先々週の日曜、所用先から「す44」まで歩くことになった。
夫はすでにジムでたっぷり汗を流してきたはずなのに。
私ならそんなことは思いつきもしないだろう。
第一、ほいほい歩いて行ける距離ではなかったはず……。
でも、これは、散歩で運動不足を解消するいい機会である。
バス路線を辿れば、辛くなったらバスに乗れるから気が楽だし、
何といっても迷う心配がない。
私たちはてくてくと歩き始めた。
側溝の蓋をガタボコ鳴らしながら歩くうちに、
「これは散歩ではない」と思うようになった。
車道と段差のある整備された歩道ばかりなら楽だけど、
ガードレールで仕切られていても道幅がとても狭かったり、
歩道が白線で仕切られているだけの道路では、
足元にも周囲にも目を配って歩かないと危ない。
そういう歩き方を久しくしていないのだろう、足より先に頭が疲れてきた。
これでも脳のトレーニングになっているのかもしれない。
最初に行き当たったバス停で路線図を見ると、駅まで十数個ある。
バス停の数で計算しても全くアテにならないだろうけど、
少なくとも四、五十分はかかるとふんだ。
夫は心配ご無用だし、私も一時間は歩けるから大丈夫だ。
私たちはさらにてくてくと歩き続けた。
四十分後、見込みを大きく訂正し、倍以上とした。
結局、実際には百分かかった。
辿り着いた後のビールがうまかったことはいうまでもない。
つまみや握りをぱくぱく食べ、帰りは雨のためタクシーに乗った。
翌朝、起き上がろうとすると、まるで錆びついた機械のごとく、
全身がギシギシと音を立てているような気がした。
もしかすると、本当に錆びついているのかもしれない。
でも、文字通り重い腰がそう簡単に上がるわけはなく、
結局、これといった運動もせずに一週間を過ごしてしまった。
そして、おとといのこと――。
おもむろに地図を広げた夫は、百分かかったルートを赤ペンで辿った。
意外なことに直線では五キロほどしかなく、実際はせいぜい六キロ位か。
道さえよければ七十分で行けそうだ。
でも、たとえ遊歩道でも、歩くにはちょっとためらう距離だ。
今度は歩きやすい道を行こう、と夫が新たなルートを引いた。
ゴール地点が「す44」なのは暗黙の了解だけど、
中間地点が荒川沿いの秋ヶ瀬公園て!
この壮大なルートは、夫婦間の体力差の現れのような気がする。
今なんとかしないと、差はこのまま広がっていく一方だ。
よし! 歩こう! ……もう少し短いルートで。
夕方というにはまだ早い頃、ジム帰りの夫と待ち合わせて出発した。
十キロ走ったという夫はさすがにローペース。
強い風にしばしば目を痛くして立ち止まる私ももたもた。
これでは何時になるかわからないので、途中から短縮ルートに入ると、
そこは初めて見る桜並木の遊歩道だった。
これまで随分もったいないことをしていた。
ほとんどが散って赤紫色だけど、それはそれでまた美しく思える。
頭におしべがちょこんと載ったままの人を続けざまに見て、
なんとも微笑ましいような、のどかな気分になった。
鬼に笑われそうだけど、来年のお花見が今から楽しみだ。
相変わらずのんびり歩いていると、雲行きが少し怪しくなってきた。
ハイペースで歩ける体力はもうない――いや、初めからなかったっけ。
もくもくと成長する雨雲になんとか持ちこたえてくれと念じつつ、
ひたすら歩き続けてようやくゴールに到着した。
ラップタイムは二時間!
でも、今回は歩きやすいルートをゆっくり歩いて来たので、思ったより疲労が少ない。
ゴール後の楽しみのためには、あまり疲れすぎてもよくない。
お鮨をしみじみ食べていると、とうとう雨が降り始めた。
雨雲にも飲みたい時があるのかもしれない。
口福に酔い過ぎないうちに、傘を借りてお店を後にした。
花冷えの夜気が辺りに満ち、自然と歩を速めてしまう。
しばらくして、ぱらぱらと降っていた小雨が上がった。
この傘、いつ返しに行こうかな?
