Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

シェイプ・オブ・ウォーター

2018-06-17 | 映画(さ行)

■「シェイプ・オブ・ウォーター/The Shape Of Water」(2017年・アメリカ)

●2017年アカデミー賞 作品賞・監督賞・作曲賞・美術賞
●2017年ヴェネチア映画祭 金獅子賞
●2017年全米批評家協会賞 主演女優賞

監督=ギレルモ・デル・トロ
主演=サリー・ホーキンス マイケル・シャノン リチャード・ジェンキンズ ダグ・ジョーンズ

ギレルモ・デル・トロ監督にまず謝罪。
わたくし、ヲタク監督だと見くびってたかもしれません。
m(_ _)m

でもその嗜好を貫いたからこそたどり着いたのがこの「シェイプ・オブ・ウォーター」だと思う。
元ネタはユニバーサルホラーのクラシック「大アマゾンの半魚人」。
スピルバーグもティム・バートンも実は大好きな元ネタ映画。
ゲーム「メタルギア」の中で、
パラメディックがスネークに「観たことある?」と尋ねる映画のひとつでもあるよね。

舞台は東西冷戦真っ只中のアメリカ。
政府の研究機関で清掃員として働くイライザは口がきけない。
同僚の黒人女性ゼルダが職場での彼女の良き理解者。
家族がいないイライザの唯一の友人は隣人の老画家だけ。
彼女が働く研究施設に、南米で捕らえられた半魚人が持ち込まれる。
拷問まがいの観察実験が繰り返され、彼の存在を政治利用しようとする東西陣営の駆け引きが裏側で進行していた。
イライザは彼と言葉を超えたコミュニケーションをするようになる。
ある日彼を解剖するとの方針が上層部から示される。
イライザは彼を守ろうとある行動に出る…。

「シェイプ・オブ・ウォーター」は独特な造形や美術も素晴らしい。
これまでにない設定や映像だと世間は騒ぐ。
確かに着想は独特だけど、
この映画から得られる感動は「美女と野獣」など"異形なるものとの愛の物語"と何ら変わることはない普遍的なものだ。
それ故に観客に受け入れられたし、批評家からも評価された。

映画の仕掛けが実に巧いと僕は思う。
背景を冷戦の時代としたことで、実は複雑な対立構図が観客にも理解されやすい。
キャスティングも、「スーパーマン」映画でゾッド将軍を演ずるくらい見るからに悪役なマイケル・シャノン、
同僚ゼルダを演ずるオクタヴィア・スペンサーもぽっちゃりした黒人女性=世話好きという
「風と共に去りぬ」から続くアメリカ映画の先入観で観客を安心させてくれる存在。
照明でヒロインだけに焦点を絞り、その心情を描く場面は実に見事。
映画愛も随所に生きている。
半魚人ももったいぶらずに意外とストレートに姿を現す。
スピルバーグなら少しずつ姿を見せていっただろう。
だが、デル・トロ監督の潔さは異形なるものへの恐怖心を取り除いてくれるのだ。

イライザにとって彼は、初めて一人の人間として自分を認めてくれた存在。
障害や偏見、社会的な立場が人間関係に影響する中で、見た目や形にとらわれない関係となるイライザと彼。
普遍的な愛の物語にヲタク趣味のホラー映画のテイストが昇華する。

降り始めた雨がバスの窓で踊る美しい場面。
ついては離れ、雨粒がダンスする。そこで流れるシャンソンに僕は涙した。
それは、セルジュ・ゲンスブールがジュリエット・グレコに捧げた名曲「ラ・ジャヴァネーズ」。
ここで歌われるのは、一曲を踊る短い時間に交わす男と女の愛の物語。
イライザと彼の愛の行方を匂わす憎い選曲だと思う。
これも計算尽くなんだろうな。

Madeleine Peyroux - La Javanaise (The Shape Of Water Soundtrack)


「大アマゾンの半魚人」と同じく、ヒロインを抱きかかえる彼の姿。
オリジナルでは恐怖だった場面が、デル・トロ監督の手でそれは涙に変わった。
参りました。

ギレルモ・デル・トロ描く純粋な愛の世界『シェイプ・オブ・ウォーター』予告編







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