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朝鮮半島情勢について:第2次朝鮮戦争は起こるか?( 2 )

2017-12-30 16:00:17 | 時事
『第2次朝鮮戦争は起こるか?( 1 )、(2)』 2017/12/12  大島 新

大島新氏プロフィール
岡山大学法文学部英文科卒(1956年)、米国ミシガン大学大学院修士課程修了(1958年)。
高知大学名誉教授、関西外国語大学名誉教授。専門は言語理論(変形生成文法)。
米国マサチューセッツ工科大学大学院言語学科研究員(1975年-1976年,1984年-1985年の計2年間、チョムスキー研究室)。
                              
前回の「第2次朝鮮戦争は起こるか?( 1 )」の項目は
・核開発
・朝鮮半島(韓半島)の小史
・朝鮮戦争

今回の「第2次朝鮮戦争は起こるか?( 2 )」の項目は
・朝鮮戦争の戦闘終結後
・朝鮮半島 (韓半島) を巡る現状
・第2次朝鮮戦争の可能性
・朝鮮半島危機の解決


(以下、文中緑色数字は注欄の番号を示す。)

第2次朝鮮戦争は起こるか?(2) 
                            2017/12/12  大島 新


・朝鮮戦争の戦闘終結後
 1953年の休戦協定により、休戦ラインを北緯38度線近くに決定し、それに沿って幅4kmの非武装地帯を設け、2つの朝鮮を認めました。400万人の死者と国土の破壊後、大体元の境界線に落ち着き、この内戦で何の問題も解決しませんでした。特に内戦は米ソに人工的に分断された国家の統一の夢をかなえることになりませんでした。
 この協定は調印の日 (7月27日) から90日間に恒久的平和条約を結ぶことや協定調印の日現在で韓半島に存在する兵器の更新を除く一切の新しい兵器、即ち核兵器などの導入を禁止し(休戦協定のパラグラフ13(d))、外国の軍隊の撤退を定めました。アメリカは平和条約を望まず、何らその努力をせず90日間を経過させ、平和条約締結を回避しました。そこで64年たった今も戦争状態は終わっていません。
 中国軍は撤退しましたが、米軍はそのまま居座り、更に通告の上、1958年初めて南朝鮮に核兵器を導入し(Cumings 2017b)、1986年までに950発の核兵器を半島に持ち込みました。又既に1954年に166機の戦闘機を秘かに持ち込んでいました(cp 2017/4/17)。これらは全て休戦協定違反で、北朝鮮に米国不信の念を一層高めさせたと思われます18。 この米軍の居座りと特に核兵器の脅威・脅迫、それに朝鮮戦争時未曽有の絨毯爆撃の恐怖等が北朝鮮を核開発に向かわせました。今は米軍は地上の核兵器を撤去していますが、核搭載の原潜や空母を半島近海で徘徊させています。
 北朝鮮の一貫した平和条約締結の求めを頑なに拒んできたアメリカ政府に転機が訪れました。北朝鮮の和平要求に米クリントン政権が応えたのです。そのきっかけは北朝鮮の核拡散防止条約 (NPT) 撤退の表明 (1993) でした。そして米朝協議の再開に金日成が努力し、1994年7月8日に高官協議を再開しましたが、その日金日成が急死しました19。そのあとを継いだ金正日 (キム・ジョンイル) は8月に米朝協議を再開し、1994年10月21日両国は「枠組み合意」に調印しました。
 これは米国が敵対行為や脅迫をやめ、米朝両政府が政治・経済関係を正常化し、大使の交換に至るよう努力すること、そして核兵器製造に適さない発電用の軽水炉2基を米日韓が提供する代わりに、北朝鮮は寧辺 (ヨンビン) にある核兵器の原料となるプロトニウムを作りやすい黒鉛炉を凍結・解体し、核兵器開発計画を放棄し、1993年に脱退を表明していたNPT20 にとどまるという合意です。又軽水炉建設中に米国が燃料用重油を提供することも合意されました。この合意が実行されていたら、今日の核武装した北朝鮮は存在しなかったのです。
