江戸糸あやつり人形 ー The Edo Marionette Group

江戸糸あやつり人形の公式ブログ
写真付きで、演目紹介、活動報告、リンク先などを
日本語、外国語で紹介します。

崩れる

2023-11-29 00:32:18 | はじめに
喜之助人形劇フェスタで、アマチュア人形劇団の稽古を見た。
人形創りを趣味としている人の作った人形で、
見た目は良いのだが、手板が独特のバランスで作られており、
これを遣い続けると変な癖がつきそうで
遣うのはやめたほうが良いとかつて言ったことがあった。

中に1体女形があり、ちょっと気になった。
手板の前を極端に落として遣っているのに
カシラは上を向いたままなのだ。
糸の長さの調節を間違えているのかと思い
借りてみたら、そうではなかった。
結髪は後ろに長く垂らしているもので、
髪が重すぎてのけぞっているのだった。
本番はもうすぐだ。
最初は髪を持ち上げて顔が正面を向くようにして
途中でのけぞったら、チョイを少し張って少し肩をゆすると
元に戻ることに気付き教えたら、
チョイの張り方が分からない、と言う。
手板を持つ手を見たら、チョイの糸を握っているはずの薬指が立って
手板を支えている。
これを見たとき、私が初めて益田に教えに行った時の
益田の人たちの人形の遣い方を思い出してしまった。
その時益田の人たちは、マモリ(カシラを左右に動かす糸)の
タタラ(手板に組み込まれている2本の棒、中心に芯が通っていて
シーソーのように動かすことができる。マモリとゲソが付く)を
人差し指から小指まで4本の指で支えていた。
こうして人形の遣い方が崩れていくその過程を見てしまった気がした。

最近になって私の先輩が、その子供と一緒に獅子を遣っている写真を見た。
蝶が出てきて、獅子が1回飛び掛かったところで
獅子は後ずさりしてキッと獅子頭を高く蝶を見下ろすところがある。
この時左手は手棒を滑らして、
獅子の中にいる前の人の肩糸を親指で張るのだが、
その親子は二人ともそれをやっていなかった。
久しく遣ってなく、忘れてしまったのであろうか、
これも崩れていく1例であろう。

動画に収めればよいと人は言うかもしれない。
もしそうするのなら、何台ものカメラを設置しなければならないだろう。
こんなことがあった。
師匠から人形を教わっている時
「上條、どこを見ているんだ」と𠮟られたことが何度かあった。
ぼーっとしていたわけではない。
「ここだよ」と言われても
「えっ、どこ?」と思ってしまう。
それは私が教えている時にもあった。
ここのこれを見て欲しいのに
教えている相手は全然あらぬところを見ているのだ。
ある程度遣えるようになると、
ああ遣っている、こう遣っていると分かるようになるのだが
遣えないうちは、どこを見てよいのだかが分からない。
皮肉なものだとつくづく思う。
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ワークショップ 韓国編 3日目

2023-11-15 00:00:39 | 海外公演報告



3日目は私の人形を実際に遣ってもらう。
小学校で体験教室を開くとき、
子どもたちの中には何人か自分勝手に遣ってみようと
あれこれ動かす子がいる。
大人も同じだろうと思っていた。
だからざっと遣い方を教えたら、しばらく好きに遣わせていた。
不思議と同じような動きをする人はいない。

休憩の後は、状況だけ決めて、あとは即興で芝居を作ってもらった。
その状況とは、女が家で男の帰りを待っている。
そこに男が帰ってくる、というもの。
二人一組でやるのだが、その二人も適当にその場で決めた。

これが面白かった。
そして韓国語が分かればもっと楽しめたのに、と悔しかった。

ある組では、男が千鳥足のように帰ってきた。
そこでかみさんがすかさず徳利を持たせる。
この組は、結局男が追い出されて終わった。
次の組は、男が女に酒を飲ませようとすると
女は必死に飲もうとする。
その必死さを表そうと頭糸をもって引っ張り上げるものだから
切れるかなと思っていたら、やはり切れた。
その組はそこで終わり。
そしてすぐに糸を直す。
といった具合で、
どの組が出てもみんなゲラゲラ笑っている。

