一週間前の日曜日のフジテレビ「報道2001年」に安倍晋三、麻生太郎、桜井よし子の三氏が出演した。
これはその日の当稿「靖国参拝は踏み絵か」で取り上げた。
http://blog.goo.ne.jp/taezaki160925/e/e390e9611cb7d1d1da69e
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そこでは触れなかったが、安倍氏はその日もう一つ重要な発言をしていた。
新聞の誤報による「侵略・進出 教科書書き換え」についてである。
新聞の誤報が一人歩きして世論を惑わした例として、当日記でも4月5日「従軍慰安婦」を取り上げた。
http://blog.goo.ne.jp/taezaki160925/e/4828261024c6afd7937db097
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数ある「誤報」の中で、これも既に決着がついているはずの「侵略・進出 教科書書き換え」について安倍晋三官房長官はその日概ね次のような趣旨の発言をした。
「検定によって華北への『侵略』が『進出』に書き換えられたと報道され、中韓両国から抗議を受けた。当時の官房長官談話で謝罪したが、そのような書き換えの事実はなく、結果として、大変な誤りを犯した」という趣旨だ。
これは朝日を筆頭に日本の全マスコミが一斉に誤報した事件である。
その後これが世紀の大誤報ということが判明した。
≪参照:『国際派日本人養成講座(44)・虚に吼えたマスコミ』≫
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h10_2/jog044.html
しかし、誤報と判っても産経以外のマスコミは今もってきちんと訂正していない。
また、当時の官房長官は宮沢喜一氏で、この宮沢談話に基づく「近隣諸国条項」が検定基準に加えられ、中韓両国に過度に配慮した記述が増える一因になった。
安倍氏が指摘した教科書書き換え問題は、政府やマスコミがこれからの近隣外交を考えるうえで、多くの反省点を含んでいる。
そもそも、宮沢談話は誤報に基づいて発表されたもので、見直しは当然だ。
安倍氏は忘れ去られがちなこの問題を改めて提起したのだ。
ところが性懲りも無くと云おうか、案の定と云おうか、その二日後の4月4日、朝日が「侵略と進出 事実を踏まえ論じよう」と題してこれに反論の社説を書いた。http://www.asahi.com/paper/editorial20060404.html(念の為文末に貼り付け★1)
これも予想通りというか、翌日の5日産経が社説ですかさずこれに「論点すり替えはやめよう」と題して反撃を加えた。
http://www.sankei.co.jp/news/060405/morning/editoria.htm
(文末添付★2)
安倍氏はこの朝日の社説についても「朝日新聞は社説で教科書報道について『ずさんな取材だった』と書いている。それならば誤報と同じスペースでしっかり報道すべきではないか。報道機関として素直に反省していただきたい。問題をすり替えて批判するのは間違っている」と強く批判した。
朝日は8日現在、5日の産経と安倍氏のきつい反論に答えていない。
朝日お得意の無言の敵前逃亡か。
誤報が一人歩きした例、・・「従軍慰安婦」、「侵略→進出 書き換え問題」そして、他にもまだまだ沢山ある。
最近の朝日の悪あがきは目に余る。
愈々末期症状の到来か。
◇ ◇ ◇
★1:朝日新聞 B社説】2006年04月04日(火曜日)付
社説 http://www.asahi.com/paper/editorial20060404.html
侵略と進出 事実を踏まえ論じよう
中国との外交などをテーマにした日曜日のテレビ番組で、安倍官房長官が82年の「教科書書き換え問題」について発言した。次のような趣旨である。
教科書検定によって「侵略」を「進出」に改めたと報じられ、中国や韓国から抗議された。日本は官房長官談話で事実上それを認め、謝罪した。しかし、「進出」と書き換えられた事実はなかった。ちゃんと調べて説明すればよかった。結果として大変な誤りを犯してしまった――。
政府のスポークスマンの発言である。検定で「侵略」という言葉を書き換えさせたことはまったくなかったと受けとめた人が多いのではないか。
