旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

むつかしい本物の酒造り … 求められる“感性豊かな挑戦者” 

2010-10-21 10:25:29 | 

 

 今回の純米酒フェスティバルには、「常きげん」のブースに農口尚彦杜氏が立ってくれた。農口さんは、言わずと知れた能登杜氏四天王の一人、現在に生きる“山廃つくり”の第一人者といわれる方だ。
 幸いにして、前夜の「農口さんを囲む懇談会」と当日終了後の打上会で席を共にすることが出来て、含蓄のあるお話を沢山聞くことが出来た。

                   


 ご承知の通り、日本酒のシェアーは下降線をたどり続け、平成20年度(21年3月期)で7.4%まで下がった。戦前は当然のことながら50%を越えていたし、戦後でも昭和30(1955)年で37%、昭和45(1970)年まで30%を保ってきた。その後一挙に日本酒離れが続き、今や5%を割る寸前まで来ている。
 その背景には、食の多様化やグローバル化など様々な要因があったであろうが、最大の原因は「美味しくない日本酒」ということに尽きよう。アル添三増酒というニセモノ酒が、その大半の責めを負うべきであろう。
 ようやくそれらのニセモノ酒を克服しようとしているが時既に遅く、日本酒の信頼を回復するには、今後かなりの時間と質の向上を必要とするだろう。

 私は予てより、「山廃純米酒、特にその燗酒が日本酒の低迷を救うのではないか?」と思ってきたのであるが、その山廃つくりの蔵はなかなか増えてこない。農口杜氏にそのことを聞くと、氏はこの酒造法の難しさをとつとつと語った。

 「日本酒の本当の味は山廃の中にある。この造りが、豊かな米の味を酒に引き出す。」
 「しかし、それだけに山廃は難しくて、何よりも手間がかかる。安易に流れる風潮が、この困難と手間を避けたがる。」
 「ワシは、この造りを残したくて若い者に教えてきた。熱心に学びそれを身につけようと頑張っている者も沢山いる。しかし、全ての人間がその奥義を身につけるかというと、そうは行かない。最後はそれを学ぼうとする者の”感性”だ。」
 「困難をいとわない者、しかも豊かな感性の持ち主が引き継いでくれるのだ。」

 私はこれを聞いて身の引き締まる思いがした。千数百の蔵の中で、生もと、山廃もと造りをやる蔵は一握りに過ぎない。その背景には、それが大変な困難を伴うという恐ろしい現実があるのだ。本物を守り育てることがいかに大変なことか……、それにしても、「農口さん、まだまだ行き続けてください」と叫ばずにはいられなかった。


  大いに語る農口さん
             

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