敏腕Pの日々のつぶやき

テアトルシアター代表、と言ってもたった一人。敏腕演劇プロデューサー目指し、観劇評や日々の生活で気になったことを綴ります。

四十一番の少年

2018年08月06日 | 鑑賞
〈四十一〉。
私にとっては生まれた年である。
とはいえ、西暦一九四一年の
喜寿ではなく、ひとつ前の年号
昭和の方なので、七十七才よりは
少しだけ若いお年頃だ。

文春文庫『四十一番目の少年』は
井上ひさしの短編集であり、
表題作のほか『汚点-しみ-』
『あくる朝の蝉』から成る。
全てが養護施設にいる少年の話で、
けれども三作は独立した物語。

『四十一~』の主人公は橋本利雄。
偶然だが、私の妻の旧姓が名字で、
私の名とは音で一文字違いと奇遇。
……それはまぁいいとして。

今はテレビの仕事に就く利雄が
二十数年ぶりに、ふらりと訪れた
ナザレト・ホームの描写から始まり、
当時は修道志願士だった桑原と再会。
ホームの中へと招かれる。
英単語カードほどの札が五、六百。
収容児童の歴代の洗濯番号の木札で、
その四十一番には橋本利雄と。
彼は懐かしい番号と名前を思い出す。

そして時は昭和二十四年に移る。

利雄は来春から高校へ通う年齢だ。
既に高校を出た十五番の松尾昌吉。
養護施設のリーダー格の彼と
新入りの利雄との関係を軸に
サスペンス仕立てで展開していく。
表題作に相応しい暗い重さの一編。

同じ名称の施設で暮らす中三の
「ぼく」が主人公の『汚点』には
高校生の船橋を筆頭にした
別の悪い先輩たちが登場するが、
その理不尽ないじめよりも、
岩手南部の小都市にいる弟との
手紙による交流に焦点が当たる。
港町で飲み屋を出すべく母は
弟を置いてラーメン屋を出ていた。

下宿人から出前持ちに格下げされた
弟の手紙には以前はなかった
レバー炒めだかの汁がつくようになり、
やがては救いをもとめる内容に……。

あらすじを紹介したいわけではない。
最終的に兄と弟が鈍行に乗る場面で、
三十五頁の掌編は終わる。

そして『あくる~』は兄と弟が
汽車を降りるところから始まるが、
時は移り「ぼく」は高一、弟は小四、
その夏休みに祖母の家を訪ねる話。

亡き父の故郷に当たり、
主人公もその町で生まれている。
新鮮なのは、土埃と革馬具の匂いを
ぼくが懐かしく思う場面だ。

1934年生まれの井上ひさし。
存命なら83才の彼の幼少期、
まだ馬が大きな労働力だった日本。
一世紀もしない間の発展に驚く。
・・・発展?
と、ここを掘るとややこしくなる。

巻末。
発行者は白川浩司(しらかわひろし)。
僕の知人で、日本新劇製作者協会の
事務局長は白川浩司(しらかわこうじ)。
彼は某コメディ劇団の製作者でもある。
そして、ある時代に彼の元で
精力的に働いた若き制作が、
実にひさし氏に似ていて、
皆からよくいじられていた。

唐突なようだが、その劇団に
井上ひさしは所属していた。

今日は8月6日。
井上戯曲の名作のひとつ
『父と暮せば』はヒロシマの話。



それはまるで別の話です。
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