麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

まどげしき

2024年08月10日 | 身辺雑記

高層億ションに住まわっていない。

だから眼下に見下ろす風景とは無縁。

けれど、たまに旅をして、

車窓の風景にひたることはある。

新幹線からの富士山を楽しみに

窓側に座る人が多いとも聞くが、

私は余り惹かれない。かわりに

山あいに突然現れる寺院の

荘厳な瓦屋根、あるいは

工場の錆びたトタンの三角屋根と

奥に覗く煙突から昇る排煙の

白いたなびきとのコントラストが

何故かその旅程全体への期待になる。

 

何の変哲もなく並ぶ住宅群の

庭のひとつで、麦藁をかぶり

手拭いを首にランニング姿の男が

烟草片手に空を仰ぐ一瞬だったり、

まるで新幹線と競争するように

白ヘルに制服の中学生が

自転車で並走する数秒もまた

見知らぬ地での不安を和らげる。

 

好きな女の子への告白権を

勝手に争っている二人だが、

憧れの当人は塾の先輩と既に良い仲。

 

自分は20年も昔にやめたけれど

去年逝った妻は最期までのんでいた。

彼女の月命日に偲んだ一服なのか、

初めて孫娘が一人で遊びに来るから

庭野菜を採ったあとの一息か。

 

すべて夢想だけれど、窓景色に

それらは目まぐるしくスライドする。

週末、義母の墓参りの鉄路。

 

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