また当時の政府は事実を調べもしないまま、官房長官談話を出して中国などに謝った。そう思った人もいるだろう。
しかし、いずれも事実とは異なる。
教科書の書き換えが問題になったのは24年前だ。若い人は知らないし、記憶が薄れた人も多いだろう。そんな中で、事実の一部だけを取り上げ、当時の政府判断を誤りと決めつけるような発言がそのまま独り歩きしては困る。これを機に、事実のおさらいをしておきたい。
82年6月、高校の教科書について検定結果が報道された。朝日新聞を含め多くの新聞や放送が、「華北を侵略」という記述が検定によって「華北に進出」に変えられたなどと伝えた。
ところが、その後、「華北に進出」という表現は検定前から書かれていたことがわかった。その限りでは、安倍氏の指摘した事実はある。当時のずさんな取材を率直に反省したい。
では、「侵略」という言葉がすんなり検定を通るような状況だったかといえば、そうではない。中国との関係に限っても「侵略」の言葉を削られたり、「侵入」に変えさせられたりする変更が計4カ所あった。東南アジアについては「侵略」を「進出」に変えた例もあった。
それ以前の検定では、中国との関係で「侵略」を「進出」に書き換えさせられたこともあった。
82年の検定では、韓国も独立運動などの記述をめぐって訂正を求めた。
文部省幹部らが中国へ派遣され、自民党の三塚博、森喜朗両氏は韓国を訪れて説明した。この後、宮沢喜一官房長官が検定のあり方を改める談話を出した。
「華北に進出」と書き換えられた事実はなかったが、ほかの例や過去の検定を見れば、同じような問題がある。そう判断したからこそ、政府は官房長官談話を出したのだろう。
これを受けて、検定基準に「近隣諸国条項」が加えられた。アジア諸国との歴史的な関係に配慮するというものだ。
歴史への反省を踏まえた当時の官房長官談話を否定するかのような、現在の官房長官の発言は、政府の姿勢に疑念を抱かせかねない。テレビでの発言が意を尽くしていないのならば、改めて言葉を補った方がよくはないか。
*
★2:産経新聞社説:http://www.sankei.co.jp/news/060405/morning/editoria.htm
平成18(2006)年4月5日[水]
【主張】安倍発言批判 論点すり替えはやめよう
安倍晋三官房長官は二日の民放テレビ番組で、対中外交に関連し、二十四年前の教科書検定問題に言及した。この発言を一部マスコミが問題視している。
安倍氏の発言は「検定によって華北への『侵略』が『進出』に書き換えられたと報道され、中韓両国から抗議を受けた。当時の官房長官談話で謝罪したが、そのような書き換えの事実はなく、結果として、大変な誤りを犯した」という趣旨だ。
あえて補足すれば、これは日本の全マスコミが一斉に誤報した事件で、産経以外のマスコミは今もって、きちんと訂正していない。また、当時の官房長官は宮沢喜一氏で、この宮沢談話に基づく「近隣諸国条項」が検定基準に加えられ、中韓両国に過度に配慮した記述が増える一因になっている。
安倍氏が指摘した教科書書き換え問題は、政府やマスコミがこれからの近隣外交を考えるうえで、多くの反省点を含んでいる。そもそも、宮沢談話は誤報に基づいて発表されたもので、見直しは当然だ。この問題を改めて提起した安倍氏の発言を評価したい。
これに対し、朝日新聞は四日付社説「事実を踏まえ論じよう」で、安倍氏の発言を取り上げ、「当時のずさんな取材を率直に反省したい」としつつ、一方で「事実の一部だけを取り上げ、当時の政府判断を誤りと決めつけるような発言がそのまま独り歩きしては困る」と安倍氏を批判した。
朝日はその理由として、「東南アジアについては『侵略』を『進出』に変えた例もあった」「それ以前の検定では、中国との関係で『侵略』を『進出』に書き換えさせられた」などの事例を挙げ、「ほかの例や過去の検定を見れば、同じような問題がある」「現在の官房長官の発言は、政府の姿勢に疑念を抱かせかねない」とした。
しかし、これでは、せっかくの朝日の反省を帳消しにしてしまいかねないほどの論点のすり替えである。当時、問題にされたのは日本の中国への「侵略」が「進出」に書き換えられたとする報道であり、東南アジアについての記述やそれ以前の検定は、問題になっていない。
安倍氏も対中外交の問題として、この教科書誤報事件を取り上げた。朝日こそ事実を踏まえて論じるべきだ。