デミアン・チャゼル監督「ファースト・マン」を見る。
人類初の月面着陸を成し遂げた
アポロ11号のニール・アームストロング船長を描く。
宇宙飛行士の映画というと、
「ライトスタッフ」とか「アポロ13」とか。
最近では「ドリーム」もあったなあ。
多くは、宇宙へのロマンや
困難に立ち向かう勇気をうたい上げ、
観客を高揚させる映画である。
よく見るのが、飛行を見守る管制室のスタッフが、
一斉に拍手したり立ち上がってガッツポーズをしたりする場面。
それはそれで面白いし、感動もする。
本作でも同様のシーンはあるけれど、どこか控えめだ。
それよりは、ロケットに搭乗するまでの重圧や緊張感が充満していて
いざ宇宙に飛び立ったら、
ものすごい揺れと、恐怖をあおる音が飛び交う。
ぐおんぐおん、がんがん、ぐしゃぼきっ。
まさに死と隣り合わせであり、
狭くて暗くて怖いロケットの中で懸命に任務をこなし、
生きるか死ぬかギリギリのところで帰還をめざす。
宇宙飛行士になりたいと夢見ている子供が
こんな映画を見たら、
怖くなってあきらめてしまいそうだ。
ニール・アームストロング船長は、
まさに英雄中の英雄なのだけど、
演じるライアン・ゴスリングは終始無表情だ。
最愛の娘を脳腫瘍で亡くし、宇宙飛行士の仲間を事故で何人も失い、
葬儀のシーンが多いのも、
余計にニールのキャラクターに陰影を与える。
死とか苦しみとか恐怖に苛まれる
ギリギリのところで踏みとどまって、
なんとかミッションをやり遂げる。
そんな男の物語なんだなと思ったりする。
月面着陸に成功し、宇宙船のハッチを開けた瞬間、
音のない世界が広がる場面に息を呑む。
無音の迫力。お見事。そう、音の映画なのだ。
「ボヘミアンラプソディ」のような音楽映画はもちろん、「ダンケルク」の音もすごかった。「ファーストマン」のような地味な作品でも音の構成は見事で、まあ音楽映画大得意の監督だからということもあるが、音響の技巧が向上しているのだろう。
確かに音が凄かった気がする。
戦闘機が海岸を飛んでくるところとか。