 この枠組み合意は共和党が当時アメリカ議会の上院と下院を押さえていたので、承認が難航し、北朝鮮は寧辺の原子炉でのプルトニウムの製造を止めたのに、軽水炉の建設が遅れて抗議しました。そして2001年にアメリカで、民主党クリントン政権に代わり共和党ブッシュ政権が誕生し、早速枠組み合意とクリントンが北朝鮮のジョ・ミョング・ロク将軍と調印した「お互い相手国に敵意を持たない」という協定を無視しました。そしてノーム・チョムスキー氏の言うブッシュ政権の「白痴的政策」が始まりました。
 ブッシュ大統領は成功を収めつつあった金大中 (キム・デジュン) 韓国大統領の、経済援助、人道的支援、文化交流、金剛山観光等の「太陽政策」を北風で吹き飛ばし、2002年1月にイラクとイランと北朝鮮を「悪の枢軸国」と呼び、2002年9月核兵器開発をする国は、(国際法無視して)先制攻撃をするとし、その国として北朝鮮を名指しする報告書を公表しました。更に同年11月アメリカは燃料用重油を北朝鮮に送るのをやめました。北朝鮮は対抗措置として、自衛のためとして原子炉を再稼働させました。そこでクリントンの努力で1994から2002年まで8年間続いたプルトニウム製造の凍結をブッシュ政権がぶち壊しました。そして北朝鮮は2003年1月10日NPTより脱退すると発表。同年3月20日米国は核兵器等抑止力を持っていない「悪の枢軸国」の1つのイラクの侵略を開始しました21
 その後ブッシュ政権はアジア諸国に押されて中国主導の6者協議に参加、対話を再開し、2005年9月協議が成立し、軽水炉の提供と米国の北朝鮮を侵略しないという誓約と引き換えに、北朝鮮は全ての核兵器と核兵器開発計画を放棄することを約束しました。しかしこの協定も米国は北朝鮮に対する金融制裁などですぐ壊しました。2007年2月6者協議が再開され、北朝鮮は再稼働した核施設の停止、解体を表明しました。更に核施設団の受け入れにも同意しましたが、核廃棄の進め方に米国が異議を唱えまとまりませんでした。
 本当に問題なのは北朝鮮の核開発よりも米ロ等の核大国の核兵器です。そもそも米国は核とミサイルの開発に先鞭をつけ、自らはNPTに違反して核廃絶の努力をせず22、その反対に核兵器とその運搬手段の近代化を進めながら、北朝鮮の核とミサイル開発を一方的に非難し、経済制裁を科し、武力攻撃の脅迫をすること自体二重規範で、偽善的です。しかも米国の同盟国・友邦国のイスラエル、印度、パキスタンがNPTにも入らず秘かに核開発をするのは支援・黙認しましたが、これに至っては二重規範の極みです23
 このアメリカの行動はどう理解したらよいでしょうか。アメリカ自らはNPTを守る意思は全くなく、ただNPTを利用して自らに従わない国、イラン、北朝鮮、シリア(そして米国が倒したイラクのフセイン政権とリビアのカダフィー政権)のレジームチェンジを狙っているのでしょう。トランプ大統領が先の大統領選での遊説中、日本と韓国は核武装したらよいと発言し、物議をかもしましたが、これは自らに従う国なら核武装しても構わないとする歴代の米政権の立場を、その失言癖からうっかり漏らしたものと考えられます。

・朝鮮半島 (韓半島) を巡る現状
 好戦的なトランプ政権の誕生で韓半島を巡る情勢がにわかに険悪となりました。その点イランの状況も同じですが、半島を巡る緊張を特に高めているのは、春の米韓日の軍事演習に加えて、米韓両軍が3万の米兵と5万の韓国兵を参加させて、今年8月21日から31日まで米韓合同軍事演習「乙支 (ウルチ) フリーダムガーディアン (UFG)」を韓国各地で行ったことです。米国の報道によるとこの演習は金正恩政権のレジームチェンジを狙う先制攻撃作戦の演習でした。これにはグアム島のアンダーソン空軍基地発進のB‐1B重爆撃機による金正恩ら幹部の暗殺爆撃演習が含まれていました。無論これらは国際法違反の犯罪行為の演習です。
