、夕餉の膳には餅が加わり、これまたこんがり焼いて醤油色なのである。食べ物のことだけを言っても、このように歳末の気分を彷彿とさせられるところが、俳句の俳句たる所以と言うべきである。「俳句界」(2007年12月号)所載。(清水哲男)



【年の暮】 としのくれ
◇「歳晩」(さいばん) ◇「年末」 ◇「歳末」 ◇「年の瀬」 ◇「年の果」 ◇「年の終」 ◇「年の残り」 ◇「年尽く」 ◇「年果つ」 ◇「年つまる」
12月も半ばを過ぎると、いよいよ正月の準備が始まり、年の暮の実感が生まれる。一年の節目としてのあわただしい暮しの中で、年を惜しむ心境や新年を待つ心持のないまぜとなった気持ちが重なる。

例句              作者

小傾城行きてなぶらん年の暮 其角
路の辺に鴨下りて年暮れんとす 前田普羅
うつくしや年暮きりし夜の空 一茶
耳も目もたしかに年の暮れんとす 安部みどり女
深大寺蕎麦が熱くて年の暮 大嶽青児
映すものなき歳晩の潦 永方裕子
年暮るる振り向きざまに駒ケ獄 福田甲子雄
下駄買うて箪笥の上や年の暮 永井荷風
歳晩の脚立に妻の指図待つ 安居正浩
忘れゐし袂の銭や年の暮 吉田冬葉
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