読書日記

いろいろな本のレビュー

お伊勢参り 鎌田道隆 中公新書

2013-04-04 16:04:21 | Weblog
 副題は「江戸庶民の旅と信心」。江戸時代は人の移動にはうるさい時代だったが、伊勢参りは庶民の楽しみとして定着し、その旅は盛んだった。特に家出の行き先が伊勢神宮ということが多かったと本書の冒頭に述べられている。イスラム教徒がメッカに憧れるようなものか。日常的な伊勢神宮への信仰と参詣の盛行を背景にして突発的な集団参宮が、江戸時代にはたびたび起こっている。これをおかげ参りと呼んでいるが、大体60年に一度の頻度で起こっているという。著者によると、慶安3年(1650)の江戸の商人を中心にしたものは全員白装束に身を包み、伊勢を目指した。記録によれば、参詣者は江戸を中心としながらも「天下の人民悉く群参」とも書かれ、箱根の関所を一日に5, 6百人、あるいは8, 9百人、多いときには2千人も通過したと記されているとのこと。それから73年後の享保8年のは、京都の花街の遊女などが、派手な衣装に三色染めの吹き流し、笛や太鼓で囃しながら参詣したという。伊勢参宮に娯楽的・享楽的要素を持ち込んだ事例として注目されるとのこと。文政13年(1830)の四国阿波から始まったのは、参詣者が450万人以上だった。ディズニーランド・ディズニーシー並の集客力だ。またこの当時、東北地方など遠隔地から来る場合、一生に一度のこととて、ついでに京都・奈良・大坂を回って見聞し、その費用は一人700,800万円かかったらしい。まさに冥土の土産と称するにふさわしい。
 こういう歴史を持つ伊勢参詣であるから、一度参拝しなければと思いつつ今日まで来てしまった。そこで一念発起でH交通社の日帰りバスツアーに申し込んだ。チラシのタイトルは「伊勢神宮両参りと4大味覚会席を食す優雅なるひととき」値段は10990円。4大味覚とは、伊勢海老の造り、鮑踊り焼き(80g)、松阪牛しゃぶしゃぶ、うに釜めしだ。写真は非常においしそうに撮ってある。実際は話半分の通りであった。そんなに期待していなかったが、量が少ない。一人で参加していたのは私だけで、跡は家族や友達グル―プ。みんな一人で来るのはいやなのかなあ。気楽でいいと思うのだが。ホテルで食事の後、温泉に入って、待望の参拝。土曜日とあってマイカーで混雑している。駐車場は2時間待ちの表示が出ている。混雑が予測できているのに敢えて車で来るその根性が理解不可能だ。2時間も待つとは本当に我慢強い。私の乗った観光バスは45人で盛況だ。まず外宮へ。ここは天照大神の食事を司る神の豊受大神をお祭りしている。参道は人が多くて埃っぽい。正宮は今年20年に一度の「式年遷宮」で隣に新築中。鳥居をくぐるたびにおじぎをしている人が多い。そこまで改まらなくてもと思うが、人の勝手なのでまあどうぞという感じ。次に内宮へ。ここは外宮と比べものにならないくらい人が多い。集合時間と場所の連絡で、新米の添乗員(女性)の説明が不十分と判断したのか、運転手が明快に補足していた。近鉄バスの運転手だ。伊勢神宮は慣れているようだ。頼もしい限り。宇治橋を渡って正宮に向かう。ここも埃っぽい。マスクをしていて正解だった。マスクは花粉症対策でつけている。正宮に着いたが上りの階段が人また人の洪水で、参拝までかなりの時間がかかりそうだ。そこで参拝を断念して、おかげ横丁へ向かう。ここも混雑している。赤福で土産のもちを買う。以前賞味期限の切れたもちを売ってばれてしまい大きな痛手を被ったが、今は飛ぶように売れている。この通りに店が二軒ある。商売繁盛で結構なことだ。通りはみないろんなものを食べながら歩いている。私もソフトクリームと牛マンをいただいた。コロッケもと一瞬思ったが、やめた。食べ過ぎに注意だ。はじめての場所なので、なにごとにつけありがたいという気持ちが起こってくる。伊勢神宮のありがたさか。次はゆっくり一人で来ることにしよう。江戸時代あれだけの人間を引きよせたものは何か。今回は「おかげ横丁」の方に気を取られ過ぎた。反省。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。