 事態を重くみた北朝鮮はこの挑発的演習を中止するよう再三米国に求めました。ところで中国と北朝鮮は1961年以来相互防衛条約を結んでいます。中国もこれを危険な動きと捉えて、8月中旬中国共産党機関紙「人民日報」の社説で、米政府と金正恩政権向けに、「もし北朝鮮が米国領土をミサイルで先制攻撃をし、米国が報復攻撃をすれば、中国は中立を保つ。しかし米国とその同盟国韓国が北朝鮮を攻撃し、北朝鮮政権を転覆させ朝鮮半島の政治状況を変えようとするなら、中国はそれを未然に防ぐであろう」と明言しました (Baroud 2017)。そして米中の統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード将軍とファン・ファンフィ将軍とが会談し、計算違いによる戦争の可能性が少し減りました。米国はこの演習の眼目の暗殺作戦演習だけは秘かに取りやめました (Escobar 2017)。演習は軽視できません。ナチスドイツはソ連国境での演習の途中、ソ連に侵攻しました。
 北朝鮮はこの演習の対抗措置として、8月29日中距離弾道ミサイル「火星12」を北海道襟裳岬越しに飛ばし、太平洋に落下させました。日本の各紙は「北朝鮮の挑発」と大きく報じましたが、実は挑発したのは米韓合同軍事演習を実施し、北朝鮮に脅威を与えた米韓の方です24(朝鮮中央通信発表 (朝日新聞2017/8/31))。金正恩は64年間も核攻撃を含む脅迫 (国連憲章2条4項違反) をしてきた米国を中心とする米韓日の軍事演習の脅しには屈せず、 自衛する軍事力のあることを、精一杯背伸びしてやや幼児的に誇示しているだけです。つまり米国の先制攻撃を牽制しているのです。
この演習と呼応して「3500以上の米兵と日本兵が木曜日[8/31]に北朝鮮政権に対する … 共同軍事演習を北海道で始めた。この演習は『ノーザンバイパー17』と呼ばれるもの」(フォックスニュース)でした。日本もこの米韓の挑発に加わりました。またグアム周辺にミサイルを発射すると北朝鮮が、米韓の軍事演習の前に「脅した」のも、グアムのアンダーソン空軍基地から発進するB‐1B爆撃機が金正恩ら幹部暗殺作戦のもので、韓国に飛来し爆撃訓練することへ対抗措置でした。これも北朝鮮の挑発ではなく、アメリカに警告したものです。この種の軍事演習は米韓がずっと毎年2回繰り返してきたもので、これこそ挑発ではないでしょうか?そして今のように、マスコミが歴史的事実と事態全体の正しい情報を伝えないと、安倍政権の「挑発!」と叫ぶ戦争を煽るプロパガンダに乗せられる恐れがあります。
 さて中国にとっては金正恩政権の崩壊は2つの点で認めるわけにはいかないと思われます。1つはそれにより難民の大群が中国領内に入ってくることです。又北朝鮮が韓国に吸収される可能性が出てきますが、するとその同盟国アメリカの軍が国境にまでやってくることです。中国と同じく北朝鮮と国境を接するロシアにとっても同じ事態になります。従ってアメリカが中国に圧力をかけて北朝鮮政権を倒そうとしても無理でしょう。かつて中国が核兵器開発を始めたとき、同じようにその後ろ盾ロシアに圧力をかけましたが失敗しました。トランプ大統領相手では予測できず、今中国はロシアと同じく、朝鮮戦争に備えて戦争準備態勢に入って国境近くで軍事演習を行っています。

・第2次朝鮮戦争の可能性
 朝鮮戦争は北朝鮮に対する長年に及ぶ米国独自の経済制裁とオバマ政権の行った極秘のサイバー攻撃が戦争行為とみなされますので、実際には始まっているのでしょうが、果たして暑い戦争に発展するでしょうか?以上の歴史的背景を念頭に入れて、その可能性を探ってみましょう。
アメリカが他国に侵攻する際、近年採用してきた戦略における標的3条件 (Chomsky 2003,17頁)を挙げてみましょう。
