新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

レムデシビルの”次”の役者?

2020-04-30 22:25:15 | 新型コロナウイルス/COVID-19/SARS-CoV-2/武漢肺炎

レムデシビルの承認もなされるかという日本、先だってのWHOのうっかり公表だとか、特例承認だとか、中国発のイマイチだったよ説だとか話題はいろいろ賑やかですが、まあ現時点では期待したいところではあります。

では、アビガンやらクロロキンやらトシリズマブやらシクレソニドやらナファモスタットやら横一列?の”次”の役者は・・・ribonucleoside analog β-D-N4-hydroxycytidine (NHC; EIDD-1931) と。

広域抗ウイルス薬ribonucleoside analog β-D-N4-hydroxycytidine (NHC; EIDD-1931) がSARSにもMERSにも(SARS-CoV-2, MERS-CoV, SARS-CoV, and related zoonotic group 2b or 2c bat-CoVs,)感染させたマウスで効いたという米ノースカロライナ大学の報告。

実はこのペーパー、抄録に「increased potency against a CoV bearing resistance mutations to the nucleoside analog inhibitor remdesivir.」という一文がありまして、レムデシビルを名指しで、あいつがダメになったらこいつがあるよとも主張しているわけです。

まだ動物実験段階、レムデシビルの背中は遠く見ているわけですが、ひとつの期待株ではあるでしょう。

https://stm.sciencemag.org/content/12/541/eabb5883/tab-pdf

https://flutrackers.com/forum/forum/-2019-ncov-new-coronavirus/-2019-ncov-studies-research-academia/855576-%E2%80%8B%E2%80%8B%E2%80%8B%E2%80%8B%E2%80%8B%E2%80%8B%E2%80%8Ban-orally-bioavailable-broad-spectrum-antiviral-inhibits-sars-cov-2-in-human-airway-epithelial-cell-cultures-and-multiple-coronaviruses-in-mice

n orally bioavailable broad-spectrum antiviral inhibits SARS-CoV-2 in human airway epithelial cell cultures and multiple coronaviruses in mice

 
RESEARCH ARTICLE
CORONAVIRUS

An orally bioavailable broad-spectrum antiviral inhibits SARS-CoV-2 in human airway epithelial cell cultures and multiple coronaviruses in mice

 


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新型コロナのロックダウンでこんなに環境が良くなった(NASAデータ)

2020-04-27 17:11:25 | 新型コロナウイルス/COVID-19/SARS-CoV-2/武漢肺炎

COVID-19 関連のロックダウンで良い話はないだろうか・・・ということで、NASAデータ用いた環境影響の報告

  • NASAとESA(NASA欧州版)の衛星データ。
  • NO2排出量を指標にロックダウン前後を比較。
  • 結果、武漢で30%減、欧州で20~30%減、米で30%減。
  • 移動量は90%減まであり。

ひとつぐらいは良いことなけりゃね・・ということで。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969720323378?via%3Dihub


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新型コロナウイルスの変異。病原性変化を示唆する変異の報告

2020-04-21 12:50:13 | 新型コロナウイルス/COVID-19/SARS-CoV-2/武漢肺炎

新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、どんどん変異していってるのか? とは、しばしば尋ねられる質問です。これまで、「それを示すエビデンスは無い」というお答しかできなかったのですが、実際に感染者から採取した11例から、(ベロ細胞つかい)病原性変化を示唆する変異が検出された!という報告。遺伝子配列がよめなければ少々難解ではありますが、、、

  • 1月22日から2月4日にかけて11例(4~70歳)から採取。うち10例は武漢関連。
  • 分析はultra-deep sequencing of the113 isolated viral genomic RNAで、結果、33種の変異が見つかった。うち19種は新たな変異(GSAIDに掲載された1111種に照らしあわせ)。重要はことは、これらの変異は有意に細胞変性効果とウイルス量変化があり、Vero E6細胞に感染させると270倍の変化があった。
  • スパイク S蛋白に6種の変異が認められた。重要はことは、これらの変異は有意に細胞変性効果とウイルス量変化があり、Vero E6細胞に感染させると270倍の変化があった。ここに、新型コロナウイルスは病原性を変異させうる変異を獲得したエビデンスを示すことが出来る(Therefore, we provide direct evidence that the
    SARS-CoV-2 has acquired mutations capable of substantially changing its pathogenicity.)
  • G11083T and G26144T 変異が同定された1例/C8782T and T28144C変異が同定された2例。
  • T22303Gが同定された5例。うち2例は、同じカンファレンスに参加していた。このT22303G変異は、以前にはオーストラリアで1例報告されたのみ。
  • さらに衝撃的なことに(Strikingly, the viral isolate
    130 from )、上記の2例と同じカンファレンスに参加していた1例にA22301C変異が認められた。この変異はT22303Gとコドンの場所が1番目と3番目が違うだけ。これらは偶然の一致かもしれないが、想定外であった( albeit very unexpected)。
  • 最後の1例はORF7bに4か所の変異。

