治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

命にしがみついた日々

2018-12-15 09:53:18 | 日記
『藤家寛子の沖縄記』出ました。
早速ねこ母さんが書評書いてくださっています。
ねこ母さんは珍道中に笑い、そして藤家さんの姿勢に勇気づけられたようですね。
「命にしがみつく」。これって藤家さんが本の中で使っている言葉なんですが
生存者(バイアス)の一つのキーワードだと思っています。






この本を編集している途上思い出したのですが
最初に沖縄行ったとき、藤家さんとはパスタ食べに行ったんですよ。
私が通常沖縄行くと、島酒を初めとして珍しいおさかなとか各種ちゃんぷるーとか山羊の刺身とか、そういうものを食べに連れて行ってもらうことが多かったのですが、あの頃の藤家さんにそれはまだ無理筋だった。
週に五日作業所に通うという画期的な立ち直りを見せていましたが、それでも山羊の刺身が出る居酒屋は無理。というのが山城さんとごく自然な私の判断で、どっちかというと全国どこにでもありそうなファミレス的なメニューの方面で食事をしたのです。そして藤家さんは半分以上残しました。まだあのときの体力はそういう感じだった。

今も女子ランチに使われそうなお店でしたね。
ファミレス的なメニューなんだけど、ちょっとおしゃれ、みたいな。
たとえば皆さん、女子ランチだとパスタセットとか多いかも。申し訳程度のサラダがついたのとお好きなパスタ1000円レンジ。そして店を変えておしゃべりしてスイーツとお茶。太っちゃう~ということで夕食は控えめに。この食事で足りないのは野菜・・・というのがこれまでの常識だったのじゃないでしょうか。でも違ったんですね。この食事で足りないのはタンパク質だったのです。それが最近の栄養療法の指摘するところ。しかも炭水化物を代謝するのにミネラルを大量に持って行かれる。タンパク質はないわ、ミネラルは持って行かれるわの栄養不足。藤川先生の本の指摘で一番鋭かったのは「普通の食生活では栄養不足になるのが今の日本」ということです。それが発達障害の大量発生につながっているでしょう。

そしてそういう店で半分以上残したりすると痩せ願望かと女子は邪推するのですが、私は知っていた。本当に藤家さんは消化力がなかったんです。何しろ肉が消化できなかった。私は生まれてからこのかた丈夫な自分の家系、丈夫な夫の家系、そしてそもそも体力ある人しかいない出版の世界、と体力ある人に取り巻かれてきたので肉を消化できない人というのを見たのは藤家さんが生まれて初めてだった。正直、肉が消化できないなんて珍しい生き物だと思いましたよ。そして今回のクラッシュレッスンでわかったのはとくに発達凸凹周辺には消化機能が芳しくない人が多いし(親御さんも含めて)それが決定的なタンパク質不足からきているということです。

タンパク質不足女子→鉄欠乏(健康診断では出ないフェリチン値の不足)→妊娠→お子さんに神経発達障害→お母さんメンタル不安定→鉄剤→消化器官がしっかりしていないので鉄剤で不具合→高タンパク→消化器整う→お母さん安定→お子さん安定

ということなんですな。

それまでもどうも夫は必ず朝食に肉か魚が必要なようだということには気づいていて、彼にはタンパク質多めに(私より)出すように心がけたりはしていたのです。そして女子の感覚で男子に料理を用意するとどうしてもタンパク質が男子的には不足するのではないか、というのに気づいていたんですけど、本当は自分も肉をもっと食べていればよかったことに気づいた昨今。そうすると自然に糖質が食べたくなくなる。ダイエット目的の糖質制限は干物化への道ですが、最初に高タンパクにしてからの糖質制限は制限っていうより単純にほしくなくなる。あ、でもコメント欄に書いてくださった方がいたように、糖質その日暮らしの人(脂肪を蓄積する能力の弱い痩せの大食いとか)は高タンパクをしてもまだ糖質を取る気があるようで、身体はうまくできているなあと思います。私の場合にはもちろん、まったくいらなくなりました。行きがかり上仕方ないときに少し食べればそれでいい感じ。

えっとこの記事は藤家さんの新刊の告知なので藤家さんの話に戻ると、私は最初に沖縄に行ったときのパスタディナーを思い出しました。ちなみにうちでディナーがパスタだったら夫は怒ると思います。本当はそれが健康な感覚なんだと思いますよ。魚と肉と野菜がないと夕食だとは思わないってめんどくさいけど健康なんだと思う。ていうかランチでもパスタ一皿は無理だなうちは。きっとさみしがると思う。食費かかって仕方ないでしょ、と思うかもしれませんが、その分病気はしませんね。風邪一つ引かないし引いても一日で治る。

そしてもう一つ思い出したこと。
藤家さんが横浜に引っ越してきて倒れて、アパートに行って冷蔵庫見たらマーブルチョコだけが入っていて「やはり」と思った。本当に食べない人だったから一人暮らしで私が一番恐れたのは食べないんじゃないかって言うことだったんだけど本当にチョコレートしか食べていなかった。

