瀬崎祐の本棚

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彼方へ 1号  (2017/12) 埼玉

2018-01-16 22:25:29 | 「か行」で始まる詩誌
 岡野絵里子、川中子義勝の2人の編集発行による詩誌。それにもう一人、ダニエル・マレイの詩と散文が岡野の翻訳で掲載されている。24頁。

 「Wintering」岡野絵里子。
 2章からなり、「ⅰ星霜」ではいくたびも“越冬”してきた人たちの営みが、そして「ⅱ果実」では秋から季節が移っていく覚悟のようなものが、詩われている。冷たさと向きあうことは我が身から余分なものを矧ぎ落とし、中心に残るものだけを見つめるようなことなのだろう。言葉もその決意で透きとおるように澄んでいる。

   私たちは甘く沈む
   生き物の昏い喜びと
   とろけるような寂しさの中へ

   光が帰って行く
   この一日は照らし終えた と
   並べられた果実はそれぞれの
   小さな冬を眠っている

 岡野の2編の対になったエッセイ、「十一歳の会社」「来てくれた人」は懐かしさと切なさが残されるものだった。

 「呵責--未生のいのり」川中子義勝は4章からなっており、集団の中の個を描いている。「斥力」では、籠をめざした玉入れの球がぶつかり合う。「野分」では群れからはぐれて死んだ蜂が、「伝説」では銃殺刑の執行を命じられたソルブの少年兵たちが詩われる。集団がくずれて個が残るのだが、その個はやはり集団の中にあっての個なのだった。

   山が崩れるその一瞬は
   端から順に倒れおちてゆく
   それぞれの身ぶりでとなりに
   位置の苛酷を訴えながら
               (「4杉生」より)

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