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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

試験会場行きスクールバス

2012-06-24 23:35:38 | 秋田のいろいろ
日曜の朝8時過ぎ。秋田駅西口バス乗り場5番線に、ちょっとした人だかりができていた。
山王・八橋方面で何かのイベントが開催されると、バスで向かおうとする参加者で人だかりができることもあるが、乗り場が違う。
5番線から出るバスは、牛島方面の一部路線と築地経由の小型バス路線。

結局、待っていた皆さんは、8時15分発の築地経由ノースアジア大学行きに、ぎゅうぎゅう詰めになって乗り込んでいった。
中型・大型バスだったら余裕で収まる人数だったが、いかんせんこの路線は小型バスだからね…


今日は、ノースアジア大学(2007年に秋田経済法科大学から改称)を会場に、秋田県職員採用試験が行われたので、その受験者だったとみられる。
ノースアジア大学は、秋田駅の真東2.5キロほどの下北手地区にある。ちょうど秋田駅から西に進んで秋田県庁付近までの距離と同じくらい。
秋田駅からノースアジア大学までの公共交通機関は、バス。以下のように乗り場や経由地が複数ある。(路線名や運賃などは、バス会社公式サイトより)
※目的地や路線によって、降車バス停が異なります。路線・ダイヤの改廃もあり得るので、ご利用の際は、公式な情報で各自確認願います。

西口13番乗り場発・321系統「手形経由ノースアジア大学線」所要16分、運賃290円
これだけが秋田中央交通オリジナル(交通局からの移管路線でない)路線。
秋田駅の北側、脳研前、手形陸橋、谷内佐渡を経由する。
昔は大型バスも走っていたはずだが、今は中型バス限定だろうか。

西口5番乗り場発・431系統「西口発ノースアジア大学線」所要20分、運賃280円
これが8時15分のぎゅうぎゅう詰め便。かつては秋田市交通局が運行していて中央交通に移管された。
321系統も西口発なのに「西口発ノースアジア大学線」という分かりづらい名称。「築地経由」と呼ぶのが普通。
こちらは駅の南側を回るもので、南通築地の秋田南中を過ぎて左折、太平川沿いに横森や桜の狭い住宅地を抜けて、大学へ至る。
南中~横森付近の道の狭さのため、小型バスが限定して使われているものと考えられる。(そのため、実際には車両に系統番号は表示されない)道がクネクネして遠回りそうに思えるが、運賃は手形経由より10円安い。

東口1番乗り場発・430系統「東口発ノースアジア大学線」所要18分、運賃250円
系統番号表示開始直後の撮影(現在は表示が異なっているかもしれません)
これも旧市営バス路線。上記、築地経由を線路を渡らずに東口発着としたもの(明田郵便局前、横森橋経由)で「明田(みょうでん)経由」と呼ばれる。南中~横森の道がもっとも狭い部分は避けられるためか、中型バスで運行される。
再掲)とはいっても、ギリギリ。これで対面通行です
こちらのように、市営バス当時は「経法大附高」行き、移管後系統番号表示前は「明桜高等学校」行きと表示されていたが、実際の終点は「ノースアジア大学回転地」で変わっていない。
なお、桜ガ丘線も途中まで同じ経路を通り、同様に西口発着築地経由と東口発着明田経由がある。

東口3番乗り場発・スクールバス 所要約5分、無料
大学を運営する学校法人が、秋田駅東口と大学の間で無料バスを運行している。「シャトルバス」と呼ぶこともあるようだが、ここでは公式サイトに従ってスクールバスとする。
大学の隣接地にあって同法人が運営する、秋田栄養短期大学と明桜高等学校を含む3校共同のスクールバスという位置づけで、秋田中央交通に運行を委託している。時刻表は各学校のホームページに掲載されている。
運行経路は、東口を出てまっすぐ東へ進み、大学へ曲がるだけ。ダイヤとか車両については後で詳しく紹介します。

