読書日記

いろいろな本のレビュー

大東建託の内幕 三宅勝久 同時代社

2018-12-03 10:31:08 | Weblog
 世の中には持つ者と持たざる者がいる。お金に土地に車に有価証券にと多岐にわたるが、多くの土地を持つ者は、その有効利用に腐心する。将来自分が亡くなったとき、遺産相続はどうするか、税金対策はどうするか等々、悩ましい問題が控えている。持つ者の宿命である。「児孫に美田を残さず」は西郷隆盛の言葉だが、世の中西郷みたいに恬淡な人ばかりではない。どちらかというと強欲な人間の方が多い。ここに賃貸アパート・マンションを経営して、土地の有効利用・節税をしませんかという商売が成り立つ素地が生まれる。これ自体は不法でも何でもないので、大手の商社や中小の工務店などが参画して凌ぎを削っている。その中で大東建託はその強引なセールス手法で販売を伸ばし、全国のあちこちで、この会社が建てた賃貸マンション・アパートを見かける。マンションだと建設費用が何億とかかるので、その費用返済に最初の20年ぐらいかかり、急に家賃収入で儲かるという話ではない。ただ借金をして建てたということで、節税になるのだろう。長いスパンで考えないといけない問題だ。それを顧客の無知に付け込んで、強引なセールスを展開し、問題を起こしていると著者は指摘する。
 本書は三部構成で、第一部は「使い捨てられる社員たち」の表題で、ブラック企業特有の長時間労働、欠陥建築の尻拭い等で、社員が過労死寸前まで追い込まれている状況をレポートしている。第二部は「家主の夢と現実」で、社員が顧客にうまい話を持ちかけて無理やり、アパート・マンションを建てさせる手法を紹介している。田舎の土地持ちは法令に通じていないのをよいことに、つけ込むわけだ。社員は悪意の第三者として描かれている。第三部は「自壊への道」と題して、労組結成で対抗「二年間契約取れなければクビ」の異常、取材に応じたら懲戒処分された、八千代支店と赤羽支店で自死が相次いで発生、松本支店殺人未遂事件、「優秀な」営業マンはなぜ破滅したのか、について書かれている。そして本書の出版に際しては、会社に不利益をもたらす社員の発言を正当な事実確認を行なわず一方的に掲載しており、訴訟に持ち込むという会社側の弁護士からのいやがらせがあったことも書かれている。
 この会社の手法はいわば、オレオレ詐欺の延長線にあるようなもので、営業社員も契約をたくさん取った場合、月1000万にもなったと言っている。どう考えても堅気の仕事ではない。逆にうまくやれば、仕事は苦しいが儲かるということで入社してくる者が多くいるのではないか。儲けたらそれでいいというエゴイズム。これでは会社はささくれだって人間味が無くなるのは当然である。最近労働者不足で、外国人労働者に頼らざるを得ない状況は、政府の出入国管理法改訂で明らかになった。経済界からの強い要請を政府は先延ばしできず、拙速にも今国会での成立を図っている。沢山の業種、それに携わる労働者、彼らは生きがいを持って働いているのだろうか。昔は「世のため人のため」というのが基本的な労働コンセプトだったが、今そんなことをいうと笑われる気がする。私が思うに、今は人間相手の仕事が増えすぎて、自然相手の仕事が少ないのが問題なのだ。人間もグローバル化とやらで世界中の人間を相手にしなくてはいけなくなった。世の中がストレスフルなのはこれが原因だ。人間嫌いが自然に入って生きていける仕事を育てる必要がある。学歴やコミュニケーション能力で勝負!こんなのはもういいよと言えるようにするのも必要だ。 
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