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桐島、部活やめるってよ

2012-08-21 | 映画(か行)

■「桐島、部活やめるってよ」(2012年・日本)

監督=吉田大八
主演=神木隆之介 橋本愛 大後寿々花 東出昌大 清水くるみ

「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」の吉田大八監督最新作。金曜日の放課後に学校を駆け抜けた、バレー部のエース桐島が部活をやめたという噂。その情報は、そんな兆しすら感じなかった桐島と親しい男子学生たち、桐島の彼女とその友人たちを戸惑わせる。彼が所属するバレー部はただならぬ雰囲気に。この事件の後、それまでのつきあいの中で抑えられていたそれぞれの気持ちや本音が少しずつ表面化していく。そして特に桐島と接点をもたない映画部の面々までも突き動かしていくことになる・・・。予備知識もなくストーリーだけ読んでも「だからどうなる?」としか思えないことだろう。僕はこの映画の予告編に何か感ずるものがあった。力強い歌声が流れる中、叫び、つぶやき、駆け抜ける高校生たち。それはここ数年日本映画が描いてきた陰湿で屈折した学園の姿ではない。もっと心の違うところに突き刺さるような・・・そう、これは自分の過去に向き合わされて痛みを感じる映画。

「○○さんの友達」であることで周りから見下されずに済んだという経験、あなたにはないだろうか。クラスの中心人物や人気者ととりあえず仲良くしていれば、つまはじきにされることもないし、時にはよいこともある。その○○さんがこの映画の桐島だ。劇中、桐島という男子学生は一切登場しない。屋上にいた男子が桐島だ、と誰かが言い出して全員が屋上に走るクライマックスにも登場しない。登場人物たちは桐島を経由してつながっている存在だ。桐島の親友と周囲が認めている宏樹(野球部)は、桐島に次いでスポーツもできて、モテる男子学生。だが、なにかモヤモヤしたものを感じて野球にも打ち込めずにいる。だが彼は桐島の退部を知らされもしなかったし、彼の存在の陰でいい目に遭ってきただけの存在だと気づかされる。宏樹と放課後バスケ興じる帰宅部たちも桐島の存在を欠くと、学校に残ってバスケをする意味すら失ってしまう。桐島の彼女とされる梨紗も彼と連絡がとれないことで次第に周りともうまくいかなくなっていく。そんな梨紗と仲良くしていたバトミントン部のかすみと実果も、梨紗たち帰宅部の前では理解されない、とバトミントンへの思い入れは口に出さずに抑え込んでいる。そして密かに宏樹に恋心を抱く吹奏楽部の亜矢。それぞれが心に秘めていた気持ちが少しずつ口に出され、歯車が狂い始める。だが、それは自分が初めて自分と向かい合わなければならない瞬間。

吉田大八監督はこの群像劇を見事にまとめている。繰り返される金曜日の描写は、偏りなく彼ら彼女らの表情を追い続ける。そしてそれらがクライマックスの屋上の場面に集約されていく。映画部の前田がカメラ片手に思いを語る場面。それまで自信にあふれていた宏樹の涙。動揺しながらも合奏を終えて、少しだけ亜矢が笑顔を取り戻すラスト。スクリーンに向かう僕らは、この映画の中に共感できる誰かを見つけられるだろう。運動部だった人は、桐島の存在を失って焦るバレー部、自分の限界をわかっていながらもポジションの穴を埋めようとする男子、ドラフトまでは引退しないという野球部キャプテンに。文化部だった人は吹奏楽部の亜矢に、体育会系の部活から格下に扱われる映画部の面々に。そして僕らは、彼らを通じて高校時代の自分と向かい合う。あの頃口に出来なかったこと、本音、友人に言いたくても言えなかったこと。自分が好きなことに打ち込んでいたこと、逆に好きなことを好きと言えなかったこと。実は惰性やつき合いで続けていた友人関係。バカばっかりやって過ごして楽しかったけど、反面感じていた焦り。高校時代が薔薇色なんて大嘘だし、本人が楽しいと思うかどうかにかぎらず、それはとてもとても"かっこ悪いもの"だ。そんな痛みと向かい合い、高橋優が叫ぶ主題歌を聴くと胸の片隅が痛くなる。この映画でそんな気持ちになれない・・・ならば、それはあなたがまだ自分を客観的に見ることができてないか、青春まっただ中だから。それとも自分こそが桐島だと胸を張っておられるか、だろうね。これはいい映画だ。

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