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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

洋種山牛蒡の家

2013-10-15 23:21:52 | 動物・植物
「ヨウシュヤマゴボウ」ってご存知ですか。
秋田市内の駐車場に茂るヨウシュヤマゴボウ。自重で倒れ気味
ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草。根が山菜の「山ごぼう」のようで、アメリカ原産の帰化植物(明治に渡来)なので「洋種山牛蒡」という意味。
「アメリカヤマゴボウ」とも呼ばれるようだが、セイヨウタンポポなどのように「セイヨウヤマゴボウ」ではないのがおもしろい。

人の背丈ほどまで大きくなるが、「木」ではなく「草」なので冬は地上部は全部枯れる(多年草だから翌年に同じ場所にまた生える)。
植物全体が有毒。食べた場合のみならず、「皮膚に対しても刺激作用がある」そうなので、むやみに折って汁を触ったりしないほうがいいのかもしれない。(参考:厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_det_21.html)なお、鳥は果実を食べるようだし、葉を食べる虫がいるようで、すっかり食べられて葉脈だけになった株を見かけた。
※食用にされる「山ごぼう」は、野菜のゴボウもしくはアザミの仲間の「モリアザミ」だそうで、いずれもキク科。ヨウシュヤマゴボウとはまったく別種。
※「山ぶどう」やブルーベリーともまったく違う別物。繰り返しますが有毒なのでご注意を!

ヨウシュヤマゴボウは夏以降に白い花が咲き、それが緑色の果実になり、熟すと黒に近い紫色になる。
果実はブドウっぽい形状
果実や茎の赤紫色の色素は、多くの植物で一般的なアントシアニンではなく、限られた植物しか持たない「ベタシアニン」という色素(色素構造の中に窒素原子を持つのがアントシアニンとの違い)。


僕がヨウシュヤマゴボウの存在を知ったのは、小学校2年生(たぶん)の理科の授業。「秋の植物のようす」みたいな単元だったはず。※当時は生活科がなく、小学校1年生から理科と社会があった。
当時の秋田市立学校が採択していた理科の教科書・大日本図書「たのしい理科」では、写真ではなく絵で「ようしゅやまごぼう」と紹介されていたはず。
授業では、教科書の絵を見ただけだったかもしれないし、クラスの誰かが実物を取って持ってきたような気もするし、先生から「この実は食べてはいけません」と注意があったような気がしなくもないような…
授業の記憶はほとんどないけれど、「ヨウシュヤマゴボウ」という名前ははっきりと印象づけられ、その響きは何か独特な誘惑を感じさせられた。
「洋種山牛蒡」という和名の由来は教わらなかったこともあり、「ヨウシュヤマゴボウ」の音だけが頭に入ってしまった。ワインの原料であるブドウのような果実の姿からの連想もあったのか「洋酒」だと思い、それに続いて突如「ゴボウ」が登場するのが、とても不思議に感じた。

そう感じたのは僕だけではなかったようで、その後、クラスでちょっとした「ヨウシュヤマゴボウブーム」が巻き起こった。
ある日「学校の中庭にヨウシュヤマゴボウの種が落ちている。それを拾って蒔けば、ヨウシュヤマゴボウが生えてくるよ!」と誰かが言い出し、僕を含むクラスの男女数人で、落ちている小さな黒い粒を一生懸命拾ったことがあった。
拾った種をその後どうしたかは記憶にない。さらに数年後に冷静に考えてみれば、ヨウシュヤマゴボウが生育する余地はない手入れされた中庭に、その種子がまとまって落ちているとは考えにくく、あれは別の植物の種子を拾っていたのではないかと思っていた。
ところが、今、改めてネットで調べてみると、ヨウシュヤマゴボウの種子は黒くて光沢のある直径数ミリほどの粒で、あの時拾ったものにそっくりである。ということは、あれはほんとうにヨウシュヤマゴボウの種子だったのだろうか。謎だ。
【2016年10月9日追記】鳥が落としていったフンに混ざっていた種だったのかもしれない。


小学校低学年の僕は、行動範囲は狭く植物への興味もさほどなく、その頃にヨウシュヤマゴボウの実物を見た記憶はない。その後、少し世界が広がると、秋田市中央部でもけっこうヨウシュヤマゴボウが生育していることを知った。(あるいは、人口減少や空き家の増加で人の手=草刈りが昔ほど入らなくなって、秋田市内でヨウシュヤマゴボウの勢力が広まったのかもしれない)
ついには、自宅の庭にも生えてきてしまった(まさか2年生の時に蒔いた種?)。
その頃にはヨウシュヤマゴボウブームは消え去り、改めて見れば、赤い茎、果実の形や色が毒々しくて少々気持ち悪い。自宅に生えてしまったのには、困惑した。