以上の各バスは、本数が多くない。そこで、こんな方法もありますよ。
東口から城東十字路付近まで他路線のバスに乗り、1キロほど歩く
碇入口(赤沼線)、広面宮田(日赤病院・御所野方面行き)でバスを降り、路地を抜けて太平川の歩行者用の橋を渡ると大学。
初めてだと分かりにくいし、雨の日は大変だけど、駅からずっと歩くよりは楽。バスの運行本数も少なくはない。


今日の県職員採用試験の受験者は、9時までに入室すればよかったようだ。
秋田県人事委員会作成「受験案内」の末尾には、「試験会場案内」の中で「交通」として、秋田駅からのバス時刻が掲載されている。
「受験案内」より
7時30分の手形経由、7時55分の東口発、8時15分の築地経由の3本。たしかに路線バスはこれしかない。
なお、今回と同様、ノースアジア大学を借りて県人事委が7月に行う、警察官採用試験の要項にも、同じ内容が掲載されている。

ところが、このほかに、スクールバスが7時30分、7時50分、8時00分、8時10分、8時40分に発車する。これに乗れば、早く・タダで会場に行かれる。
ここで疑問なのが、大学へ行くとはいえ、大学とは直接的に関係のない県主催の試験の受験者が、スクールバスを利用できるかということ。
学校法人のホームページには「無料スクールバス(教職員、学生、生徒向け)を運行しております。」とある。
ホームページより
「教職員、学生、生徒向け」なら、会場を借りた試験の受験者は利用できないのだろうか?
県の受験案内には、駐車場はない旨は記載されているが、スクールバスについては触れていない。

8時10分発のスクールバスを、駅自由通路の上から見てみた。
窓ガラスが着色された中型バス(三平バス)が使われていて、よく見えなかったが、座席に座っている人の姿は何人もあった。高校生ではなさそうだったし、大学が試験会場として使われるからにはノースアジア大の学生がこの時間に大学へ向かうことはないと思われるから、乗っていたのは県試験の受験者ではないかと思われる。

学校法人としては、スクールバスをカラで運行しても満員で運行しても、中央交通へ支払う委託料は同じだろう。
また、法人にとっては、試験会場を貸与するのも“商売”(会場使用料がもらえる)なわけだから、サービスの一環として、その受験者がスクールバスに乗っても文句はないだろう。
なお、2007年にノースアジア大学で開催されたある学会の要項には、学会参加者はこのバスを利用して会場へ来るように書かれていた。試験にせよ学会にせよ会場を貸りたのは同じだから、少なくとも当時は、「教職員、学生、生徒」でなくてもスクールバスを利用できたことになる。


となると、県の試験要項の書き方には問題がある。
スクールバスがあることと、その時刻も書くべきではないだろうか。
また、一般路線バスにしても路線ごとに運賃が異なること、築地経由は小型バスなので混雑が予想されることも記載すると親切。
例えば築地経由を利用しようとした一般乗客が乗り損ねたり降り損ねたりするかもしれないし、最悪の場合、受験者が積み残されて問題になってしまうかもしれないから、その対策として。


さらに、試験を終えた帰りの足については、要項には書かれていない。
多くの試験区分では、15時55分で試験が終わる。
直近のバス時刻を調べると、スクールバスが16時30分発、一般路線バスは2時間後の17時55分発の東口行きがただ1本。行きも同じことだが、昔の一般路線はもっと本数が多かったはず。昨秋の中央交通全体の大幅な減便に伴うものだろう。
行きは時刻を示しておきながら-すなわち「バスで来い」と言っておきながら-、これでどうやって帰れっていうのだろう。


今回の試験には845人が受験を申し込んだ。
当日来なかったり、東京会場での受験者を差し引いても、数百人がノースアジア大学へ来るはず。
主催者によるその会場案内は「駐車場はありません、行きのバスは案内が不十分、帰りのバスは知りません」。
要項に記載されていた行きの3本のバスを合わせた収容力は150人ほどしかない。受験者に対してあまりにも少ないし、上記の通り帰りはもっとひどい。
誰かに送迎してもらうか、タクシーに乗るか、てくてく歩いて行き来せよと言うつもりか。
あんまりじゃないだろうか。有料でいいから特発バスを出すとかするべきではないだろうか。

