特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップ、野村悟容疑者(67)ら最高幹部を含む計15人が、看護師の女性を殺害しようとしたとして組織犯罪処 罰法違反(組織的殺人未遂)容疑で逮捕された。暴力団による襲撃事件は指示系統の立証が難しく、首謀者とみられる最高幹部までが一斉に逮捕されるのは異例 だ。捜査関係者によると決め手となったのは通信傍受だったという。
「ウルトラCを使って逮捕する」。約1年前、福岡県警幹部は周囲にこう語っていた。それは通信傍受法に基づく通話内容の傍受を指していた。
女性が襲われたのは2013年1月28日の夜。県警によると、福岡市博多区石城町の路上で、黒いニット帽の男に突然顔や尻を刃物で切られた。県警は当初、通り魔事件の可能性が高いとみており、暴力団の関与は視野に入れていなかった。
しかし、捜査関係者によると、女性の周辺の捜査を進める中で、勤務先のクリニックで治療を巡り野村容疑者とトラブルになっていたことが分かった。更に襲 撃事件の前、通信傍受法に基づき別事件で傍受していた組関係者の通話内容に、野村容疑者が襲撃を指示したことをうかがわせる内容があることをつかんだとい う。
00年8月に施行された通信傍受法は4種(薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人)の組織犯罪に限って裁判所に令状を請求した上で電話やメールを傍受できる。
ただ、法務省によると、通信傍受により昨年末までに逮捕された415人のうち、組織的殺人(未遂を含む)容疑での逮捕は05年の1人にとどまる。傍受に は通信事業者の立ち会いが求められ、犯罪に関係のない会話は打ち切られるなど、実施要件が厳しいことが背景にあるとみられる。
だが、今回の事件では、事件後に県警が改めて組織的殺人未遂の容疑で令状を取り、野村容疑者が使用する携帯電話の傍受を続けた。現場周辺の防犯カメラを 解析するなどの基礎捜査も進め、配車役や下見役などの役割分担も解明し、最高幹部の指示による組織的関与を示す証拠を固めたという。
捜査関係者は「通信傍受は手続き的に利用が難しいが、今回は工藤会壊滅のために粘り強く捜査を続けたことで逮捕にこぎ着けられた」と話した。
◇「組織壊滅へ全国警察が総力」
「工藤会トップの個人的感情から暴力団と関係のない無防備な女性が狙われた。卑劣な組織実態をあらわにする象徴的事件だ」。特別捜査本部が置かれている 福岡県警小倉北署で1日、樋口真人・県警本部長が記者会見で憤りを込めた。「女性は一命は取り留めたが重い障害を負った。悪質極まりない」と指弾した。
捜査関係者によると、野村容疑者は通院していた北九州市小倉北区のクリニックに勤めている看護師の女性とトラブルになり、組員らに指示して殺害しようと した疑いが持たれている。樋口本部長は「今回の一斉逮捕で工藤会の組織基盤に大きな打撃を与えたと考えるが、壊滅に向け全国警察が総力を挙げて取り組む」 と決意を込めた。
その上で、9月に野村容疑者を殺人容疑で逮捕した際と同様に、組離脱などを呼び掛けるメッセージを送った。「組織にいつまでもすがり、幹部に翻弄(ほんろう)され人生を棒に振ることはありません。県警、暴追センターに相談してほしいと思います。待っています」
一般女性を狙った事件に市民からは驚きの声が上がった。女性が切りつけられた福岡市博多区石城町の現場近くで働く60代の男性は「住民は安心すると思うが、暴力団による事件だったとは思わなかった」と話した。
北九州市内の会社で働く50代の男性は「一般人が狙われた事件の全容解明ができれば、市民の安心にもつながる」とホッとした表情を見せた。一方、60代 の女性は「(工藤会側の報復など)どんな2次被害があるか分からないので、警察は逮捕だけで安心しないでほしい」と訴えた。
【ことば】通信傍受法
増え続ける組織犯罪に対抗するため、他の捜査方法では容疑者の特定ができない場合などに限定して裁判所の令状に基づき適用される。傍受中に他の犯罪に関 する内容の通信があれば、続けて傍受することもできる。傍受後、対象者には日時や容疑を通知する義務があるが、捜査に支障があれば延期できる。今年の法制 審議会特別部会で、組織性が疑われる詐欺や窃盗、強盗などに対象が拡大される見通しとなったが、プライバシー保護のため適正運用の重要性も指摘された。
もうとことんまでやるしかない。引いたら間違いなく警察にダメージ、ましてや警察自体がヤクザに舐められて
秩序が崩壊するのは目に見えている。やらなければやられる世界。反社会性力等今の世の中掃いて捨てるほどいる。
工藤会がなくなっても山口組を始めとした反社会性力。オウム、創価学会の特定機密宗教組織、朝鮮総会、総連、いくら
でもいるのだから。