でも今考えると、なんとか生きようとしたからチョコレートだけは買ってあったんですよね。
あのマーブルチョコを見たとき、私は「またろくに食事も取らずジャンクなものだけ買ってある」と思いましたが、あれがあのときの藤家さんの精一杯の頑張りだった。マーブルチョコで命にしがみついていた。
マーブルだと咀嚼もそんなにいらないし。当時の藤家さんは咀嚼もそんなに上手じゃなかったと思います。

それが今年、豚の耳まで出世したのです。
あのコリコリが美味しいと思えるようになるまで。

2010年2月の時点ではとにかく週に五日通所できて沖縄まで一人で飛んでこられて一泊して帰ってまた作業所の日々に戻れる。それが「治った」だと思っていた。
2018年5月の時点ではもっともっと沖縄を楽しめるくらい治っていた。
そして楽しい楽しい珍道中となった。
大きな思い出を持って帰った。
そういう本です。希望につながる本です。


『藤家寛子の沖縄記』 399円

どうぞお読みくださいませ!



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栄養療法や糖質制限が上手くいかない原因 (診断済み発達障害当事者)
2018-12-19 14:58:53
タンパク質を上手く消化できない人がタンパク質をたくさん摂っても失敗する可能性が高いと思います。消化酵素もタンパク質でできているからです。なので、いきなりタンパク質を摂る前に、アミノ酸の形で摂った方が吸収されやすいかと思います。消化酵素も補うことが必要です。「わかもと」でもいいですけど、酵母が入っているので私はダメでした。酵母は日和見菌という説もあって、悪玉菌が優勢だとかえって腸内環境を悪化させるようです。今はiherbで酵母の入っていない消化酵素を買っています。

タンパク質を摂っても糖質がやめられないというのも、原因はいろいろ考えられると思います。上手く吸収されていないというのもあるでしょうし、低血糖症の可能性も高いです(手っ取り早く血糖値を上げようとしている)。また、副腎疲労があれば、糖質を抜きすぎるのも危険です。

タンパク質が足りているかどうかのひとつの目安として、一般の健康診断の血液検査の結果を参考にできます(肝疾患や腎疾患などがないことを前提として、あくまでも参考です)。酵素の材料はタンパク質なので、酵素活性が低いときにも、タンパク質不足の可能性があるそうです。AST、ALT、LD、γGTPなどの酵素の値は、低タンパク状態では低くなるようです。ASTとALTは肝機能評価のための項目ですが、これらの酵素はビタミンB6が補酵素として働いているので、ビタミンB6が機能しているかどうかの指標にもなります。この辺は、書くと長くなるので、興味のある方は『あなたのサプリが効かない理由』という本を読んでみてください。低血糖と精神疾患の関係については、『「血糖値スパイク」が心の不調を引き起こす 』という本がお奨めです。発達障害と血糖調節異常の関連はすでにいろいろなところで指摘されています。


栄養療法や糖質制限が上手くいかない原因はさまざまです。消化・吸収力、摂取量、飲み合わせ・食べ合わせ、運動、咀嚼力、筋肉量、ピロリ菌の有無、腸内環境、慢性炎症の有無、重金属など、いろいろなことを考慮することが必要です。

私は3年前に知識ゼロから始めて、文系出身なので、一般的な生化学や栄養学から勉強を始めて現在も進行中ですが、きちんと知って実行すれば大きく変わるし、勉強すれば、自分が楽になるだけじゃなく、人に勧めて上手くいかなかった場合に考えられる原因をきちんと説明できるようになります。ツイッターは便利なツールですが、間違った情報も多くあります。ヘンな情報に飛びつかないためには、ちゃんとした知識をつけることも大切です。

勉強したい方は、https://eiyouryouhou.jp/というサイトでいろいろ情報が手に入ります。この管理人さんは医療関係者でもなんでもなく、元患者さんです。この管理人さんも書いておられますが、栄養療法のオンライン講座って確かに高額ですけど、実際意を決して受けてみると、「こんなにあるの!?」というほどてんこ盛りな動画が観られるし、最新の知見を紹介しているし、決して高くはないんです(別に勧誘しているわけではありません)。無料で見られる動画もYou Tubeにもたくさんあります。実際にいくつか講座を受けた経験からすると、オーソモレキュラー系の人たちは、お金を儲けたいというよりも、単に、患者やクライアントが治らないのが嫌で嫌でたまらなくて、絶えず最新の知見を探っているオタクという印象です。


余談ですけど、以前に行った消化器内科で栄養療法の話をしたら、医師に「分子栄養学?聞いたことありませんね。分子生物学なら学生時代に学びましたけど」と言われて絶句しました。アンチというスタンスもありだと思うので、「分子栄養学、ああ、あのインチキね」というのならまだわかりますが、言葉も聞いたことがないなんて、呆れました。ビタミン点滴をやっているので詳しいのかと思ったら、どうやら流行っているから取り入れただけみたいです(こういうのを金儲け主義というのでは)。考えてみたら、日本では医師免許は更新制ではないので、学生時代の知識のままでも医師免許は失効しないのですよね。だから、そういった医師と最先端の知見を研究している医師とでは、雲泥の差があるんですよね。それを見極めるには、患者も勉強することが必要なのでは、と思います。勉強するのは面倒だし、時間がかかるけれど、コツコツやれば10年後には大きく違うはずです。