taimuのひとり言

毎日の生活の中で感じた事を 徒然なるままに・・・。

「悪人」 吉田修一 読書日記

2009-01-25 19:21:50 | 読書

 
 「悪人」吉田修一著
 
 保険外交員の女が殺害された。
 捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。
 加害者と被害者、それぞれの家族たち。
 群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?
 なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか。
   (「BOOK」データベースより)

  友人に借りた本。
  「悪人」という題名だけで 私は手に取らないと思う。

  ・・・でも 読み出したら一気に読んでしまいました。
  「悪人とはいったい誰なのか」
  もちろん 殺人を犯した清水裕一は どんな理由でも
  許されるわけはありません。
  それでも 殺人事件の被害者・石橋佳乃や
  被疑者として逃げ回る増尾圭吾など 登場人物の心理や背景が
  克明に描かれ 特に 殺人者清水裕一の生い立ち、生活環境など
  胸が締め付けられる思いで読みました。

  格差社会といいますが この小説の人々が皆孤独でやり切れません。
  読みながら 「どうしてそんなこと言うの
  「どうしてそんなことをするの
  「どうして
  子育てを終わりかけている年代の私は 
  この登場人物たちの言動にばかりなのです。

  出会い系サイトで いとも簡単に男女が知り合い、
  小遣い稼ぎで男と付き合う、目先の事だけで
  夢も未来もないような生活。

  中でも私の心に一番重くのしかかってきたのは
  被害者・石橋佳乃の両親の悲しみと慟哭です。
  最愛の娘を殺されたという悲しみ、の他に
  被害者でありながら 娘のお思いがけない行状に対する
  世間の好奇と批判に耐えなければならない、
  あまりに残酷だと思いました。

  最後に 清水裕一と逃避行を続ける女・馬込光代。
  逃避行は どちらかというと光代が主導権を握っていたようなのに
  光代に迷惑がかからぬように 裕一がとった手段に
  胸がいっぱいになりました。

  正直 読後感は重く暗いものでしたが
  なぜか 読んでよかったと思わせる一冊です。
  
  

  


最新の画像もっと見る

コメントを投稿