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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

タヌキが利用する果実の特徴 - 総説

2018-05-08 16:31:03 | 最近の論文など
2018.5.8
タヌキが利用する果実の特徴 - 総説

高槻成紀
哺乳類科学, 58: 1-10.

摘 要
 ホンドタヌキ(以下タヌキ)が利用する果実の特徴を理解するために,タヌキの食性に関する15編の論文を通覧したところ,タヌキの糞から103種の種子が検出されていた.これら種子を含む「果実」のうち,針葉樹2種の種子を含む68種は広義の多肉果であった.ただしケンポナシの果実は核果で多肉質ではないが,果柄が肥厚し甘くなるので,実質的に多肉果状である.また,乾果は30種あり,蒴果6種,堅果4種,穎果4種,痩果4種などであった.このほかジャノヒゲなどの外見が多肉果に見える種子が3種あった.果実サイズは小型(直径10mm未満)が57種(55.3%)であり、 色は目立つものが70種(68.0%)で,小型で目立つ鳥類散布果実がタヌキによく食べられていることがわかった.「大型で目立つ」果実は15種あり,カキノキはとくに頻度が高かった.鳥類散布に典型的な「小型で目立つ」な果実と対照的な「大型で目立たない」果実は10種あり,イチョウは検討した15編の論文のうちの出現頻度も10と高かった.生育地ではとくに特徴はなかったが,栽培種が21種も含まれていたことはタヌキに特徴的であった.こうしたことを総合すると,タヌキが利用する果実には鳥類散布の多肉果とともに,イチョウ,カキノキなど大型の「多肉果」も多いことがわかった.テンと比較すると栽培植物が多いことと大きい果実が多いことが特徴的であった.

以前にテンについて同じ趣旨で論文を書きました。その比較をすると、タヌキの方が多様な果実を食べること、大きな種子を含む果実を食べること、栽培植物をよく食べることなどがわかり、タヌキの特徴を反映していました。
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