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お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

修羅雪姫

2013-12-02 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その30)★これがオーレン石井のルーツ!/修羅の花
修羅雪姫【期間限定プライス版】 [DVD]
■「修羅雪姫/Lady Snowblood」(1973年・日本)

監督=藤田敏八
主演=梶芽衣子 黒沢年男 西村晃

 「キル・ビル」の登場人物たちが着る衣装の中でもひときわ目を引くのが、ルーシー・リュー扮するオーレン石井が着る真っ白な着物姿。撮影当初から白で行く予定だったのだが、青葉屋で着る衣装は白か黒かで二転三転。理由はブライドの黄色いトラックスーツが目立つので、雪に白では沈んでしまう・・・ということ。ところが提案された黒の衣装はルーシー・リューが猛反対。大泣きしたそうだ。最後はルーシーが「お姫様っぽいイメージがいい」と言って白に決定したとか。結果、返り血を浴びていく様がますます緊張感を高めてくれた。そんなオーレン石井のキャラクターにタランティーノが参考にしたのが、梶芽衣子の「修羅雪姫」。小池一夫原作の劇画の映画化で、監督は藤田敏八。母親から託された復讐を果たすべく、ヒロイン鹿島雪が宿敵を追い戦いを挑む壮絶な物語だ。

 時は明治初期。獄中で生まれ”修羅の子”として育ったヒロイン雪は、剣術の手ほどきを受け、立派な刺客として成長する(このあたりもどこかパイ・メイとの修行シーンを思わせる)。復讐リストに従って一人、また一人・・・と復讐を遂げていく様はまさに「キル・ビル」同様の展開。この復讐劇の元となった事件とその時代を描くのに、藤田敏八監督は劇画の引用を用いた。これ自体もアニメパートを挿入した「キル・ビル」にも通ずるところ。随所に「キル・ビル」テイストが感じられる。オーレン石井の生い立ちを描いたアニメパートが登場するが、「修羅雪姫」はこの場面に大きな影響を与えている。幼い頃に両親を殺された少女が、中学生となり仇のやくざをベッドで追いつめる場面。「あたしの顔、誰かに似ちゃぁいないかい?」と凄むところはオリジナルを彷彿とさせる。さらに主題歌である 修羅の花 が日本庭園の場面に引用されている。よっぽど、好きなんだろうね、タランティーノ監督。

 単なるチャンバラやアクションがある復讐劇としてだけでなく、この映画には人としての悲しみや逆らえない宿命の重さがひしひしと画面からにじみ出る。製作時期は「女囚さそり」シリーズの後だけに、70年代の反体制的なムードはやはりこの映画でも健在。政府が欲望と権力をむさぼり、弱者が切り捨てられる・・・そんな様を、映画の前半徴兵制で苦しめられる平民たちの姿として描く。そしてクライマックスの舞台は、不平等条約改正の為とは言いながら、欲望に身を任せる場でしかない鹿鳴館。「因果応報!」(この決め台詞好き!)と雪が切り捨てた宿敵が、血に染まった日本の国旗と共に落下していく様はどうしても印象に残ってしまう。さらに、この映画が深いのは、”復讐はさらなる復讐を呼ぶ”ことをきちんと語っている点だ。黒沢年男の台詞「また修羅の子が増えたか・・・」にはそんな悲しみがあるのだ。このあたり「vol.1」でヴィヴィカ・A・フォックスを殺した後で、娘ニッキーに「大人になって、私を許せなかったら・・・」とブライドが言う場面に通ずるところかな。それにしても、70年代の日本映画って本当に残酷描写の加減を知らん。血しぶき、手が飛ぶのは当たり前、首つり遺体を真っ二つ!なんて怨みの強さを観客の方にまで思い知らせる場面満載。これは「キル・ビル」を愛する者には超重要作。心して観よ。







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