最後に卒業証書として手拭いを全員に渡す。
もちろん全員大喜びだった。



翌日の公演に何人か見に来た。
どのように映ったであろうか。
糸あやつりへの興味が深まってくれればと願っている。


会場入り口の様子

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ワークショップ 韓国編 第2日目

2023-11-13 00:04:59 | 海外公演報告

劇場を裏から見たところ。手前の空き地に新しく人形劇場が立つとのこと。羨ましい。

第2日目は屋内に入って行なった。

冒頭前日の蝶の操りの時に言い忘れたことを伝える。
蝶を舞台の前後に振るところがあるが、
どうしても振り子のように振りがちだが、
それではあなた任せになってしまう。
自分でしっかりコントロールするならば
重力を使って落とすように止める、
その意識が大切と伝える。

この日のメインは、自分の糸操り人形を作ること
しかも材料は日常で手に入れられるもので
1~2時間もあればできてしまうもの。
子ども放送局で初めて披露した私のオリジナルで、
その後児童養護施設の子どもたちを支援する企業のイベントで
何年もやった子供対象のワークショップだ。
子どもたちは結ぶことに慣れていないので
大体が1時間半ほどかかるが
今回は大人が対象なので、1時間程度でできると思っていた。
材料は韓国で調達、ただ念のため私が作った人形を見本に持って行った。
これが正解で、私が指定したものがどういうものかわからず
見本を見せたことで全品揃えることができた。

作り始めると皆楽しそうに作っている。
一人日本語で書いた教本を読んで先に作ってきた人がいた。
そういう人には、一つ先に進めて、
私たちが良く使うちょっと特殊な糸の結び方を教える。

さて大人も子供と変わらず手の早い人遅い人がいて、
結局全員出来るのに1時間半かかってしまった。
皆、「かわいい」と喜んでいる。
遣い方を教えるが、今一つ遣えない様子。
そこで「天国と地獄」を口ずさみながらカンカン踊りを遣ってみると
一気に盛り上がってしまった。
また私自身思ってもいなかったのだが、結構面白く踊れたのだ。

時間が余ったので、3日目の授業を前倒しして少しお話をする。
私が遣う人形の構造と歴史だ。
話したあと少し人形を遣ってみせる。
かっぽれの人形に刀を持たせ、立回りの動きを見せる。
刀を振るのも、重力を利用しているのだと伝える。
人形の動きに参加者はちょっと驚いたようだった、
こんなに良く動くとは・・・と。
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ワークショップ 韓国編 第1日目

2023-11-09 16:56:16 | 海外公演報告
参加人数は8人ぐらいと聞いていた。
しかも糸あやつり以外の人形劇の経験者。
いかに糸あやつりに興味を持ってもらうか、そこが一番のテーマだった。


 会場の人形劇場 ちょうど写っているところで始める

第1日目
 糸あやつりの感覚をつかんでもらうため、蝶を用意した。

 天気も良いし、風もない。気持ちの良い日差しもたっぷり。
思い切って外でやることにした。
教師と生徒という関係が嫌いで、みなに丸く座ってもらった。

 蝶は人数分を用意したのだが、実際は11人も集まり、足りなかった。
まずは糸アヤツリは何が動かしているのか、と尋ねる。
肩だとか腰だとかいろいろ意見が出てくる。
そこでニヤリとして「重力なんだよ」というと皆一様に意外な顔。
それを感じてもらうため蝶を用意したと説明。
足りない分は交代で持ってもらうことに。
蝶は一本の糸の両端についている。
その糸を両手で持つ。親指と人差し指で。糸は親指の上から下になるように。
その時親指には糸道があることを伝える。
そして下に下がった糸を軽く中指にかけ、
蝶の重さをそこで感じるようにする。多少上下に振ると、蝶は舞いだす。