(1) 標的はほとんど抑止力を欠く無防備の国であること(実例、南ベトナム、カンボジア、ラオス、パナマ、グレナダ、イラク、アフガニスタン、イエメン、ソマリア他多数)
(2) 標的はその手間をかけるに値する国であること
(3) 標的を悪の権化と決めつけ、我々の生存に対する喫緊の脅威と描くことができること
チョムスキーはイラクがこの3条件を全て満たしていて、ブッシュ政権に侵略されたとしています。(2) の要件はもちろん石油と中東の戦略上地政学的に重要な軍事基地の確保です。ブッシュ政権はいずれの目的も達成できず、第1次イラク戦争に敗退しました。
 イラクと同様米国の圧力に屈し、国の安全保障の約束と引き換えに、核兵器等大量破壊兵器開発を断念したリビアのカダフィー政権が無防備となり、オバマ政権に倒されました。これは金政権に対する強烈なメッセージとなりました:「米国の約束を信じるな、抑止力を棄てたらおしまいだ!」。
 ここで戦争について考察してみるのも無益ではないでしょう。現在、国際法では戦争は非合法で原則禁止されています。軽々しく戦争を口にする風潮が米国に限らずみられるので強調しておくべきでしょう。第2次世界大戦以前は武力行使が合法的な紛争解決の手段でした。古代ローマではキリスト教神学と結びつき、正戦論が提唱されましたが、20世紀になり第1次大戦の惨禍により、武力行使を禁止する条約(ロカルノ条約 (1925)、パリ不戦条約 (1928))の流れを経て第2次大戦後1945年国連憲章で戦争禁止(2条4項) が定められました。その例外として国連安全保障理事会の承認による武力行使 (42条) と自衛権の行使 (51条)25 が認められています。それ以外の武力行使は侵略行為か侵略戦争です。侵略は違法で、侵略戦争を始めることはニュールンベルク原則により平和に対する最大の犯罪とされ、そのかどでナチスドイツの戦犯は処刑されました。
 チョムスキーは上の3条件を北朝鮮にあてはめ、イラクと異なり第1条件を満たしていない (同著151頁) と指摘しています。北朝鮮は119万の兵力の軍隊を持ち、予備役770万人を有し (Newsweek 2017/4/25)、超大国アメリカの世界最強の米軍の侵攻に備えています。アメリカに完全に国土を破壊され、未曽有の国民の5分の1から3分1 にも当る人命を奪われた恐怖が、しかも60数年にも及ぶ核攻撃の脅迫にさらされてきた歴史的現実が、この要塞国家を生んだという事実を忘れてはなりません。相手の立場に立って考えてみる必要があります。
 休戦ラインよりわずか56キロの所に韓国の首都ソウルがあり、その首都圏に韓国の人口の半分の2千5百万超の市民と在韓13万人の米民間人の多くが住み、非武装地帯の南側に米兵と50万の韓国兵がいます。軍事境界線の北の山中に北朝鮮がミサイルと10000門の強力な火砲(長距離砲や多連式ロケット砲等)を配備していますので、その射程内に全て入っています。但し米軍は射程外に移動中とも伝えられていましたが、83の在韓米軍基地を叩く力を持つ、捕捉困難な移動式ミサイルも所有しています (Cumings 2017a)。これまで米国はこの強力な通常兵器による抑止力を無視できなかったのです ( ペリー元国防長官の 1994 年危機についての述懐、朝日新聞 2017/11/29) 。米国が先制攻撃をすれば、北朝鮮の反撃によりまたたくまに210万人の死者と770万人の負傷者が出るとの推定があります(CD 2017/10/7)。又3万9千人の米兵のいる122か所の在日米軍基地も標的になるかもしれません。それに中国軍が参戦すると中国が米国に伝えている今、米国は侵攻に踏み切れない状況にあります。従って第1条件は満たされていません。
