読書日記

いろいろな本のレビュー

バッタを倒しにアフリカへ 前野ウルド浩太郎 光文社新書

2018-08-15 09:07:19 | Weblog
 名前の間に挟まっている「ウルド(Ould)」とは、モーリタニアで最高に敬意を払われるミドルネームで、「00の子孫」という意味らしい。モーリタニアの研究所長ババ氏から授かったのだという。本書はバッタの研究者である著者が、アフリカでバッタの大量発生によって農作物が食い荒らされ深刻な飢饉を起こしている現状を解決するため、モーリタニアに渡ってサバクトビバッタの生態を探るという一種の旅行記である。ただの観光旅行ではないところにこの本の存在意義がある。
 一読して今まで知らなかったことがいろいろわかってきた。まず、モーリタニアとはアフリカ西海岸のセネガル北部にある国で、正式名をモーリタニア・イスラム共和国と言い、イスラム教国家である。またバッタとイナゴの違いだが、イナゴはバッタ科の一種でバッタの中に含まれるということ。またバッタの幼虫は仲間が少なく密集していない場合は「孤独相」と呼ばれる単独行動を行なう普通の成虫に成長する。一方、密集し過ぎてしまうと集団行動を行なう「群生相」と呼ばれるタイプに成長する。これを「相変異」と呼ぶ。群生相のバッタは孤独相に比べて後ろ足が短く、翅が長くなる傾向にあり、高い飛翔力を得るのだ。なるほど、この「群生相」があちこち飛び回って植物を食い荒らすわけだ。
 このバッタの実地調査でモーリタニアに渡った著者の現地での奮闘と交遊をユーモラスに書いており、読んでいて退屈しない。そして本書の通奏低音になっているのが、ポスドク(博士研究者)の問題である。ポスドクは博士課程修了後、常勤の研究者に就く前に任期付きの契約で研究を続ける者の事で、博士号(理系)を持っていてもなかなか常勤の就職先が見つからないという日本の状況を著者自身の体験を踏まえて問題提起している。幸い著者は人類に貢献しそうな研究内容が認められて、京大白眉センター特定助教から国立研究開発法人・国際農林水産業研究センター研究員の地位を勝ち取ったことはご同慶の至りだが、並みの苦労ではなかったことが本書を読むとわかる。京大白眉センターの面接に文字通り眉毛を白くして行った下りは、一瞬ホンマかいなと思ったが、こういうシャレ心があるから苦しい下積みの状況を打破出来たのだろう。まあ一種の成功譚として読めないこともないが、嫌味がないのは著者の人徳に依るのだろう。
 結局、サバクトビバッタの大群との遭遇はなかなか実現せず、最後に一回あっただけで、研究はこれからという状況だ。今後の成果を期待しよう。
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