秋田県の採用試験は、長年に渡って毎年、旧経法大→ノースアジア大学で実施しているようだ。県職員採用試験を人里離れた(とあえて表現させてもらいます)会場で行う理由は何なんだろう?
経法大は1983年から2000年まで、学校法人の理事長を時の県知事が2代続けて兼務していたという、珍しい私立学校ではあるわけですが…

ちなみに、国家公務員試験や秋田市役所職員採用試験は、秋田駅から徒歩圏内でバスの本数も多い、秋田大学手形キャンパスで行うのが通例のようだ。(国家公務員試験は主催者も会場も国やそれに準ずる機関だから当然かもしれない。秋田市の試験は過去に経法大で実施した年もあったはず)

車社会秋田なら、社会人が受験する資格試験などなら、駐車場を受験者に開放した上で、ノースアジア大学のような人里離れた(とあえて表現させてもらいます)会場を使用するのも1つの手ではある。
車を持たない受験者が多かったり、駐車場を閉鎖する場合でも、昔のように路線バスの本数が多かった時代なら、人里離れた(とあえて表現させてもらいます)会場でやってもよかったかもしれない。
でも、今のノースアジア大学や交通機関では…
試験の主催者には、受験者の立場に立った会場設定と案内をしていただきたいものである。

【2014年10月21日追記】2014年頃には、県人事委員会の受験案内のホームページで、バス時刻や増発バスについての情報を都度掲載することになったようだ。
【2016年5月22日追記】2016年は会場が秋田大学に変わっていた。2015年はどうだったか知らないけれど、やっと妥当になった。警察官は引き続きノースアジア大学だが、試験終了時に有料の臨時バスを運行する予定(詳細は後日発表)とのこと。
【2019年5月12日追記】2019年は、県の試験は引き続き秋田大学手形キャンパス。警察官もいつの間にか秋大に変更されていた。ノースアジア大学にとっては痛手かもしれないが、受験者にとってはこれで当然。上記の問題が、やっと解決した。



さて、ここからはノースアジア大学のスクールバスそのものについて。【末尾にリンクがある続きの記事も参照
学校が主体となって、路線バス風のスクールバスを運行するのは、首都圏の大学などではよく行われているようだが、秋田ではここが唯一だと思う。
路線バスが少ない場所にある学校ではとても有効なアクセス手段になるし、通学の足代がかからない(または軽減される)ことは学生募集上のアドバンテージにもなる。JRで近隣市町村から通学する人の中には、秋田駅から大学まで自転車を使う人もいたかもしれないが、秋田駅の駐輪場は有料だし。
高校・短大・大学が同じ場所にあるノースアジア大学の場合、効率的な運行もできそうで、運行開始の話を聞いた時は、よく考えたなと思った。

スクールバスの運行開始は、経法大当時の2003年10月。
当時は市営バスも健在で、経法大へのアクセスのメインを担っていた。
最初に説明したような現在もある、西口発築地経由や東口発明田経由もあったのだが、その他に、明田地下道を潜る「西口発明田経由」、そして「東口発中央線経由」というのもあった。
東口発中央線経由というのは、今のスクールバスとまったく同じ経路。1998年頃に県道62号線が開通して新設された系統。当時は県道62号線は「中央線」と呼ばれていたようだ。

手元の市営バス時刻表を見てみた。
見にくいですが、1998年11月改正の時刻表。
左が東口発着、右が西口発着。昔はこんなに本数が多かった(現在は1日3~5往復程度)
1998年11月や1999年4月改正の時刻表では、東口発着経法大線のうち、学校がある日の朝の秋田駅発と夕方の大学発の大部分が中央線経由で運転されている。(上の時刻表で東口発着の「中央」とある便)
その後、2001年4月に中央線経由だけが中央交通へ移管(東営業所が移管されたのに伴う措置だと思われる)、2003年4月には残りの経法大方面全路線が移管された。

