私はヤマメを釣るときのエサには、川虫を使うことが多いが、時々ミミズも使用する。ミミズは近くの山まで捕りに行く。市販されているものは細くて弱弱しいからだ。ヤマメの好みは、太くてニオイが強くて、水の中で暴れる奴なのだ。
さてこのミミズのことだが、もしかしたら人の「気」がわかるのではないかと思うことがある。それはミミズを釣針につけようと手に持つと、ひどく暴れるのである。山で捕まえる時のミミズは静かなもので、逃げられてしまうことはほとんどなく、同じように手でつかんでもあまり抵抗されない。しかし同じミミズが、これから針を刺そうとすると(刺す前に)、これ以上ない力で大暴れする。ミミズを持つ手の力を弱めてみてもそれほど変わらない。
牛は場に連れて行かれるときに涙を流すと聞いたことがある。ミミズも、人の「気」から、自分の運命を感知し、最後の抵抗をしているのではなかろうか。
そんなミミズに針を刺すときに、少しの罪悪感は感じている。感じなくなったら、釣りを辞めることはそんなに惜しいことではない。