高槻成紀のホームページ

「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

モモンガの全身骨格

2018-12-02 21:24:42 | 標本
毎日少しずつ作っていた標本がようやく出来上がりました。これから滑空している状態にしないといけませんが、骨格はできたということです。針状軟骨もなんとかうまくできました。


2018.12.14 骨格完成
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2018-12-02 18:40:01 | 研究
ムササビは胴長に対する胃の長さが38%もあって大きいなという印象でしたが、モモンガは24%でした。長さの割に幅が広いので、長さによる数字の意味はあまりないかもしれませんが、モモンガの方が胃は小さい印象です。


モモンガの胃と、その内容物

中身を取り出して顕微鏡で覗いて見ましたが、よくわかりませんでした。不透明なモワモワしたものが多く、葉と認められたものは10%以下でした。でんぷん質のようなので、ドングリなどかもしれません。保存はしておきます。
 ムササビはサルナシばかりだったので、どちらも葉食専門ではないということだけは言えます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

飛膜

2018-12-02 17:06:33 | 研究
安藤・白石(1985)の「ムササビにおける相対成長と滑空適応」という論文を読みました。ムササビが主体ですが、モモンガを含め、新生児から成獣になるまでに体がどう変化するかを論じた論文で難しいところもあるので、要点をわかりやすく説明しておきます。

 リスの仲間であるムササビ、モモンガは飛膜で滑空しますが、同じことをする哺乳類でヒヨケザルというのがいます。私も去年ジャワで見ました。ヒヨケザルはムササビなどに比べて顔から手までに飛膜があり、後肢から尾にも飛膜があり、6角形の飛膜を持っています。針状軟骨はないため、手足の先までは飛膜がありますが、それ以上ではありません。そのため面積を稼ぐために必然的に手足は長くなっています。その結果、木を移動するのは苦手です。


飛膜の比較


ヒヨケザルは四肢が長いので樹上を歩くのは苦手 https://plaza.rakuten.co.jp/yamashoubin/diary/201407190000/ 


このことを考えると、ムササビの針状軟骨は手足を短いままで、樹上の移動にも支障が少なく、いざ飛ぶときにピンと「指代わりの骨」である針状軟骨を伸ばして飛膜面積を大きくしているということです。


モモンガ。四肢の長さはリスなどと同じ程度であり、樹上でも支障なく移動できる。https://hb-l-pet.net/small-animals/


 針状軟骨については柔らかくて「たわみ」を持っており、そのために飛膜の前端縁がカーブを描きますが、それは角張っているより飛ぶために好都合だといいます。そういえば飛行機の翼も半円形にカーブを描いています。
 また柔らかいことは上に反り返りを生みますが、これは横滑りを少なくするそうです。確かにトビやアホウドリなどの翼の先は反り返っています。


アメリカモモンガの飛翔を写真から描く。飛膜の前の端に長い毛があり、滑空時には反り返る


 安藤・白石( 1985)は、ムササビの尾は鳥の尾とは違うことを指摘しています。鳥の尾は低速飛行するときは広がって揚力になり、滑空するときは方向舵になりますが、ムササビの尾は全く違い、重心を後ろに置き、抗力を生んで滑空姿勢を安定させるためだとしています。確かにムササビの滑空写真をみると尾はまるで横広のブラシのように広がって空気抵抗を生んでいるように見えます。


滑空するムササビ。尾は水平に開いて空気抵抗を大きくしている。https://troutinn.exblog.jp/24748009/




 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モモンガの全身骨格 ほぼ完成

2018-12-02 14:48:36 | 研究
モモンガの骨格標本を針金に乗せて台に固定しました。本当なら真鍮などの台座が望ましいのでしょうが、そこまではできないのでアルミ針金です。そこから手足の台になる針金を伸ばし、極細の針金で手足を固定しました。私の技術ではこのくらいまで、というところです。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

基本情報

2018-12-02 11:28:24 | 研究
モモンガの計測値など(体重以外はmm)
場所  神奈川県丹沢湖近く
年月日 2018.11.26
性別  メス
体重  104g
鼻から尾の付け根  153
肩から尾の付け根  90
尾         140
肩から針状軟骨の縁 212
上腕        32
ひじ-手先     59
前足        22
大腿        31
膝から足先     36
脛骨        51
後足        36
耳         13
ヒゲ        52
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

剥皮

2018-12-02 11:13:33 | 研究


皮を剥いだところです。この段階では針状軟骨の外側にある毛をつけたままです。



毛を外したとことです。ムササビと同様、「鎌を持った」ような特異な姿です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

手足

2018-12-02 10:57:59 | 研究


手は、まあリスの手に近いです。広げなければ針状軟骨も目立ちません。下の写真は骨標本にするために水につけていたものを取り出したものです。針状軟骨はかなり下についています。手根骨との位置関係は表面からはわかりませんが、手首に近いあたりから出ています。






足はこんな具合で、取り立てて特別なものではないようです。



注目は針状軟骨です。腕の長さと比べるとそれと同じほどの長さがあります。その前側に長めの毛が生えています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モモンガ 外観の観察

2018-12-02 09:29:00 | 最近の動き

 ムササビを入手して、その処理も終わらないうちに同じ半場さんから「今度はモモンガを手に入れたよ」と連絡がありました。山で愛犬が拾ってきたということです。それを送ってもらいました。
 体重は104グラムで、ムササビの10分の1、胴長も90ミリでムササビの3分の1ほどしかありません。目が大きく可愛いのですが、ヒゲが52ミリもありました。


モモンガの横顔 目が大きく、ヒゲが長い

また、尾が長くて、ムササビで205ミリだったのですが、モモンガで140ミリあり、半分以上でした。つまり胴長に対する尾の比はムササビで0.79であったのに対して、モモンガは1.56もありました。



 背面を見るとムササビとさほど違わない印象ですが、針状軟骨を広げて飛膜を最大限に開くと「座布団」ではなく前半で広くお腹のあたりでは狭くなる形になりました。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする