燈子の部屋

さまざまなことをシリアスかつコミカルかつエッセイ風に(?)綴る独り言的日記サイトです

風が吹くとビールが旨かった話

2005-02-16 01:00:47 | 日々つれづれ
冬はどうしてこうも風が強いのだろう。
そよそよと穏やかな日もあるけれど、
びゅうびゅう吹く日のほうが多い気がする。
寒いから余計にそう思うのかもしれない。
この季節、タバコ好きの人は、家ではどこで吸っているのだろう。

我が家の喫煙コーナーは「台所の換気扇の下」。(文字通りの隅っこ)
料理をしているときは邪魔なので、とっととベランダに出てもらうけれど、
本当はいつも外で吸ってもらいたいと思っている。
実は、煙よりも灰のほうが厄介なのだ。
うっかりして落ちているのに気づかずにお鍋のフタを開け、
「あっ!」と叫んだことが幾度もある。
どうせなら、灰まで完全燃焼するタバコを作ってほしいと思う。

その点、両隣のご主人は、妻子の健康を気遣っているのか、真冬でもベランダで吸う。
他人事ながら「寒いだろうなあ~」とご同情申し上げたくなる。
寒風吹き荒ぶベランダでタバコを吸って風邪をひいても、
ご家族の同情はあまり得られそうにないところにもご同情申し上げたい。

 
そんな冬のある日―

夜もだいぶ更けた頃、何気にカーテンを開けて窓の外を見た。
あんまり風が強いので、鉢植えが気になったのだ。
すると、部屋の明かりに照らし出されたベランダに、
ぽつんとタバコの箱が落ちているのが見えた。
我が家とお隣りを仕切っているボードから約1メートルという距離からすると、
まず間違いなくこちらのお宅から吹き飛ばされてきたものに違いない。

私はその小さな箱を拾い上げた。
中を見ると、まだたくさん残っている。
いつからそこに落ちていたのかはわからないが、
たとえ湿気て不味くなっていたとしても、
こちらで勝手に処分するわけにはいくまい。
これはお隣りのご主人に返さねば。

翌朝、出勤時刻の忙しい時間帯を避けて、そのタバコをお隣りに持って行った。
本当はご主人がまだ在宅のうちに届けるべきだったかもしれないが、
たとえお隣りさんでも、人を訪ねるにふさわしい時間というものがある。
そこで私は、幼稚園のお見送りも済んだと思しき時間を見計らって訪ねた。
すると…

「すみませーん、ありがとうございますー!
 ゆうべ、主人が『お隣りにタバコが飛んでいったかもしれない』って
 話してたんですよ」

やはりご主人のタバコだった。よかった、よかった。

「あのー、これ、もしよろしかったらどうぞ」

奥さん、ゆうべから用意していたとみえて、さっと私の前に差し出した。
それがなんと…

 
黒胡椒のお煎餅!

 
とっさに遠慮する私に奥さんは、

「これ、とってもおいしいんですよ~」

あまり遠慮するのも無作法なので、キリのいいところ(?)で頂いた。
湿気たタバコがパリパリのお煎餅になって戻ってくるとは、
これはまるで「わらしべ長者」!(そうか?)
少し油分が多そうだけど、口にする前からうまいお煎餅であることを確信した。

実は私…

 
黒胡椒が大好き♪

 
唐辛子とどちらかを選べと言われたら悩むけど。(悩むのか!)

あまりにツボな品物なので、もう少しでお隣りさんに畏怖の念を抱くところだった。
なぜ我が家の好みがわかったのだろう…?
もしや、お隣りさんもお酒が「いけるクチ」ではないだろうか?
なぜなら、このお煎餅、どう味わってもお茶請けというよりおつまみだもの。
夫にも好評だった。

これはビールにぴったり!
まるで和風ジャーマンポテト!

あ…いや、無理に名付けなくてもいいか。

 
翌朝、カーテンを開けている私に夫が言った。

 
「またお煎餅が落ちているか見てみたら?」

 
ぬうぅ…この男は…!

速攻で青空喫煙所に締め出そうかと思った私だった。


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