分子生物学、遺伝子配列が読めなければ難解な論文ではありますが、衝撃的だとか想定外であっただとかいう表現を分子生物学者が使い、病原性が変化したエビデンスを示したと胸を張っているという現実は認識しておくべきでしょう。

  •  

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.14.20060160v1.full.pdf


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新型コロナの嗅覚脱失、米国耳鼻科学会の集計発表。73%に嗅覚脱失、26%は初発症状

2020-04-19 15:13:25 | 新型コロナウイルス/COVID-19/SARS-CoV-2/武漢肺炎

COVID-19の嗅覚脱失症状。米国耳鼻科学会がHP上で症例を(会員じゃなくても、世界中誰でも)登録できるページを公表して最初の結果報告。

  • 最初のn=237、73%が診断前に嗅覚脱失あり、26.6%は初発症状として
  • 嗅覚脱失は、COVIDの症状であるといえ、感染性もつかもしれない感染者を早期に見つけ出すのに有効であるといえる。

⇩米国耳鼻科学会の症例登録フォーム。米国外からでも、会員じゃなくても、誰でも入力可能。

 

https://www.entnet.org/content/covid-19-anosmia-reporting-tool-initial-finding

COVID-19 Anosmia Reporting Tool: Initial Finding

April 14, 2020 - 1:17pm

 

 


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新型コロナ感染で消化器症状(吐気・下痢・・)はこんなに多かった

2020-04-19 12:12:31 | 新型コロナウイルス/COVID-19/SARS-CoV-2/武漢肺炎

COVID-19の消化器症状。これまで、「SARSやMERSに比べ下痢症状の割合が低い(2.3%とか3.8%とか)」「糞口感染可能性」など報告されてきましたが、今回の報告は、

  • 米スタンフォード大、3月4~24日、116例。
  • 症状は咳94.8%、発熱76.7%、呼吸困難58%、筋肉痛(52.2%)。
  • 呼吸器症状の持続は5.0日(中央値)。
  • 消化器症状の発現は31.9%。うち89.2%の消化器症状は軽度。
  • 消化器症状は食欲不振22.3%、嘔気嘔吐12.0%、下痢12.0%。
  • 初発症状として消化器症状が発現した例はなかった。
  • 消化器症状の持続期間は中央値1日で、呼吸器症状より有意に短かった。
  • 65例は初診時に肝機能検査を実施しており、うち26例(40%)に肝機能異常。もともと異常がなかった4例は2倍以上の酵素上昇。AST>ALT

約1/3に消化器症状があること、そして、現在の診断手順は呼吸器症状に着目しているだけに、消化器症状が前面にたったケースでは見逃される可能性もある(Moreover, testing
was currently only offered under specific criteria (that required pulmonary symptoms) and could
have missed patients with gastrointestinal symptoms only, thereby underestimating the true
prevalence of gastrointestinal involvement)ことが指摘されています。

呼吸器症状、嗅覚脱失にならんで、消化器症状にも要注意です。

 

https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(20)30471-6/pdf

 High Prevalence of Concurrent Gastrointestinal Manifestations in Patients with
SARS-CoV-2: Early Experience from California

Authors: George Cholankeril, MD1,2*, Alexander Podboy, MD1*, Vasiliki Irene Aivaliotis,
MD1
, Branden Tarlow, MD, PhD1
, Edward A. Pham, MD, PhD1
, Sean Spencer MD, PhD1
,
Donghee Kim, MD, PhD1
, Ann Hsing, PhD2
, Aijaz Ahmed, MD1

Author Affiliations:
1
Division of Gastroenterology and Hepatology, Stanford University School of Medicine,
Redwood City, CA 94603, USA
2
Department of Epidemiology and Population Health, Stanford University School of Medicine,
Stanford, CA 94305, USA 


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新型コロナで腎臓と精巣にダメージ報告。COVID-19罹患で男性不妊が将来多発か?

2020-04-15 08:57:22 | 新型コロナウイルス/COVID-19/SARS-CoV-2/武漢肺炎

新型コロナ感染COVID-19 で腎臓と精巣にダメージ報告。

  • 3本のコホートから。入院例
  • 臨床経過で、3~10%に腎機能障害。BUN,クレアチニン⇧
  • ケアにあたり、腎機能に対して注意払う必要指摘。
  • また、主要な侵入門戸であるACE2が泌尿器系に分布多く、腎臓、なかでも尿細管細胞に多く見られた。
  • さらに予想外に、精巣細胞にACE2が全ての臓器で最も多く見られ、精管とライディッヒ細胞に多かった。
  • この結果から、新型コロナの潜在的な標的のひとつに精巣システムがあり、感染から男性不妊の経過も考えられる。入院およびフォローアップにおいて、精巣病変に注意を払い、若年層においては不妊も含めた評価とフォローアップが必要である。 clinicians should pay attention to the risk of testicular lesions inpatients during hospitalization and later clinical follow-up, especially the assessment and
    appropriate intervention in young patients' fertility.

