本屋タカクラの日記

野良(放浪)書店員の日常 25年あちこちの書店で働いた元書店員で現在ライターのタカクラミエです。

検査結果

2022-05-07 17:54:13 | がん日記
検査の結果は異常なしであった。
4ヶ月に1回CT検査を受けている。昨年までは2ヶ月に1回だった。次回のCTで問題なければ、ちょうど下咽頭癌の治療から2年が経過するので、CT検査は半年に1回にしていいだろうとのこと。検査の結果が出るまでドキドキするかと言うと、まあそんなにはしない。ドキドキして心配して過ごしても、晩御飯のことなど考えながら過ごしても、結果は変わらないと知ってるからだ。ただ診察室に入る瞬間、「これで、もし何か見つかったら、またあっち側に行くんだな」とは考える。あっち側とは、もしかしたら死ぬかもしれない世界ってことだ。
でも、生まれ落ちた瞬間から、いや生まれる前から、命というものが宿った瞬間から誰しもが「もしかしたら死ぬかもしれない世界」いや、もしかせずともいずれは死ぬ世界を生きているのだ、ということを50歳ぐらいからわりとリアルなこととして考え始めていたように思う。なので、そのパーセンテージがだいぶあがるな、ぐらいのあっち側だ。
 わりと冷静にいろいろ受け止められるのは、これまで読んできた膨大な本でいろいろ予習していた、ということもあるが、20年前くらいに「悪性リンパ腫の疑い」で、徹底的に検査をするという経験をしたことも大きいかもしれない。
 長男が3歳ぐらいだったと思う。扁桃腺の片側が腫れて、風邪の症状もないのにおかしいなと思って病院に行ったのだった。「悪いものかもしれない」から、とちょっと組織を切り取らせて欲しいと言われ、チョッキンと麻酔など無しで切り取られ病理検査の結果、99%悪性リンパ腫です今すぐ治療を開始してくださいと、検査をした大学病院からは言われた、とのことだった。しかし医師は煮え切らない。若い医師は、「全身状態を見る限り、そんな状態とはとても思えない(そんなに悪くない)」、部長医師が「いまは遺伝子検査をしたら、将来乳がんになるかとかもわかりますからね」とか言われて、もっと詳しい検査をすることになり、今度は扁桃腺の肉をちょっと切らせてください、ということで、やっぱり麻酔無しで今度は2カ所ちょきちょきと切られた。検査結果を待とうとしたところ、数日後に病院から電話があり、その検査は保険適用外で6万円かかりることがわかりました、と言いにくそうに言う。どういうことかと病院に行くと、若い医師と部長医師がいて、部長医師は悪性リンパ腫の治療をもう始めましょうか、という雰囲気。全身状態は悪くないと言った若い医師に「あなたはどう思われるんですか?」と聞いたら「やっぱり、悪性リンパ腫とは思えないので、とりあえず抗生剤で様子をみてみたい」ということだった。6万円の検査をすれば、絶対に癌かどうかわかるんですか?ときくと、「いや、切り取った場所に癌があるかどうかしかわからない」と言う。ななななんですと〜〜。そんな検査のために2カ所も肉を! という言葉は飲み込み。じゃあ、わたしは「アナタ(若い医師)の意見を信じますよ」ということで、抗生剤を処方されて1週間で治った。
 この検査のすったもんだの時に(かれこれ1ヶ月くらいかかってる)、まだ子供は3歳ちょっとなのに長女は1歳にもなってないのに、今死んだら顔さえ忘れられてしまう、っていうか死ぬのはイヤだよ〜〜〜〜。と、それはそれはいろいろ思い悩んだのだ。たぶん禿げたと思う。少し。
 それから、頭痛がすると言っては「脳腫瘍かもしれません」と救急病院に駆け込み(自分の足で歩いてきたんでしょう?と医師からは鼻で笑われながら検査)。胃が痛いと言っては「これはたぶん胃がんか何かではないか」と医師に詰め寄り、という三十代を過ごし、まあ、その、あらゆる心配をその時代に全部してしまったのだった。
 あとは、こどもが2人とも成人してしまってるというのも大きいかもしれない。ただし、いまは同居人という新たな「死んどる場合じゃない」問題が浮上はしてはいるのだが。
 3年前には食道癌もやっているのだが、そちらは去年から1年に1回の検診になっている。再発の可能性はいつだってあるし、癌の発症の可能性は誰にだってある。わたしなんかは、初期に見つかったり、ステージ4でも治療がよく聞いていまのところ癌細胞は消滅してると言われてるのだし、もし再発しても、どんどん進歩してる治療法で、だらだらと往生際悪く治療を続けて、しつこく生き続けるような気がするので、なんだか本当に、癌サバイバーってことすら忘れてるときが多い。
 それより、ジョギング中に転んで骨折したり、駐車場の車止めに足を引っ掛けて転んで後頭部に裂傷を負ったり(救急車で運ばれましたが、縫いもせずに帰宅)など、老化によるミスで怪我したりなどが多いので、そっちのほうがよっぽど要注意なのだった。
ということで、検査結果をお伝えするのは、今回で最後にしようと思います。もうすぐ2年、すっかり元気です。



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