岡野絵里子、川中子義勝の2人の編集発行による詩誌。それにもう一人、ダニエル・マレイの詩と散文が岡野の翻訳で掲載されている。24頁。
「Wintering」岡野絵里子。
2章からなり、「ⅰ星霜」ではいくたびも“越冬”してきた人たちの営みが、そして「ⅱ果実」では秋から季節が移っていく覚悟のようなものが、詩われている。冷たさと向きあうことは我が身から余分なものを矧ぎ落とし、中心に残るものだけを見つめるようなことなのだろう。言葉もその決意で透きとおるように澄んでいる。
私たちは甘く沈む
生き物の昏い喜びと
とろけるような寂しさの中へ
光が帰って行く
この一日は照らし終えた と
並べられた果実はそれぞれの
小さな冬を眠っている
岡野の2編の対になったエッセイ、「十一歳の会社」「来てくれた人」は懐かしさと切なさが残されるものだった。
「呵責--未生のいのり」川中子義勝は4章からなっており、集団の中の個を描いている。「斥力」では、籠をめざした玉入れの球がぶつかり合う。「野分」では群れからはぐれて死んだ蜂が、「伝説」では銃殺刑の執行を命じられたソルブの少年兵たちが詩われる。集団がくずれて個が残るのだが、その個はやはり集団の中にあっての個なのだった。
山が崩れるその一瞬は
端から順に倒れおちてゆく
それぞれの身ぶりでとなりに
位置の苛酷を訴えながら
(「4杉生」より)
「Wintering」岡野絵里子。
2章からなり、「ⅰ星霜」ではいくたびも“越冬”してきた人たちの営みが、そして「ⅱ果実」では秋から季節が移っていく覚悟のようなものが、詩われている。冷たさと向きあうことは我が身から余分なものを矧ぎ落とし、中心に残るものだけを見つめるようなことなのだろう。言葉もその決意で透きとおるように澄んでいる。
私たちは甘く沈む
生き物の昏い喜びと
とろけるような寂しさの中へ
光が帰って行く
この一日は照らし終えた と
並べられた果実はそれぞれの
小さな冬を眠っている
岡野の2編の対になったエッセイ、「十一歳の会社」「来てくれた人」は懐かしさと切なさが残されるものだった。
「呵責--未生のいのり」川中子義勝は4章からなっており、集団の中の個を描いている。「斥力」では、籠をめざした玉入れの球がぶつかり合う。「野分」では群れからはぐれて死んだ蜂が、「伝説」では銃殺刑の執行を命じられたソルブの少年兵たちが詩われる。集団がくずれて個が残るのだが、その個はやはり集団の中にあっての個なのだった。
山が崩れるその一瞬は
端から順に倒れおちてゆく
それぞれの身ぶりでとなりに
位置の苛酷を訴えながら
(「4杉生」より)