第9詩集。90頁に硬質の散文詩20編を収める。
詩集タイトルおよび冒頭の作品タイトル「魂魄風」は、”まぶいかじ”と読む。”魂”は精神を,”魄”は肉体をつかさどるたましい、とのことであるが、このような名称の風が沖縄では吹くのかも知れない。
「魂守(たまも)る島」。その島では「何十何百という魂が 重なり合い 行き場もなく彷徨っている」のだ。その魂は何を見てきたのか。
風に吹かれ波に流され 辿り着いたものを 受け入れて
きた そうせざるを得なかった長い時間が 小さな島に
ゆったり漂っている
新しい季節が訪れれば、また祈りが始まるのだろう。歴史と一体となった南の島では、積み重なった時間が風土を激しい色彩で染め上げている。すると、その色彩の中から沖縄という島全体が立ち上がってくるようだ。
「雨を待ちながら」。「百(もも)折れ千(ち)折れ 重い荷物を担いで あなたは やってきた」のだ。部屋の中はどこも暗くて、月光が差し込んでいる。静けさがあたりを支配しているのだろう。そしてあなたの荷物から「丸い魂(マブイ)が たった一つ転げ出た」のだ。
自分のものでも 外に出てしまった以上 どうすること
ができよう 丸い魂を 赤子のようにあやしながら 縁
側に座り 外を眺めると 黒々とした大きな山が 被さ
ってくるように近く どこかで 川が激しく流れている
音がする
こうして話者は届けられた自分の内側のものと対峙している。最後では、わたしは闇の中に浮かんでいるのだ。そして「ただ 天から落ちてくる 冷たい 雨を待」っているのだ。完全に閉じられた世界に話者はいるようなのだ。この孤独な精神性の強さ、厳しさがひしひしと伝わってくる。
詩集タイトルおよび冒頭の作品タイトル「魂魄風」は、”まぶいかじ”と読む。”魂”は精神を,”魄”は肉体をつかさどるたましい、とのことであるが、このような名称の風が沖縄では吹くのかも知れない。
「魂守(たまも)る島」。その島では「何十何百という魂が 重なり合い 行き場もなく彷徨っている」のだ。その魂は何を見てきたのか。
風に吹かれ波に流され 辿り着いたものを 受け入れて
きた そうせざるを得なかった長い時間が 小さな島に
ゆったり漂っている
新しい季節が訪れれば、また祈りが始まるのだろう。歴史と一体となった南の島では、積み重なった時間が風土を激しい色彩で染め上げている。すると、その色彩の中から沖縄という島全体が立ち上がってくるようだ。
「雨を待ちながら」。「百(もも)折れ千(ち)折れ 重い荷物を担いで あなたは やってきた」のだ。部屋の中はどこも暗くて、月光が差し込んでいる。静けさがあたりを支配しているのだろう。そしてあなたの荷物から「丸い魂(マブイ)が たった一つ転げ出た」のだ。
自分のものでも 外に出てしまった以上 どうすること
ができよう 丸い魂を 赤子のようにあやしながら 縁
側に座り 外を眺めると 黒々とした大きな山が 被さ
ってくるように近く どこかで 川が激しく流れている
音がする
こうして話者は届けられた自分の内側のものと対峙している。最後では、わたしは闇の中に浮かんでいるのだ。そして「ただ 天から落ちてくる 冷たい 雨を待」っているのだ。完全に閉じられた世界に話者はいるようなのだ。この孤独な精神性の強さ、厳しさがひしひしと伝わってくる。