 第2条件ですが、北朝鮮に基地を持つことは米国の世界覇権の目的には沿うでしょう。第3条件は既に、アメリカの宣伝工作が成功を収めていて満たされています。北朝鮮は「世界平和への脅威」、とくに「近隣諸国への脅威」と喧伝しています。日本のマスコミがそれに飛びつき、安倍政権がそれを利用して軍拡を加速しています。しかしその主張に根拠はあるでしょうか?北朝鮮は近隣諸国(ロシア、中国、日本)を含め、外国を侵略したことは一度もありません。北朝鮮が1950年6月25日に南朝鮮を「侵略」したという定説は誤りであることは前述の通り明白です。
 他方米国は第2次大戦後、自衛のために戦ったことはなく、湾岸戦争を除き安保理の承認を得ずに、絶えず外国に軍事介入や侵略戦争やクーデターなどの破壊工作をしてきました。クーデターは冷戦期に限っても72回試みています(ワシントンポスト2016/12/23)。中南米のほとんどの国が標的になり、ハイチのように2回も襲われた国もあります。ヨーロッパ、中東、アジアでも米軍やCIAの標的になった国は実に多いのです (ブルム2003、216~268頁、Gordon 2016 、61~179頁、Dower 2017a, 59~125頁)。なおブルムは元CIA職員でフリーのジャーナリスト、Gordonはサンフランシスコ大学の哲学教授、Dowerは米MITの歴史学名誉教授です。
 休戦協定後米軍はインドシナ、中南米、大中東などで少なくとも数百万人殺害してきました。そしてその大半は民間人です。例えば、ベトナム人300万人超、カンボジア人50万人超、ラオス人35万人、計385万人超 (Herman & Chomsky 1988、238頁、280頁、260頁) 。イラクでは第1次イラク戦争前の米国主導の経済制裁で50万人の児童死亡、そのイラク戦争での65万5千人死亡と合わせると、計115万5千人死亡(英国医学誌ランセット2016 (TD 2017/7/27))。アフガニスタン人15万人(TD 2017/11/21)、リビア5万人、シリア40~50万人、イエメン1万人など。中南米でもグレナダ、パナマ、ハイチなどでも犠牲者が出ています。その何倍もの負傷者が出ました。
 現在アメリカはアフガニスタン、イラクの他5カ国を同時に爆撃しています。これらの事実を反映して、ウイン・ギャラップ・インターナショナル社の国際世論調査 (2013) によると、世界平和にとって脅威の国の断トツ一位は米国です 。又ピュー研究所の近年2回 (2013年と2017年) の世論調査 (ほとんどアメリカの同盟国のみ対象) でも、一位はアメリカです。しかもアメリカを選ぶ人が増加傾向にあります (Strategic Culture Foundation 07.08.2017)。
 さて以上の3条件に照らして考えてみましょう。第2次朝鮮戦争は起こるでしょうか?自殺願望がなく、理性的に行動してきた北朝鮮が先制攻撃をする可能性はないことは前述のとおりです。一方米国はどうでしょうか?北朝鮮が無防備ではないので、従来の米政権ならその可能性はないと言えます。しかしトランプ政権は別です。心理学者に頼らなくても、トランプ氏の性格は明らかです。極端なナルシストで、プライドはガラス細工の玩具のように傷つきやすく、攻撃的ですぐ暴発する人物です。判断力は幼児並みで、側近が彼を「押さえ、導く」のに苦労していて、ホワイトハウスは「成人デイケアセンター」と言われているそうです。
 トランプと金正恩の口頭戦争を「幼児の口喧嘩」とロシアの某外交官が評しましたが、それだけではすみません。米軍の日韓を巻き込んでの挑発的軍事演習 (今年は3月、8月、10月、11月、12月の異例の5回) に対しての、北朝鮮のミサイル発射と核実験は緊張関係を高めています。
