治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
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「知的障害は治りますか?」の準備編 親なきあとの問題

2019-05-13 08:53:47 | 日記
さて、「知的障害は治りますか?」の準備で私はパール・バックの本を何冊か読みました。
かつて新潮文庫の海外文学を踏破する勢いで読んでいた文学少女だったとき、ピューリッツァー賞受賞作である『大地』は読みました。でもこれも今回読み直しました。
ピューリッツァー賞の重さを知ったのは、出版業界に入ってからで当時は知るよしもありませんでしたけど。

『大地』に関しては名訳があります。電子書籍で読みました。
名訳と言えど、今は使わない差別用語は出ています。
清朝が衰亡する時代、貧農から大地主にのし上がった主人公王龍の娘の一人が知的障害者で「白痴」と呼ばれています。名前はありません。
パール・バック自身知的障害を持つ女の子の母であり、この体験がこの小説に反映されていると言われています。

そしてパール・バックにはこのお嬢さんとのことを書いた本もあります。
邦訳は『母よ、嘆くな』と無難ですが、原書のタイトルはなんと”The Child Who Never Grew"というすさまじいタイトルです。
これもKindleで読めます。
そして中身は愛情にあふれています。

中国で知的障害のある娘を生んだ著者は、中国人ナニーの手も借りながら誠実に娘を育てます。
いつかはアメリカに帰って施設に入れなくてはならない。
個人主義のアメリカ人にとって、こういう手がかかる子を他人に預けるのは当たり前のこと。親なきあとも考えるとかえって安心なこと。ところが家族の中の弱者は家族が一生面倒みるべきだと信じている中国人たちからは「残酷だ」と反発を受けます。

パール・バックはアメリカに帰り、施設探しをします。
その施設探しの時に重きを置いた点などは、今の親御さんたちの親心にも合っていて面白いです。
そして過度なトレーニングは戒めつつも、能力を引き出そうとしないありのまま系の支援者や、子どもの幸せより親受けを考える施設への拒否感など、問題は全く古くなっていません。

そして『大地』の中の「白痴」に与えられた運命が、ある意味パール・バックの理想だったのかもしれないと思います。
王龍は晩年三番目の妻(妾)を「買い」ます。当時の中国で妾は金を出して買う「物」扱いでした。
高齢のため、この三番目の妻とは性的関係がなかったという設定になっています。ただその美しさと人柄を見込んで富豪になった王龍がそばにおいておきたかったのだと。
王龍はこの妾に、妾が死ぬとき白痴を殺してくれと毒物を渡します。
他人の手を借りなければ一日でも生き延びられない娘を残すにしのびない、と。
妾の方は、殺すにしのびない、と悩みながら世話をします。

ところが健やかだった「白痴」が突然の病を得てあっさり死んでしまいます。
そして妾は出家します。
なんというか、これが親なきあとの理想だったのではないかな、と思わせられる展開です。
この妾はあくまで聖女に描かれています。
けれども最初に人身売買があったのが複雑なところです。

なんで今回こういう読み返しをしたかというと、愛甲さんから来ている「知的障害は治りますか?」のまえがきにこういう一文があったからです。未編集ですがお見せします。

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ノーベル文学賞作家パール・バックの娘さんにはフェニールケトン尿症が原因の知的障害があったことが知られています。パール・バックのノーベル賞受賞作「大地」には知的障害がある名前のない女の子が登場しますが、一説には娘さんがモデルになっていると言われています。
 フェニールケトン尿症は、近年、生後まもなくの血液検査で発見されるようになり治るようになりました。フェニールケトン尿症のように原因がはっきりしている知的障害もあれば、原因不明の知的障害もあります。知的障害は状態像であって原因は様々です。

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パール・バックが嘆き「決して成長しなかった子ども」とまで読んだ娘さんの知的障害は、現在では治療により治るものとなりました。
そしてその研究に、世界的ベストセラー作家となったパール・バックは莫大な寄付をしたそうです。
娘の存在を受け止め愛情をもって育てることと、その障害を治そうとする人たちに貢献することは、なんら矛盾がなかったということです。

おそらく花風社クラスタの人たちはこの気持ちがわかると思います。
治そうとすることと愛することはなんら矛盾するものではない。
それがどうしてもわからない人たちとは一線を画して当然だと思いますし、いちゃもんつけられたら言い返して当然だと思います。

そういういちゃもんの人たちを圏外における場所作りを私は今最優先しています。
そのあとに藤家さんの本を出します。
そのあとに愛甲さんの本を出します。
だから予定は延びると思います。
その間にOO群とか、どれくらいの人が治っているかとか、治るとはどういうことかとか、そういう資料がいっぱい集まってきています。
それを愛甲さんとも共有していきます。

しばし時間をください。
今現在の花風社のラインナップで知的障害は治りますかに一番近いのは「脳みそラクラクセラピー」です。
これを読んでおいてください。
電子書籍もKindleから出ています。お得な価格設定していますよ。
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