![]() そして、沖縄戦を描いた著名人の著作が少なかった当時、大江健三郎の「沖縄ノート」は衝撃だった。
偶然本屋で出会った曽野綾子著「ある神話の背景」や「生贄の島」は更に衝撃的だった。
軍と行動をともにした新聞記者がその真相を克明に記録した沖縄戦記の古典的名著とされる「鉄の暴風」に対して、物語の創造が本業の作家が著した「ある神話の背景」。 ある種の予断を持ちながらも貪り読んだ。
だが予断は木っ端微塵に打ち砕かれた。
目からウロコが落ちるとはこのことかと思った。
≪当時私はまだ30代で若く体力があったことと、作家になって15年以上が経過していたので、いくらか自分で調査の費用を出せるという経済的余裕があったことが、この調査を可能にしました。」≫
このような曽野さんの実証的ドキュメンタリー記述に圧倒され、そして感動した。
現地調査の中で「鉄の暴風」が伝聞を元に書かれていたことが結果的に暴かれる事になった。
それから曽野さんの長い戦いが始まった。
≪私はただ足で歩いて一つ一つ疑念を調べ上げていっただけです。本土では赤松隊員に個別に会いました。≫
≪グループで会うと口裏を合わせるでしょうが、個別なら逆に当時の赤松氏を非難する発言が出やすいだろうと思ってそのようにしました。≫
≪渡嘉敷島にも何度も足を運び、島民の人たちに多数会いました。大江氏は全く実地の調査をしていないことは、その時知りました。≫
鉄実地調査もせず伝聞で書かれた「鉄の暴風」。
それを鵜呑みにした大江健三郎氏は「残忍な日本兵」と言う予断で赤松大尉を断罪し「沖縄ノート」を著した。
≪『沖縄県人の命を平然と犠牲にした鬼のような人物』は第一資料から発生した風評を固定し、憎悪を増幅させ、自分は平和主義者だが、世間にはこのような罪人がいる、という形で、断罪したのです。≫
≪当時、沖縄側の資料には裏付けがない、と書くだけで、私もまた沖縄にある二つの地方紙から激しいバッシングに会いました。≫ 沖縄戦史最大の謎に光を当てた名著「ある神話の背景」がタイトルを変えて復刻した! ◇
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沖縄戦集団自決の真相に迫った作家、曽野綾子さんの『ある神話の背景』が復刻され、二十二日、WAC文庫から『沖縄戦・渡嘉敷島 集団自決の真実』というタイトルで発売される。
『ある神話の背景』は曽野さんが昭和四十年代半ば、沖縄県渡嘉敷島の集団自決について現地で取材した結果をまとめたノンフィクション。
それまでは、沖縄タイムス社の沖縄戦記『鉄の暴風』などにより、集団自決は旧日本軍が命令したとされてきたが、曽野さんはこの“旧軍命令”説に初めて疑問を投げかけた。
『ある神話の背景』は四十八年、文芸春秋から単行本が出版され、その後、PHP研究所で文庫本化されたが、いずれも絶版となり、入手が難しくなっていた。
沖縄戦集団自決をめぐる“旧軍命令”説は現在も、大江健三郎氏の『沖縄ノート』(岩波新書)や歴史教科書などで独り歩きしている。
昨夏、同島守備隊長の遺族らが大江氏らを相手取り、名誉回復を求める訴訟を大阪地裁に起こしている。