マクマスター米大統領補佐官が「金正恩は何をしでかすか分からない人物」と評しましたが、彼の父や祖父と同じく予測可能で、一貫して核武装放棄やミサイル開発凍結の要求を拒否し続けています。「トランプ氏は予測不可能だ。真意がつかめない」と文在寅 (ムン・ジェイン) 韓国大統領が7月下旬側近に漏らした (山陽新聞2017/11/8)ように、予測できないのはトランプの方です。
 危険なのは双方が相手の動きを読み違えて、偶発的に戦闘が始まり、エスカレートして本格的な通常戦争へ、更に核戦争に発展することです。1発の15キロトンの核弾頭でも1300平方キロの市街地と周辺が灰燼に帰し、500万トンの炭素の雲の微粒子を成層圏まで吹上げて太陽光を遮り、農作物の栽培季節を少なくとも5年間、1年当り10日~40日短縮し、少なくとも25年間世界気温を平年よりも下げ、アジアモンスーン地帯の降雨量を20%~80%減少させ、西オーストラリアは20%~60%今より乾燥し、南米と南アフリカも降雨量が減少する。そのため飢饉が発生し、10億人が餓死する恐れがあると米科学者グループ (TTAPS) が科学誌(Environment Magazine)に発表しました (Climate News Network 2017/7/18)。

・朝鮮半島危機の解決
 11月29日未明北朝鮮は新型 ICBM「火星 15」の発射実験に成功、約 53 分間約1000km飛行しました。米本土全域を攻撃できるとし、「核戦力完成」と金正恩が力んで宣言しました。米国、ロシア、中国は既に ICBM を実戦配備していますが、北朝鮮が配備できるのは先のことです。米韓日は失敗続きのアプローチの圧力の強化で一致しました。アメリカでは火星 15 が米国首府ワシントンにも届く飛距離だと大騒ぎをしていますが、アメリカは約7000 発の核兵器を有し、60 分以内で地球上のどの都市も攻撃できる核弾頭搭載の ICBM や巡行ミサイルや原潜を現に配備していて (CD 2017/11/29)、実はこれが世界平和の最大の脅威になっていることを忘れてはなりません。
 朝鮮半島の危機を解決する方法は2つありますが、過去の歴史をみるとどちらが正しい方法かは明らかです。1つは今米国が追求している方法で、北朝鮮を経済制裁、サイバー攻撃及び軍事力行使の脅迫などによる圧力を加える方法です。これはみじめな失敗に帰し、北朝鮮に核武装を許しました。トランプ政権がその失敗した方策を更にエスカレートさせて進めています。「過去を記憶しておくことのできない者はその過去を繰り返す運命から逃れえない」(サンタヤーナの警句)ものです。安倍政権もそれに便乗しています。
 軍事力行使の準備ととられる恐れがあるのが、11月中旬核搭載爆撃機を載せた3隻もの空母を中心とする大艦隊の北朝鮮近海への派遣と、火星15の発射に反発して12月4日に開始した米軍と韓国軍の5日間の大軍事演習で、これに実に230機の米軍機と総勢1万2千名の米空軍、海軍、海兵隊が参加しています。特に危険なのは米軍が3月8日の搬入に次いで、4月26日高高度迎撃ミサイルシステム (THAAD) を住民の猛反対を押し切り、韓国慶尚北道星州郡に搬入したことです。中国とロシアはそのレーダーの範囲が国内に深く及ぶとして、強く反発し撤去を求めています。更に韓国にTHAADを9月7日追加配備し、中国が猛反発しました。呼応して安倍政権は陸上イージス迎撃ミサイルシステムの導入を決めました(朝日新聞2017/10/13)。
 これは危険な動きです。マスコミは報道しませんが、米軍と密接な関係のあるランド・コーポレーションや軍事評論家等の専門家の指摘のように、ミサイルを迎撃するミサイル防衛 (MD) は実は防衛用ではなく先制攻撃のためのもので、このことは専門家の間では常識です。自明のことですが、不意打ちのミサイル先制攻撃は防げない可能性がありますが、こちらが先制攻撃を仕掛けた場合、相手の反撃が予想できるので、相手のミサイル攻撃をMDで防ぐ可能性があるとされています (Chomsky 2003、226~227頁) 。