Smoke will be with me!

cigar, cigarette, pipe tobacco等、タバコと私の濃密な時間

パイプに興味を持つまで~Part4

2005-05-16 | パイプに興味津々
 誕生日にシガーをプレゼントされた私はシガーカッターを買い、吸った。前に述べた通り我が家は禁煙。だから庭で吸った。煙は肺に入れず、自分の周りに漂わせる…旨い。煙は大量で重かった。そしてその煙は旨かった。吸った煙、口から鼻に抜ける煙、吐いた煙…それらが交じり合い、私は酔った。同じタバコではあるが、シガレットとは全く違う。じわじわと脳に効いてくる。私はたった一本でシガーの虜になった。
 
 ありとあらゆるシガーを試した。どのブランドが好きか、どのサイズが好きか…好みがわかれば買い求め、保管にも気を配った。歴史について調べ、製法について知り、どうしたら美味しく吸えるのかを模索した。シガーはタバコと真剣に向き合うことを私に強要した。きっと多くのシガースモーカーがそうであるように、私も底なし沼にどっぶり浸かっている。
 
 困ったことにシガーの味を覚えると、シガレットが不味いと感じるようになった。人工的な味がして旨いと思えないのだ。ここで気付いたのはシガレットに使われている化学添加物である。ニコチンとタールを軽くすればタバコの風味は失われる。しかしそれを補い、美味しいと感じるようにシガレットにはたくさんの添加物が使われているのだ。私の吸っていたカスタムライトは決して軽い部類のシガレットではないが添加物が使われていないということはない。この添加物に対し、私の味覚は拒否反応を示したのではないか?
 
 そんな時に知ったのがナチュラルアメリカンスピリットという無添加シガレットだ。ずいぶん前から発売されていたようだし、踊る大捜査線で織田裕二が吸って話題になったらしいが、カスタムライト一辺倒だった私はその時初めてそんなものがあることを知った。なるほど、これはイヤなところがない。人間の味覚とは意外と正確だ。メンソールを除き、ライト、レギュラー、オーガニックと当時発売されていた三種を試した結果、私にはオーガニックが一番だった。ニコチンとタールの含有量はレギュラーと同じだが、オーガニックはよりまろやかなのだ。長年の友だったカスタムライトからあっさり乗り換え、これを常喫シガレットにした。
 
 新しい発見をした私は、友人知人に会う度にこのシガレットの旨さを説いた。相手が喫煙者なら「吸ってみてよ、わかるから」と一本進呈した。ところが反応は良くなかった。キツイ、不味い、他のタバコと変わらない、など否定する意見が圧倒的に多いのだ。なぜこの旨さがわからないのだろう?私の感覚は間違っているのだろうか…とここで、私はある点が気になった。皆、どこで判断して不味いと言うのだろう?
 
 シガレットなら肺喫煙が一般的であり、私もそうやって吸っていた。シガレットを吸う時、煙は一旦口の中に溜められるが、その時間は極めて短く、瞬時に肺に送り込まれる。この瞬間に、スモーカーはキツイとか軽いとか判断する。シガレットの強弱を判断しているのは確かに肺だ。では"味"を感じているのはどこだろう?肺に入れられた煙は吐き出される。それは口からだったり鼻からだったりするわけだが、どう考えても味の判断はここでしかしていないはず。この、煙が通過する一瞬で、多くの人はシガレットを旨いとか不味いとか思うのだ。
 
 ならばシガーのようにゆったり吸ってみたらどうだろう。
ゆっくりと吸い込み、肺に入れず口に溜め、ゆっくりと吐き出す…煙に集中すると…旨いじゃないの!もちろんシガーほど強い香り、強い味わいではない。しかし肺喫煙では気付かない甘味はしっかりと感じられた。これが本当のシガレットの味なのだ。これに今ごろ気付くとは…旨いと思って他人に勧めていた自分が恥ずかしくなった。