【産経抄】
北京・釣魚台の迎賓館に着いた田中角栄首相はアッと息をのんだ。部屋には、大好物だった木村屋のあんパンがあり、郷里の新潟のミソを使ったミソ汁が用意してあったからだ。同行の大平正芳外相にうなった。「すごい国に来た。交渉は命がけだ」。
▼昭和47年、日中国交回復交渉での有名な逸話である。田中元首相の政治姿勢を評価するものではない。しかし、あんパン一つから中国外交のしたたかさを読んだセンスは大したものだった。それでも、交渉は終始中国のペースに悩まされることになる。
▼それに比べ、今の日本の政治家などちょろいものだ。温家宝首相はそう感じたに違いない。あんパンならぬ「氷をとかす」の一言で「温ファン」が増えたらしい。国会での演説で歴史問題について「実際の行動で示すことを希望する」という挑戦的な発言にも無心で拍手を送っていた。
▼中国は今「大人(たいじん)」風を吹かすことで、日本に対し優位に立とうとしている。それなら、こちらも「大人」を装い、余裕を示すのも一つの対抗手段だろう。だが、温氏の演説を聞いた自民党指導者たちの反応からはとても、したたかさなど感じられなかった。
▼山崎拓元副総裁は「名前のとおり温かい論調」と聞いたそうだ。中川秀直幹事長によれば「対日重視の決意がひしひし伝わる歴史的な演説」だったという。二階俊博国対委員長にいたっては「ああいうことが一歩一歩氷をとかすのではないか」と手放しであった。
▼これでは「大人」どころか、隣のオジサンに声をかけられ無邪気に喜ぶ子供みたいだ。民主党の長島昭久氏のように「わが国はこのままでは絶対勝てない。オールジャパンで臨まなければ」と危機感を抱いた政治家が何人いたことだろう。
(2007/04/14 05:02)
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東海新報 世迷言 ☆★☆★2007年04月13日付 |
来日した中国の温家宝首相が昨日国会で演説したが、まるで全人代でのそれを思わせるに十分だった。演説の区切りごとに拍手また拍手。「中国の気に障るようなことはしてくれるな」と言われて「その通り」パチパチといった具合なのだ▼昨年十月の安倍首相訪中が「氷を砕く旅」だとしたら今回の同首相訪日は「氷を解かす旅」とのふれこみだったが、演説に歯の浮くような美辞麗句はなく、相変わらずの厳しい「歴史認識」要求が随所にちりばめられていた。なんども水に流されたはずの外交カードはどこまでも健在だ▼農業、精錬、文字、儒学、仏教など主要文化、技術の伝来は中国抜きに語れず、十数回にわたる遣唐使の派遣もその証拠。阿倍仲麻呂の留学もしかり。鑑真和上だって何度も危険を冒して上陸し、日本の衆生済度に努めたのである―といった歴史を温家宝首相から講義されるとは思わなかったが、それは事実であり、感謝の言葉もない▼終戦直後の在留邦人引き揚げや、残留孤児などに対する手厚い道義にも及んだこの演説には、「ここまでしてやったのに」というニュアンスが言外に感じられ、平身低頭するしかない。さらに「しかるに日本のやったことは」と追い討ちをかけられるとなおさらだが、これでは氷は解けない▼日中間に真の友好が生まれるには、新しいスタート台に立ち、本音で語り合う関係を構築しなければなるまい。そのためにも、本国に聴かせるのではなく、日本人相手の演説が必要だったのだ。
◇ 温首相の国会演説が、中国国内のテレビで生中継されたという。 当たり前の事だが、生放送となると編集なしにそのままストレートに中国国民に伝わる。 その国会演説で、中国に対する日本の政府開発援助(ODA)の評価した。 「中国の改革開放と近代化建設」に対する日本政府と国民の支持と支援を「中国人民はいつまでも忘れない」 と、謝意を表したのには驚いた。 対中ODAは、インフラ整備などで多大な役割を果たしてきた。 だが、中国国民には、ほとんど知らされていない。 今回の国会演説で初めて知った人も多いはず。 今回の温首相訪日の唯一の成果は、 中国首脳がテレビ生放送で、日本にОDAの感謝を表明し、それが中国にも放映されたことに尽きる。 これだけ長期に渡って援助をしてきたのだから感謝の言葉は遅すぎるとも思うのだが・・・ やれやれ、厄介なお隣さんだ。
こんな意見もあった。 (「主権回復を目指す会」の掲示板より) ヤジ一つすら飛ばせない国会議員の腑抜け振り 石井金一 2007/04/13 (金) 09:31 偽造の歴史認識を沈黙して拝聴する愚かさ!独裁国家にして世界最大の人権蹂躙国家、そして殺戮国家!史上最悪の国家が中華人民共和国だ。その頭目・温家宝を民主主義の殿堂に招く偽善と愚かさ。拍手でもって迎える精神侵略のおぞましさ!ことここに至ってバカさ加減も痛ましい。
新聞のミスリードにはひっからないように気をつけてはいても、所詮メディアを通じて入る情報。 ついひっかってしまった。 本稿で次のようにご丁寧にも赤→付で書いた記事は取り消し。 <今回の温首相訪日の唯一の成果は、 中国首脳がテレビ生放送で、日本にОDAの感謝を表明し、それが中国にも放映されたことに尽きる。> 温首相は実際の演説ではОDAの文言は使わずに次のように演説していた。 「中国の改革・開放と近代化建設は日本政府と国民から支持と支援をいただいた」 「中国人民はいつまでも忘れない」 日本人なら中国へのОDAについて知らない人は少ないだろうが、中国人民の殆どはODAの存在自体を知らない。 「・・・近代化建設へ・・支持と支援」と言った抽象的な表現では彼らには日本が中国へ対して経済的援助をしたことは伝わらなかっただろう。 やはり温首相はしたたかだった。 日本人には感謝を示しつつ(ODAへの感謝とみせかけ)中国人民へは「単なる支持と支援に感謝している」と真意を伝えていない。 |
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