そこで米国が安心して、他国に軍事介入できる寸法です。但し元米国防長官ペリー-氏が指摘したように (thehankyoreh ハンギョレ 2016/3/11)、MD システムは「技術的問題のためにまともに作動しない」かもしれません。それはともかく中国は対抗措置として、飛来するミサイルを撃ち落とすよりも通信衛星を撃ち落とすことの方が容易なので、その実験を試み成功しました。これはアメリカに対するデモンストレーションでした。ミサイル攻撃には衛星通信が必要ですので、通信衛星を叩けばミサイル攻撃を防げます。
 韓国への THAAD の配備は北朝鮮を先制攻撃するぞという脅しです。中国は米国の先制攻撃には軍事介入し北朝鮮を防衛すると宣言していますので、米中の衝突となり、限定核戦争にとどまらず、本格的な全面核戦争となり、「核の秋」(「核の冬」の修正版)を招き、死者数は10億にとどまらない大惨事になります。人類の文明の終焉を招くかもしれません。
 戦争の危機を解決するもう1つの方法は対話による外交的解決で、「対話は無駄だ」と歴史を知らないトランプがツイートしたそうですが、対話が、そして対話のみが成功を収めつつあったことは歴史が繰り返し示してきました。ただイラクとリビアの例がありますので、北朝鮮にのみ核兵器放棄を求めて外交交渉するのは、現実的ではありませんし、また公平でもありません。アメリカが主導してまとめたNPTの精神に立ち返り、全核保有国が核廃絶に誠意をもって取り組み、その中で北朝鮮にも核放棄を求めるべきではないでしょうか。
 この道こそ今年成立した核兵器禁止条約が示すように、世界の大多数の国が望むところです。米メリーランド大学の最近の世論調査では、米国でも国民の圧倒的多数 (82%) が世界の全ての 核兵器の完全撤廃を支持しています (Chomsky 2012、28頁) 。又今年7月の米世論調査で59% の人が朝鮮半島の危機に対して、対話による外交的解決を支持しています (CD 2017/7/18) 。韓国政府と同様に、韓国人(約80%) は南北朝鮮の対話の再開を求めています (CD 2017/7/14)。米国政府が人民による、人民のための政治に立ち、国民の声に従えば朝鮮問題は、そして同じイラン問題も解決できます。イラン人大多数も核兵器全廃を求めています (Chomsky 2012、28頁) 。そして歴史が示すように、外交交渉による平和条約の締結こそ歴代の北朝鮮の政権が求めてきたところです。
 まず米国と北朝鮮が対話による外交交渉を始めることです。それでひとまず韓半島の危機的状況から抜け出せます。北朝鮮は以前に米国と韓国が軍事演習をやめれば、核開発を凍結するという提案をしました。この提案は韓国と中国及び米国の外交政策の専門家が支持しましたが、トランプ政権は拒否しました。この提案を生かし、北朝鮮が核とミサイルの開発を凍結し、アメリカが軍事演習などの敵対行為を停止し、経済制裁とテロ支援国家の指定を廃止することです。このあたりから始めて、両国の正常な国交の回復と平和条約締結に向かうほか、進むべき道はありません。



18. 「桂・タフト協定」の密約、平和条約忌避に加えてのこの戦闘機や核兵器の導入は約束を守らない国、米国に対する強い不信感を北朝鮮に持たせたことでしょう。
19. 金日成死去の報に接し、日米両政府は金日成のこの努力に感謝し弔意を表明し(クリントン大統領は「米朝協議を再開した指導力に感謝し、適切に続くよう望む」と述べ)ました。
20.韓国と北朝鮮はともにNPTに加盟していましたが、韓国はこっそり1982~2000年に
NPTに違反し、北朝鮮は脱退を表明して1993年に違反しました (Polk 2017)。
