Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ルビー・スパークス

2016-08-10 | 映画(ら行)

■「ルビー・スパークス/Ruby Sparks」(2012年・アメリカ)

監督=ジョナサン・デイトン & ヴァレリー・ハリス
主演=ポール・ダノ ゾーイ・カザン アントニオ・バンデラス アネット・ベニング

 ある日突然、理想の彼女が目の前に現れて、しかも自分を愛してくれる・・・なーんて"男子の願望"的な物語は、手を変え品を変え様々なものが作られてきた。長いこと映画ファンやってると「またかい」と思うこともあるけれど、むしろ僕はそのバリエーションを楽しんでいる。一方、無垢な女性を男性がリードして素敵な(しかも自分好みの)レディに育てていく物語も、世の東西を問わず恋愛映画で人気のある展開だ。「プリティ・ウーマン」や「マイ・フェア・レディ」に代表されるこれらの物語は、男性目線にはギリシャ神話をルーツにするピグマリオン願望が、女性目線には次第に洗練されていくヒロインに変身願望が共感を呼ぶポイントだ。そのどちらかだけでも十分ラブコメ映画は成り立っちゃうのだが、男性目線寄りに見たとき、この「ルビー・スパークス」はその両方の要素を含んでいると言える。そういう意味では面白いバリエーションだろう。

主人公はスランプの小説家。デビュー作の成功後、新作が書けずにいた。そんな彼は、繰り返し同じ女性が出てくる夢を見る。彼の願望とも言えるその女性、ルビーを小説に書いた。するとある朝目覚めると、その彼女が彼の自宅に現れた。しかも、小説に書き足すとその通りに彼女は行動するのだ。最初は信じられなかった彼だが、本気で彼女に恋をすることに。しかし、彼女の奔放な性格がだんだんと気に入らなくなった彼は、小説に新たな設定を書きこみ始める。

着想自体はよくあるファンタジーなんだろうけれど、この映画が見事なのは二人の関係の始まり方がどうであれ、男と女が関係を維持していく普遍的な難しさをきちんと描いているところだ。あんな娘が現れたらいいな、から始まる突飛な男子願望系のストーリーだけど、そこには血の通った男女の物語がある。

気まぐれな彼女との関係がギクシャクし始めて、それを修正しようとするために再び原稿を上書きする主人公のエゴ。それは見苦しくも恐ろしい場面。叫び狂い、のたうちまわるルビーの姿には、目を背けてしまいたくなる。劇中ゾンビ映画が挿入されるけど、それは主人公がルビーを現実世界に生み出したことが、死人を生き返らせたに等しいという暗示なのだろうか。だったら「フランケンシュタイン」を引用したら、もっとしっくりきたような気もする。この辺りは女子にはヘイトされる展開かもしれないし、この映画が他の同様なラブコメと並ぶ評価をされていない理由なのでは。

いかにも…な結末がありきたり?と言われればそれまでかもしれない。「(500)日のサマー」、ダイアン・レインの「愛にふるえて」(古っ)、水島裕子の「後ろからバージン」(例えが悪い・笑)に通ずるその結末。でも、だからこそ幸せな気持ちで僕らはエンドクレジットを迎えられるのかもしれない。

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