山

僕の叔父さんは山で死んだらしい。
もう一人の叔父さんは海で死んだ。

山で死んだ叔父さんの事を小さい頃から聞かされていたからか、登山は怖いものだと思っていたし、今もどこかで怖い。
確か詳しくは知らないが、今の職場の人も登山で大きい怪我をしたそうだ。
それでも登りたくなるだなんて不思議なもんだと思う。

でも歌う旅もそうか。
また来るよって歌い終わり、盃を交わして笑顔で別れたらまた行っちゃう。
サラリーマンの頃はライブする事も遠征に出かける事もとても変な人を見るような顔をされた。
もちろん理解ある人も居たけれど、大抵はそうだったな。

それでも行くんだよ。

海も怖い（笑）
ボートが流されて、後少しでこの世にグッバイだった経験がある。
近くを通った漁船が引っ張ってくれて何とか助かった。

どんどん沖に流されて行くボートで、僕は怖いと思うより、必ず助かると思ったし、大丈夫だとも思ったからゆっくり横になっていた。
後で聞いたら浜辺では大変な騒ぎになっていたらしい。

死んだ親父は山で死んだ兄弟の事をどこか誇らしげだった。
よく理解出来なかったけど、最近ようやくその気持ちも分かるようになった。