夫はすでにジムでたっぷり汗を流してきたはずなのに。
私ならそんなことは思いつきもしないだろう。
第一、ほいほい歩いて行ける距離ではなかったはず……。
でも、これは、散歩で運動不足を解消するいい機会である。
バス路線を辿れば、辛くなったらバスに乗れるから気が楽だし、
何といっても迷う心配がない。
私たちはてくてくと歩き始めた。
側溝の蓋をガタボコ鳴らしながら歩くうちに、
「これは散歩ではない」と思うようになった。
車道と段差のある整備された歩道ばかりなら楽だけど、
ガードレールで仕切られていても道幅がとても狭かったり、
歩道が白線で仕切られているだけの道路では、
足元にも周囲にも目を配って歩かないと危ない。
そういう歩き方を久しくしていないのだろう、足より先に頭が疲れてきた。
これでも脳のトレーニングになっているのかもしれない。
最初に行き当たったバス停で路線図を見ると、駅まで十数個ある。
バス停の数で計算しても全くアテにならないだろうけど、
少なくとも四、五十分はかかるとふんだ。
夫は心配ご無用だし、私も一時間は歩けるから大丈夫だ。
私たちはさらにてくてくと歩き続けた。
四十分後、見込みを大きく訂正し、倍以上とした。
結局、実際には百分かかった。
辿り着いた後のビールがうまかったことはいうまでもない。
つまみや握りをぱくぱく食べ、帰りは雨のためタクシーに乗った。
翌朝、起き上がろうとすると、まるで錆びついた機械のごとく、
全身がギシギシと音を立てているような気がした。
もしかすると、本当に錆びついているのかもしれない。
でも、文字通り重い腰がそう簡単に上がるわけはなく、
結局、これといった運動もせずに一週間を過ごしてしまった。
そして、おとといのこと――。
おもむろに地図を広げた夫は、百分かかったルートを赤ペンで辿った。
意外なことに直線では五キロほどしかなく、実際はせいぜい六キロ位か。
道さえよければ七十分で行けそうだ。
でも、たとえ遊歩道でも、歩くにはちょっとためらう距離だ。
今度は歩きやすい道を行こう、と夫が新たなルートを引いた。
ゴール地点が「す44」なのは暗黙の了解だけど、
中間地点が荒川沿いの秋ヶ瀬公園て!
この壮大なルートは、夫婦間の体力差の現れのような気がする。
今なんとかしないと、差はこのまま広がっていく一方だ。
よし! 歩こう! ……もう少し短いルートで。
夕方というにはまだ早い頃、ジム帰りの夫と待ち合わせて出発した。
十キロ走ったという夫はさすがにローペース。
強い風にしばしば目を痛くして立ち止まる私ももたもた。
これでは何時になるかわからないので、途中から短縮ルートに入ると、
そこは初めて見る桜並木の遊歩道だった。
これまで随分もったいないことをしていた。
ほとんどが散って赤紫色だけど、それはそれでまた美しく思える。
頭におしべがちょこんと載ったままの人を続けざまに見て、
なんとも微笑ましいような、のどかな気分になった。
鬼に笑われそうだけど、来年のお花見が今から楽しみだ。
相変わらずのんびり歩いていると、雲行きが少し怪しくなってきた。
ハイペースで歩ける体力はもうない――いや、初めからなかったっけ。
もくもくと成長する雨雲になんとか持ちこたえてくれと念じつつ、
ひたすら歩き続けてようやくゴールに到着した。
ラップタイムは二時間!
でも、今回は歩きやすいルートをゆっくり歩いて来たので、思ったより疲労が少ない。
ゴール後の楽しみのためには、あまり疲れすぎてもよくない。
お鮨をしみじみ食べていると、とうとう雨が降り始めた。
雨雲にも飲みたい時があるのかもしれない。
口福に酔い過ぎないうちに、傘を借りてお店を後にした。
花冷えの夜気が辺りに満ち、自然と歩を速めてしまう。
しばらくして、ぱらぱらと降っていた小雨が上がった。
この傘、いつ返しに行こうかな?
それと同じくらいジムにも行けばいいのに……と自分で自分に言ってみたりして。
>それは、やめといた方がいいですぞ。
はい(^^ゞ
でも、側溝の蓋ってスリルがありますよね。(え?違う?)
目的を持って歩くのは好きです^^
おいしいものとか、お花見とか、観光とか……。
なのになぜ「痩せるため」が直接の目的にならないのか、そこが不思議。
>側溝の蓋をガタボコ鳴らしながら歩くうちに
それは、やめといた方がいいですぞ。
万が一、蓋がなんかの拍子で外れたら、無傷では済まないでしょうから・・・
それにしても燈子さん、すごい。
運動兼ねて、長時間の歩きを選択する男性はいますが、
それに付いて行く奥方の話は聞いたことがありませんもん。