死んだはずの母が
夢のなかでは生きていて
何度も母の家を訪ねていたが
今朝の夢のなかで母は死んでしまった
哀しいわけでもなく
もうきっと母の夢は見ないのではないか?
と思う
かつて生きていた母の言葉は
わたしに聴こえて
わたしが記して
もう一度産まれ直して
わたしの言葉になった
この言葉の仕事は終わりは見えないが
母はやっと語り尽くしたのだろうか
かつて引揚げ船のなかで
母が必死で抱いていた
死にかかった幼子の私が
いつか迎えるであろう「死」について
無関心ではなくなった
鏡に写るわたしの顔が
だんだん母に似てきたようだ
毎朝会っているみたい
ずっとそばにいるのね。
お母さん。
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