21. この状況下で北朝鮮が自衛のため核武装に走らなければおかしいと、米国の軍事専門家でさえ認めています。米国は1950年代初期からこれまで半世紀以上の長きにわたって、非核保有国の北朝鮮を核攻撃すると脅迫してきたので、なおさらです。実際米国は少なくともこれまで7回北朝鮮の核攻撃を検討しました。圧力を加え脅迫すれば、個人でも国家でも防衛するのは当たり前です。
なおペンタゴン・ペーパーズ(ベトナム戦争時の国防省機密文書)を暴露したダニエル・エルズバーグ氏によれば、核攻撃の脅迫は核兵器の使用に他なりません。店に入り、拳銃を店主の頭に押し付け、金を出せと脅迫し金品を強奪すれば、一発の弾丸を発射しなくても目的は達成されます。アメリカは核などの脅しで覇権を追求してきましたが、これは核兵器を使用してきたことになります。これがアメリカが核を手放さない真の理由と思われます。
22. NPTは非核保有国には核開発を禁止し、他方核保有国には核廃絶の努力を誠意をもって進める義務を課しています (NPT 第6条)。
23. 更に印度とパキスタンは今年ICBM を発射しましたが、何の非難も受けず、制裁も科されず、逆にイスラエルと共にアメリカから経済援助を受けています (cp 2017/9/19) 。又パキスタンは以前にミサイル技術提供を北朝鮮から受ける代わりに、北朝鮮に核兵器開発の技術を提供しましたが、何のお咎めも受けませんでした。咎められたのは北朝鮮だけでした。
24. 挑発は強者が弱者にするもので、相手が挑発に乗ってくれば捻りつぶす力を持つもののすることです。挑発しているのは強者のアメリカです。立場を逆にして、3億超の人口の超大国北朝鮮が、人口2500万の米国を未曽有の空爆で徹底的に破壊したのち、その隣国カナダとメキシコに軍を常駐させ、半世紀以上非核保有国のアメリカを核攻撃するぞと脅し、経済制裁を科し、カナダとメキシコ沿岸に空母等の打撃艦隊を派遣し、その両国内でトランプ大統領暗殺作戦を含む軍事演習を毎年2回ずつしていたら、北朝鮮の挑発と言うべきでしょう。その際自衛のため、アメリカが健気に経済制裁にもめげず核開発をし、ミサイルを開発するのは挑発とは言えません。
25. 自衛権は拡大解釈として、敵国の攻撃が目前に迫っていて他に防ぐ手段がないとき、予防的先制攻撃が認められます。例えばミサイルが発射され自国に向けて飛来中で、自国の領土に着弾する前に空中で迎撃する他に防ぐ手段がないとき、空中で迎撃するのは自衛権の行使とみなされます。


参考文献
李元淳、鄭在貞、徐毅植 著『若者に伝えたい韓国の歴史』、君島和彦、国分麻里、手塚崇訳 明石書店 2004
カミングス, ブルース 著『朝鮮戦争の起源』第1巻、鄭敬謨、林哲訳 シアレヒム社 1989
同上 第2巻、鄭敬謨、加地永都子訳 シアレヒム社 1991
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長崎在日朝鮮人の人権を守る会編『軍艦島に耳を澄ませば』 社会評論社 2011
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林えいだい『筑豊・軍艦島』弦書房 2010
朴慶植 (パク・キョンシク)『朝鮮人強制連行の記録』未来社 1965
ブルム, ウィリアム著 『アメリカの国家犯罪全書』益岡賢訳 作品社 2003 (William Blum (2001) Rogue State: A Guide to the World’s Only Superpower, Zed Books)
文京 洙 (ムン・ギョンス)『韓国現代史』 岩波新書 2005
吉見義明『従軍慰安婦』岩波書店 1995
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以上。なお、本論文は執筆者の許可を得て掲載しております。転載はお断りです。

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