TABI天使日記

天使になったカナダのアジリティ犬と、ママ・パパの日常

ホラーな医療制度

2014-02-11 16:07:42 | カナダ話題
足のMRIの予約日が郵送されてきた。

膝を怪我したのが、昨年の一月。
主治医がレントゲンとMRIの予約を申し込んでくれたのが、三月。同時に彼女は、整形外科専門へ紹介してくれた。「半年以上の待ちになるけど」と言って、彼女は鎮痛剤と抗炎症剤の処方箋を書いてくれた。待っている間、なんとかこれ飲んでしのぎなさい、ってことだ。

日本と違ってカナダは家庭医制度なので、専門医に診てもらうには主治医から紹介してもらわないといけない。ずっと医師不足なので、診察予約や検査、手術の待ち時間が数ヶ月から十年以上とべらぼうに長いのだ。

やっとレントゲンの順番が来たのが昨年の11月。そして、整形外科は12月に予約が入った。専門医は私に「MRIは?」と聞いたので、「まだ予約が入らない」と答えた。「MRIがまだなんじゃ、何もできない。MRIとってからまた来なさい」と、半年以上待った専門医との診察は5分で終了。

やっと今日来たMRI予約を見たら、予定日がなんと今年の11月。主治医が予約を申し込んでから、実に一年半以上の待ち時間である。

このような状況であるから、予約待ちをしている間に病状が悪化して死んでしまうケースがあとをたたない。夫の職場の知り合いも、予約を待っている間にガンで亡くなってしまった。

この予約待ちをスピードアップする方法は?というと、医師に知り合いがいるなど特別の場合を除くと、一般人にできることは生前臓器提供なのだそうだ。

普通の臓器提供は、自分が死んだあとに提供するよう遺言を残したり、運転免許証に明記したりして意思表示をしておく。が、生前臓器提供は、自分がまだ生きているうち(しかもまだ比較的若くて臓器が痛んでないうち)に臓器を切除してしまうことだ。もちろんこのやり方では、心臓とかは提供できないので、腎臓など二つあるから一つはあげてもいいや、というような臓器を提供する。そういう太っ腹な人は、医療関係者もできるだけ便宜をはかってくれる傾向があるそうで、病気になった際には検査や手術の予約待ちがいくらか短縮される可能性があるという。

よくドラマとかで借金がかさんでヤクザみたいのがカネの取立てに来て、「腎臓売ってカネ作れ!」とか言われてたりする。カナダは先進国なのに、自分の臓器でも提供しないと医者にすぐ診てもらえないのだ。サイテー。

これはKazuo Ishiguro原作のSF映画、Never Let Me Goを思い出させる。

舞台は近未来(?)のイギリス。臓器移植をとことん続けることで人間が百年以上生きることが可能になった世の中のお話。臓器提供者となるべく育てられた子供たちの、その後の人生と葛藤がテーマ。この子たちは大人になると、一つずつ臓器を切り取られ、どんどん弱ってゆき、最後には心臓を失って死ぬ。

ホラーだけども、臓器移植が活発になってきた昨今だから、今後は臓器がどんどん不足していくのは目に見えている。それこそ生きてる人間からでもむしりとらなければ、供給に追いつかない。そのうちこの映画のような世の中になっていくんだろう。