木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

坊ちゃんが、さぼっていたので吃驚(びっくり)!

2008年04月15日 | 江戸の話
坊ちゃんが、さぼっていたので吃驚(びっくり)!

冒頭から、一体なんのことだろう。
何かを覚えるための語呂合わせ?
何かのパロディ?
いえいえ、これは、全部、江戸時代には口にされなかった言葉なのである。
江戸において、坊や、坊主、坊などの言葉は使われたが、坊ちゃんという言葉は使われなかったようである。坊様という語が坊ちゃんに当たる語として使われており、坊ちゃんそのものは、明治以降の語である。
サボるは、フランス語の労働争議での怠業を意味するsabotageから来ており、びっくりは、ドイツ語Wirklichに語源があるとされる。これらも、江戸の時代においては、まだ登場していない。
「だぶる」なども英語のdoubleからきており、同様である。
では、次は、どうだろうか。

非常口から出た、かまととなおてんばが、群集の中に消えた。

勘のいい方ならお分かりであろうが、これは、全て江戸時代には既に使われていた言葉である。
どれも、江戸時代においては、あまり似つかわしくないような語感であるが、非常口は、江戸時代には既に使われていた。
かまととも、幕末には使われていた言葉である。ただし、江戸では一般的でなく、上方言葉であった。蛇足ながら、意味は「誰でも知っているようなことをわざと知らないような振りをして、無邪気を装うこと」である。一定の年代であれば「ブリっ子」という言葉が懐かしく思いだされるかも知れない。
おてんばは、オランダ語に語源があるという説もあるが、詳細は不明である。しかし、近松門左衛門も使用しており、軽はずみな女性を指した。
群集は、江戸時代には「くんじゅ」と読まれたのであるが、意味は現代で使う意味と変わらない。
当然であるが、江戸時代では、意外な言葉が使われていたり、意外な言葉が使われていなかったりする。

松村明 「江戸ことば 東京ことば辞典」 講談社学術文庫