センサー

「あれ……？　電気点いてる」

昨夜、半畳ほどの玄関を白熱灯が照らしているのに気づいた。

その電球は壁についている赤外線センサーと連動している。
ごく小さな切替スイッチで連続点灯にも常時消灯にもできる。

さっきゴミを出しに行ったけれど、そんなに長い時間消えないことはない。
もしかして、知らないうちに手が触れて連続点灯になったのかも？

そう思って確かめに行くと、普段通り、センサーで点灯する設定のまま。
つまり、点いた電灯は15秒ほどで消えるはずだった。

それならなぜ、今、点いているんだ？

おかしいとは思ったけれど、しばらくして消灯したので、
センサーの気紛れだと思うことにした。

それから30分以上経った頃、ふと、廊下を見た。

またしても玄関の明かりが点いている……！

いったいセンサーは何に反応したのだろうか？

ネットで少しだけ検索すると、赤外線センサーは、
強風や温度変化によっても誤作動を起こすことがあるそうな。

　推測その１
　　居間のドアを勢いよく開けたため、
　　冷房で冷やされた空気が一気に玄関へ流れ込み、
　　誤作動を引き起こした。

「ああ、さっき俺が開けたよ」と夫。
さっきのはそれでいいとしても、一回目の時はどうだったかなあ？

　推測その２
　　ゴキ君が壁歩きをした。

不愉快な推測であることと、ヤツの姿が見えないので、これは却下！

　推測その３
　　空き巣が出入りした。

もしそうなら、センサーを切らないはずがないし、物色に30分もかけるはずがない。
それに、今のところ何も被害がないので、これも却下。
となると――

　推測その４
　　幽霊が出入りした。

ふむ。違和感がない。本当にそうなのかも。
玄関から出入りするなんて、律儀で礼儀正しい幽霊かもしれない。
あいにくと霊感のない夫婦なので、粗茶も出せなかったけれど。

ともあれ、99.99％誤作動だろうと結論づけた。


寝る間際、私は言った。

「すーっと入ってきて、しばらく居て、またすーっと出て行ったんだよ。
　よかったね、もういないよ、きっと」

夫は怖がりなのだ。
ところが。

「最初からうちにいて、ちょっと出かけて、また戻って来たのかもよ」

……言わなきゃよかったよ。



（思わぬ返り討ち）