次に、2匹の蝶はどんな関係か、
出てきて獅子に絡むまでどんなドラマを作るか、考えてもらう。
しばらく各々蝶で遊んでもらう。
そのとき一人一人遣い方を見て、直していく。
中には手を上下させないで左右に振っている人がいる。
糸は左右に振ってもほとんど動かない。振り子の反対の状態だから。
持ち方を教えたのに勝手な持ち方をしている人もいる。
一人一人見ていくと、結構時間がかかる。

いよいよ獅子と絡むことをする。
まずかみさんに手伝ってもらって、
蝶の出から去るところまで音楽を入れて皆に見てもらう。
その後は音は入れない状態でざっと振りを一人一人に教える。
ここで皆から休憩の声が入る。
もう2時間が過ぎてしまっていた。
休憩をとってお茶をいただく。

最後の締め、
音を入れて獅子と絡む。
出のところで何人か工夫してくる。
ここチョンジュは花梨を植えているところが多く、
ここにも1本大きな花梨の木があった。
大きな実がゴロゴロ落ちている。
その実を2,3個持ってきて、花に見立てて蝶で絡んでいる。
いろいろあって面白い。
そこでハッと気づく。
蝶の動きが変わるのだから、
獅子もそれに合わせて、基本の振りは変えなくとも
リズムや速さなど変えなくちゃ、と思う。
しっかり生徒に教わっている。
最後まで行ったとき、最初に遣った人は損をしているのかなと思った。
後の人は前の人の遣い方を見ていろいろ考えられるけれども
最初の人は、ああすれば良かった、こうすればよかったと後で考えるもの。
でもやんわりと断られた。
私が大変だからだという。
時計を見たら3時間を超えていた。
一応蝶は回収したが、最後に幾つか残すと約束。
皆結構満足した顔をしていた。

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韓国・チョンジュ 大道芸

2023-11-03 02:00:28 | 海外公演報告
韓国での1週間は、幸せなことにすべて天候に恵まれた。
そして日曜日は大道芸。
会場はレストランの前の駐車スペース。
こんなに人が集まるとは思いもしなかった。




本来なら通訳付きで人形の解説も行い
最後に獅子で頭を噛んで回り30分に収めるのだが、
ある出演者が、どうしても15分オーバーするというので
私の方で詰めることになった。
私の後はグレゴ氏
ますます人は増えて、
レストランの入り口を完全に塞いでしまっている。




予定通り進み2回目の準備を行っていると、
なんと2回目は中止という。
レストランの店主が、客が入らないからやめてくれと
怒っていたのだという。
えーっ、私たちのせいですか?
関係者一同、異口同音に口にしていた。


プログラムを見てやってくる人もいるだろうからと、
写真撮影に応じることになったのだが、
どうもそれだけではつまらない。
グレゴ氏の演奏に合わせて人形が踊るのはどうかと
提案し、Swing,swing,swing をやることにした。


人形を持って会場に戻ると、
まだ時間があるからとベンチに座っていた責任者が
譲ってくれた。
そこで人形を座らせると、ちょっと良い感じ。



写真は責任者とグレゴ氏で、記念にと撮ったものだが、
人形だけだと自然と人が集まり
なんか良い雰囲気になる。
何故かは、わからない。


1回目の会場に近いところで写真撮影に応じていたグレゴ氏と合流。
適当なところでコラボを始めるが、
これがまた楽しい。
観客も盛り上がる。
ところが残念なことに、私のネタ不足で
3分も踊っていると振りが出尽くしてしまい、
後は同じ振りの繰り返し・・・
でも良かったのか、
1曲でやめようと思ったら、主催者がもっとやれと、あおる。


その後人形に通りを歩かせる。
いろんな人が写真を求める。
並ぶだけでなく、いろんなポーズをとる。
時には背中に乗って・・・
遊びに来た人たちにとっては、予期せぬハプニング。


楽しかった。
でも、疲れた~


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