おそらく、スクールバスの運行開始後、中央線経由は途中バス停の多くが他路線と重複することもあり、廃止しても影響がないとして、廃止されたのだろう。


運行開始当初のスクールバスは、オレンジ色の専用の大型バス(どこかの中古の路線バス仕様)がおそらく3台、駅と大学の中間地点にあった中央交通の秋田東営業所に配置されて使われていた。上の学校法人のホームページの画像にあるバス。バス会社名のほかに学校法人や3校の名称が車体に書かれ、正面や側面には、秋田犬のキャラクターが描かれていた。
ダイヤは昼間でも1時間に1本くらいは運行されていたと記憶しているので、3台のバスは忙しかったことだろう。今朝の三平バスもそうだったけれど、朝などのラッシュ時は、中型一般路線バスが応援に入ることもある。

平成21(2009)年6月の「ノースアジア大学自己評価報告書・本編」には、スクールバスについて、「平日などでは1時間に1~15便運行している状況である。なお、特定の時間に運行される便には「女子学生・教職員専用」のバスも運行されている。」とある。

2008年秋頃には、オレンジ色のバスのうち2台が廃車になり、代替として中央交通の一般路線バス塗装の大型バスが2台導入された。
現在はオレンジ色1台と緑の専用車両2台をメインに、路線車両からの応援で、スクールバス運用をまかなっている。
今も1台だけ残る専用塗装のバスは純正ボディのいすゞキュービック
現在残る専用塗装車では、なぜか犬のキャラクターがいなくなっていて、ただのオレンジ色バス。

代替の2台は、法人名や校名は車体には書かれず、一般路線バスとまったく同一の緑の塗装。(学校名は行き先表示に表示されるようになった)※よく見ると、通常は白文字である側面後部のバス会社名表記が、黒い文字で書かれているのが珍しい。
代替された専用バスは、ナンバーが連番の富士重工ボディのいすゞ。例によって小田急の中古?
この2台は一般路線バスとしても走れそうだが、中ドアに「出入口」と表示されていたり、行き先表示がLED化されていなかったり、そもそも所属営業所では大型バスを路線バスにほとんど使わないといったことがあって、スクールバス専用車両になっているようだ。(ひょっとして運賃箱がないかな? だったら路線は無理だ)
ワイドな中ドアは出入り兼用(前ドアは出口専用)
2011年春の秋田東営業所の廃止・秋田営業所への統合に伴い、専用車両も大川反の車庫へ転属。山王大通り~秋田中央道路(地下トンネル)や明田地下道を通って、東口や学校まで回送している。

今回、久々にスクールバスの時刻表を見てみたが、大幅に減便されているのに驚いた。ダイヤは平日2パターン、高校試験期間、休日の4本立て。
上記の通り、以前は平日昼間でも1時間に1~15便あったというが、現在は0~4便。2台態勢で運行する便はあるが、教職員専用、女性専用などはなさそう。
例えば、平日は、駅発は7~8時台に7便ありその最後が8時40分発。その後は10時10分と12時30分だけ。午後は1本もない。
大学発は昼過ぎまで1本もなく、15時から19時台にかけて計8本あるだけ。

学校側が想定したほど利用者がおらず、経費節減のために減便したのだろうか。
これではせっかくの専用車両も手持ち無沙汰だ。中央交通さんにしてもアテが外れてしまったかもしれない。

利用実態を見ると、高校生はけっこう利用しているようだ。下校時刻には大型バスが満員で秋田駅に到着している。登下校時間が決まった高校生なら、朝夕限定のダイヤでも支障はない。
でも、大学生は時間割やゼミ・サークル等の都合、休講や自主休講する場合もあるだろうから、登下校の時間は各人や日によってさまざま。せめて各コマの開始と終了に合わせてバスがないと、使いモノにならないだろう。
考えてみれば、大学生は近隣のアパートに住んでいたり、無料バスがあるといっても自分で自転車に乗ったほうが、自由に行動できて気楽で便利かもしれない。
学校がもっと山奥にあるとか、もっと学生数が多いと別なんだろうけれど、想定したほどスクールバスの需要がなかったということだろうか。

※その後、2015年春に変化があった
コメント (4)
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