コロコロゴム～僕はただ地面を見つめて…。

僕は出勤時にはMDウォークマンで音楽を聞いている。最近聞いているのは、めっきり洋楽で、ラプソディやパンテラのかなり濃厚なサウンドを聞いている。
さすがに店舗の中にまで聞きながらは入れないので、駅から降りて店舗に着くまでの間に外す。

僕が使っているイヤホンは一般的なものではなくて、耳の奥にフィットさせるタイプで、周りの騒音をしっかりカットしてくれるタイプのものだ。
なかなかのお気に入りなのだがいくつか難点がある。
ひとつは、重低音が弱いところ。せっかく周りの音をカットしているのに、ズシンとこないのは非常に残念だ。
もうひとつは、耳のサイズによって付け替えるゴムが先端に付いているのだが、それが取れやすいということ。カバンの中に入れて持ち歩いたり、ちょっとひっかけたりすると、ポロッと取れてしまい、探すのに大変苦労する。

結論からいうと、今日、そのゴムが無くなってしまったのである。

今日は何の変哲もない一日のはずだった。天気は曇りで、最近では珍しく寒かった。憂鬱な空を吹き飛ばすような気分でラプソディのMDをセットし、ガンガンに聞きながらゆとりをもった出勤をした。駅を降りて店舗までは1分もない。そのたった1分の間にヤツは姿を消した。更衣室に入った時には既に右のイヤホンゴムが付いていなかった。
小さくて丸い黒いゴムは、駅から店舗までの短い道程でひとりコロコロと転がって行ったらしい。帰りに地面を見ながら駅に向かったが、もちろん行方はつかめなかった。

この時、地面を探していたのか、ただ無くなったことに落胆していたのか、自分でもわからない…。