Wikipediaによれば、ヨウシュヤマゴボウにも花言葉があり、「野生、元気、内縁の妻」。内縁の妻はなんでだか分からんが、その他2つは、ヨウシュヤマゴボウの姿を見れば納得できる。(個人的には、花言葉って植物に対して勝手な価値観を押し付けるようであまり好きじゃないのですが)
空き地や駐車場の片隅はもちろん、アスファルトの隙間から生えたり、一度草刈りされたのに再度伸びて結実に至ったりと、帰化植物らしい「ど根性」ぶりを見せつけるから。
気持ち悪く感じる茎や花も、生け花に使われることがある。


さて、9月中旬に秋田市中央部を歩いていると、
ヨウシュヤマゴボウの枝?!
家の玄関らしい引き戸のすき間から、道路に向かってヨウシュヤマゴボウの枝(茎と葉)が出て、その先に花が咲いていた。
ということは、この家って? そしてヨウシュヤマゴボウの根元はどこに?
20年以上前にはちらほら見かけた「ドロボー立入禁止地区」の看板が残る
なんと、玄関の床(土間)からヨウシュヤマゴボウが生え、玄関先の空間に繁茂。そして、その先端の一部がたまたま、引き戸のすき間から外に出たのだった。
外で花を咲かせられたのは奇跡的
以前からのこの家の存在は知っていたが、こういう状況だということは空き家だったのか。ガラスが割れたりはしておらず、見た限りはちゃんとした家の体裁を保っているが、屋根などにすき間があって、そこから種が落ち、雨水が漏れ落ちて発芽・生長できたのだろう。光は、引き戸のすりガラス越しに日光が充分入る。
(玄関のすぐ外側のコンクリートのすき間からも小さなヨウシュヤマゴボウが生えていた。もしかしたらその株と中の株とで根がつながっているのかもしれない)
ガラスの向こうには…
すりガラス越しに見ると、屋内では外に生える株と同じくらいかそれ以上に元気に繁茂している。ある意味、外敵から隔離され、保温された温室状態だからね。
ただ、葉の一部が枯れているのは水が充分でなかったり、屋内で通気が悪いためだろうか。

ちょうど1年前に撮影されたGoogleのストリートビューを見てみると、
ひざ丈くらいか
昨年は外へ枝を出せなかったようだし、屋内側でも実を着けられなかったかもしれない。少なくとも2年越しで外へ出てきたことになる。

中でも実を付けているけれど…
9月下旬に再び通ると、外に出ていた枝がなくなっていた(中はそのまま)。近所の人が切ったのか、酔っぱらいがむしり取ったのか。
若干通行のジャマではあったけれど、やっとのことで外に出てきたヨウシュヤマゴボウを思うと無念。
ヨウシュヤマゴボウのしたたかさを見せつけられた、「ヨウシュヤマゴボウの家」だった。

ちなみに、この場所は、危険な空き家の近く。その家は、いつ倒壊しても不思議でない状況のまま、今も変わらない。
ヨウシュヤマゴボウの家も、このまま何年も放置されれば、同じ姿になってしまうかもしれない。
※翌2014年は、家自体の状態は変化なし。しかし、8月時点において、ヨウシュヤマゴボウはまったく生えていない(ガラス越しに内部にも確認できない)。何らかの処置がされたのか。
※さらに2015年は、2013年ほど盛大ではないものの、家の中で繁茂している。2年ぶりに復活した。この記事末尾参照。
※そして2016~2017年冬にはこうなってしまった(リンク先中ほど)。


ところで、この植物がわざわざ「“ヨウシュ”ヤマゴボウ」という名前になったからには、「ヨウシュじゃないヤマゴボウ」もあるのです。後日別記事にて。
※別のヨウシュヤマゴボウの姿はこの記事後半
【2017年4月24日追記】さらに別のヤマゴボウも知った。「オンブー」または「メキシコヤマゴボウ」と呼ばれるもので、木のように巨大になる草。日本でも栽培する植物園があるとのこと。
コメント (2)
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