読書日記

いろいろな本のレビュー

謎の独立国家ソマリランド 高野秀行 本の雑誌社

2014-04-13 20:32:41 | Weblog
 ソマリランドとは海賊で有名なソマリアの北部にあって、独自に武装解除し十数年も平和に暮らしている独立国であるらしい。本書はその奇跡とも言える事実を検証するルポである。メディアによればソマリアは崩壊国家で、しかも海賊が跋扈する危険な国であるというネガティブな報道ばかりが流布されて、誰もが行くのを躊躇するような国である。そこへ危険を承知で飛び込んで、ソマリアの現実を読者に知らしめた貴重な一冊である。ソマリアの名誉回復もこれで部分的にではあるが、成されたといえる。
 著者によれば、かつての「ソマリア」は氏族ごとに団結と分裂を繰り返し、現在は多数の武装勢力や自称国家、自称政府が群雄割拠しているが、大まかには海賊国家プントランドと戦国南部ソマリアと理想郷ソマリランドの三つに分かれる。話題のソマリランドはかつて氏族ごとに争いを繰り返していたが、氏族の長老が話し合って武装放棄して、殺し合いを止めようということになったらしい。それは一朝一夕には実現しなかったが、粘り強く話し合われた。その結果、平和的なユートピアが実現した。武装蜂起が平和の前提条件だということが証明されたわけである。どこかの首相が平和憲法をかなぐり捨てて再軍備を企てているのと多きな違いである。ソマリランドを見習ったらどうか。氏族を室町時代の守護大名のように説明しているのが面白い。
 本書を読むと「所変われば品変わる」という言葉が実感できる。この国では「贈与」が重要な意味を持っていることがわかる。

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