南京大泌尿器科発、ウロ医ならではの視点です。これまで主要議題と取り上げられてこなかったのですが、今後、COVID-19罹患をきっかけに男性不妊のケースが問題化してくるのかもしれません。

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.12.20022418v1.full.pdf

ACE2 Expression in Kidney and Testis May Cause Kidney and Testis Damage
After 2019-nCoV Infection
Caibin Fan1
, Kai Li1
, Yanhong Ding1
, Wei Lu2
, Jianqing Wang1*
1 Department of Urology, The Affiliated Suzhou Hospital of Nanjing Medical University
2 School of Nursing, Suzhou Vocational Health and Technical College

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BMI 30超の肥満は60歳以下でも高リスクとNY発報告

2020-04-12 13:34:30 | 新型コロナウイルス/COVID-19/SARS-CoV-2/武漢肺炎

なぜUSAでは、あれほど死亡例が多いのか? 遺伝子変異してるんじゃないか?と詰め寄ってくる人の対応は、結構大変です。うっかりすると、遺伝子どんどん大幅変異病原説アップ説に走られてしまいかねないわけですが、医療体制やら医療費やら高リスク群やら、ブロンクスのユダヤ人コミュニティやら、まあ色々出して説明するのですが、ここでひとつ、納得されやすい報告。肥満(BMIの30以上の)人は、ICUレベルの重症化リスク。

  • n=3615例。うち21%がBMI 30~34、16%がBMI35~。(さすがUSA!)
  • 特に60歳未満において有意差。BMI 30-34においては(BMI 30未満に比べて)2.0倍急性期病棟に入院し、1.8倍 ICUに入院した。それぞれ (95% 1.6-2.6, p<0.0001) 、 (95% CI 1.2-2.7, p=0.006) 。
  • BMI 35以上、では急性期病棟2.2倍、ICU3.6倍。それぞれ (95% CI 1.7-2.9, p<.0001)、 (95% CI 2.5-5.3, p=<.0001) 。
  • これまで60歳未満は高リスク群と見なされず、急性期ケアの対象とおもわれていなかった。しかし、我々の施設のデータからは、肥満がこれまで認識されてこなかったリスクファクターと浮かび上がってきた。

BMI 30以上の肥満はCOVID-19重症化のリスク要因である。ということで、だからBMI 30以上の多い米国では・・・と説明の一要素にはなるようです。

 

↓こちらからpdfダウンロードできます
https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa415/5818333

Obesity in patients younger than 60 years is a risk factor for Covid-19 hospital admission 

Clinical Infectious Diseases, ciaa415, https://doi.org/10.1093/cid/ciaa415
Published:
 
09 April 2020

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軽症例から49日ウイルス排出確認も感染性は高くない報告

2020-04-06 11:43:59 | 新型コロナウイルス/COVID-19/SARS-CoV-2/武漢肺炎

これまで、ウイルス排出が長引くのは重症化のサインとも見られてきましたが、49日間排出かつ軽症例の報告。

これや例外的、special caseと記述されていますが、この軽症の遷延例では、排出されたウイルスの感染性や毒性は低いとも。

なお、同時に、回復者血漿の有用さものべられています。

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.22.20040071v1

A special case of COVID-19 with long duration of viral shedding for 49 days

Li TanXia KangBo ZhangShangen ZhengBo LiuTiantian YuFan YangQiongshu WangHongming Miao

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.22.20040071v1


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新型コロナで危ない動物、大丈夫な動物は・・ペットの参考にも

2020-04-02 08:36:44 | 新型コロナウイルス/COVID-19/SARS-CoV-2/武漢肺炎

新型コロナウイルス SARS-CoV-2 をペットに感染させたり、感染したペットからうつされたりがあるのか否か。あるいは、家畜ではどうか。

動物の種類によって感受性は違うよという報告。

感受性が低い(安全な)動物:犬・豚・鶏・鴨

感受性が高い(危険な)動物:猫・フェレット

猫では気道分泌物からも感染確認。

 

というわけで、ネコにはご注意を。一方で犬は安全そうなのですが、その犬をつかって、唾液の匂いから感染者を探知させよう(COVID探知犬)という試みもイスラエルで行われています。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/278052?fbclid=IwAR0ZwxH8Nl36hgA9bq-_WKn8vIcA_sCiaJ4atduUFajKjAyaOWus1xvJTSI

Experiment: Dogs will detect coronavirus carriers

Ministry of Defense trying to train dogs from IDF's Oketz Unit to identify coronavirus patients by sniffing their saliva samples.

 

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.30.015347v1

usceptibility of ferrets, cats, dogs, and different domestic animals to SARS-coronavirus-2

Hualan Chen

 

 

 


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