八ヶ岳のフクロウ
SUZUKI, T., A. HIGUCHI, I. SAITO, S. TAKATSUKI
FOOD HABITS OF THE URAL OWL (STRIX URALENSIS) DURING THE NESTLING PERIOD IN CENTRAL JAPAN.
Journal of Raptor Research, 47 304-310.
この論文は鈴木大志君の卒業論文がもとになっています。八ヶ岳にかけられた20ほどのフクロウの巣に残されたネズミの骨を分析したところ、草原性のハタネズミと森林性のアカネズミ系の骨が出て来ましたが、その比率は巣の位置と牧場との距離に比例して、牧場に近いほどハタネズミが多いという結果でした。このことは森林伐採によってネズミの生息が変わり、それがフクロウの食性に影響するということを示唆します。実際に八ヶ岳の牧場でネズミの捕獲調査をしたら、牧場ではハタネズミだけが、ミズナラ林ではおもにアカネズミが捕獲されました。日本のフクロウはユーラシア北部にヨーロッパまで分布していますが、大陸ではおもにハタネズミを食べています。日本のフクロウは密生した森林でアカネズミ食に特化したもののようです。論文の査読者とのやりとりでよい勉強をさせてもらいました。
アファンの森のカエル
小森 康之・高槻 成紀 , 2015. new!
アファンの森におけるカエル3種の微生息地選択と食性比較.
爬虫両棲類学会報 2015(1) : 15-20. この論文はアファンの森にいる数種のカエルのうち、数の多いアマガエル、ヤマアカガエル、トチガエルの3種をとりあげ、どこにいたか、何を食べていたかを比較したものです。カエルの食べ物を調べた研究はかなりあるのですが、ほとんどは田んぼのカエルです。田んぼというのはきわめて単純な環境です。またここの種についてはかなりの分析例があるのですが、同じ場所に複数いるカエルの比較をしたものはごく限られています。そういうわけで、林も、草地も、池もあるアファンの森ではどうなっているかを調べてみました。担当した小森君は両生類、爬虫類が大好きで、アファンの森に言ってはカエルをみつけて、どこにいたかを記録し、捕まえて「強制嘔吐法」という方法で、要するに喉を刺激するとカエルは胃を出す!ことを利用したテクニックがあるので、それで調べることを試みました。ところがアファンのカエルはすべて胃がカラでした。それでしかたなく一晩飼育して、糞を回収しました。糞が出るのだから胃にないはずはないのですが、クマがいて危険なので、夜の捕獲は禁じました。カエルは夜食べて昼には内容物が腸まで移動していたものと思われます。糞からどのくらいわかるか心配でしたが、3種の違いをいうということについてはそれを指摘するサンプルを得ることができました。
どこにいたか?についてはアマガエルは草や枝の上が多く、ヤマアカガエルは林の地面、ツチガエルは池の近くだけにいました。なんとなく私たちがもつイメージを裏付けるものでした。食べ物もこれを反映していて、アマは甲虫など草や枝にいるもの、アカはミミズやカマドウマなど地上にいるものがよく出てきました。ただし、ツチはとくに水辺にいるものはでてきませんでした。
田んぼのように畦と田しかない物理的にも単純な場所と、森林では立体構造、生えている植物、そこにすむ小動物もはるかに複雑です。しかもアファンには池もあれば、草地もあります。そこでカエルは違う場所にいて、違うものを食べることで資源分割をしていると思われることを支持するデータがとれました。
小森君は東京の都心で生まれ育ったのですが、生き物が好きで、飼育もずいぶんした(現在も)ようです。それだけに、アファンの森の生き物の豊富さに感激したようです。がんばってよい卒論を書いてくれたので、それが学術雑誌に掲載され、うれしく思いました。
SUZUKI, T., A. HIGUCHI, I. SAITO, S. TAKATSUKI
FOOD HABITS OF THE URAL OWL (STRIX URALENSIS) DURING THE NESTLING PERIOD IN CENTRAL JAPAN.
Journal of Raptor Research, 47 304-310.
この論文は鈴木大志君の卒業論文がもとになっています。八ヶ岳にかけられた20ほどのフクロウの巣に残されたネズミの骨を分析したところ、草原性のハタネズミと森林性のアカネズミ系の骨が出て来ましたが、その比率は巣の位置と牧場との距離に比例して、牧場に近いほどハタネズミが多いという結果でした。このことは森林伐採によってネズミの生息が変わり、それがフクロウの食性に影響するということを示唆します。実際に八ヶ岳の牧場でネズミの捕獲調査をしたら、牧場ではハタネズミだけが、ミズナラ林ではおもにアカネズミが捕獲されました。日本のフクロウはユーラシア北部にヨーロッパまで分布していますが、大陸ではおもにハタネズミを食べています。日本のフクロウは密生した森林でアカネズミ食に特化したもののようです。論文の査読者とのやりとりでよい勉強をさせてもらいました。
アファンの森のカエル
小森 康之・高槻 成紀 , 2015. new!
アファンの森におけるカエル3種の微生息地選択と食性比較.
爬虫両棲類学会報 2015(1) : 15-20. この論文はアファンの森にいる数種のカエルのうち、数の多いアマガエル、ヤマアカガエル、トチガエルの3種をとりあげ、どこにいたか、何を食べていたかを比較したものです。カエルの食べ物を調べた研究はかなりあるのですが、ほとんどは田んぼのカエルです。田んぼというのはきわめて単純な環境です。またここの種についてはかなりの分析例があるのですが、同じ場所に複数いるカエルの比較をしたものはごく限られています。そういうわけで、林も、草地も、池もあるアファンの森ではどうなっているかを調べてみました。担当した小森君は両生類、爬虫類が大好きで、アファンの森に言ってはカエルをみつけて、どこにいたかを記録し、捕まえて「強制嘔吐法」という方法で、要するに喉を刺激するとカエルは胃を出す!ことを利用したテクニックがあるので、それで調べることを試みました。ところがアファンのカエルはすべて胃がカラでした。それでしかたなく一晩飼育して、糞を回収しました。糞が出るのだから胃にないはずはないのですが、クマがいて危険なので、夜の捕獲は禁じました。カエルは夜食べて昼には内容物が腸まで移動していたものと思われます。糞からどのくらいわかるか心配でしたが、3種の違いをいうということについてはそれを指摘するサンプルを得ることができました。
どこにいたか?についてはアマガエルは草や枝の上が多く、ヤマアカガエルは林の地面、ツチガエルは池の近くだけにいました。なんとなく私たちがもつイメージを裏付けるものでした。食べ物もこれを反映していて、アマは甲虫など草や枝にいるもの、アカはミミズやカマドウマなど地上にいるものがよく出てきました。ただし、ツチはとくに水辺にいるものはでてきませんでした。
田んぼのように畦と田しかない物理的にも単純な場所と、森林では立体構造、生えている植物、そこにすむ小動物もはるかに複雑です。しかもアファンには池もあれば、草地もあります。そこでカエルは違う場所にいて、違うものを食べることで資源分割をしていると思われることを支持するデータがとれました。
小森君は東京の都心で生まれ育ったのですが、生き物が好きで、飼育もずいぶんした(現在も)ようです。それだけに、アファンの森の生き物の豊富さに感激したようです。がんばってよい卒論を書いてくれたので、それが学術雑誌に掲載され、うれしく思いました。
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