坐花酔月 徒然日記

 「花咲く処に腰を下ろし 月を眺めて酒を楽しむ」 この一年、どんな年になるのか。

手打ち蕎麦 福湊庵

2012-04-23 21:46:09 | 徒然日記


この4月から、18年間もお世話になった酒田・飽海地域から鶴岡・田川地域へと担当営業地域を変更しました。まだ引き継ぎ等々で酒田市内のお客様にご挨拶を兼ね出向いてはおりますが、なかなか一抹の寂しさはありますね。心優しい多くの酒田飽海のお客様方、大変お世話になりました。ありがとうございました。そして今後もよろしくお願い致します。


酒田市内から朝日地域に向かう途中、羽黒の蕎麦屋「福湊庵」で昼食。
自由に漬物を取れ味見ができるカウンターはイイね。美味しいし。
漬物を賞味しながら蕎麦を待つ間、日向子さんの蕎麦喰い流儀を思い出していた。


「燗なし、徳利で一本。もり一枚」
 
 昨今「冷や」は冷酒と混同される憂いがあるから「燗なし」。「徳利で」とは、コップ酒を忌避して。コップ酒は、すいすい減って行く様が丸見えで寒い。流行りの吟醸酒に使うガラス徳利も、同じ理由で好まない。徳利の減り具合を、手酌の度に推量しつつ、盃でやるのが落ち着く。そして、冷えきった際の初っ端は、燗より常温の方が、芯の暖まりが速やかで優しい。
 凌ぎの蕎麦味噌や、くらげ梅和えを、箸先に嘗めて半分やる内に、せいろが来るから、酒の残りは、うっちゃっといて、蕎麦へ取っ掛かる。薬味なしに、三・四本ずつ、つゆに下三分の一顔を見せ、するするたぐって、よそ見せず食べ進み、後半、本山葵を蕎麦猪口へ溶き、つゆの饒舌なハーモニーと戯れる。簀子に、はだら一並べになったら止め、残した酒へと戻る。蕎麦は、箸で丁寧に、重ならないよう広げならしてほっぽらかして置く。
 徳利を空けたら、ぬる燗一本注文。盃で蕎麦湯を一・二杯飲み、盃を暖めて待つ。燗が来たら、ほど好く水気が失せ、心持ち白っぽく膨らんだ蕎麦を、今度は直接蕎麦猪口へ入れず、箸先をつゆに浸し、一・二本を一口にまとめ、噛み締め食す。先刻の蕎麦と相変わり、芳醇な甘さと味わいの立つ肴となる。蕎麦をつまみに、ぬる燗一本。
 仕上げに蕎麦湯(さり気なく熱いのと取り替えてくれる店もある)の上澄み(白濁湯は重いので残す)を、つゆに足さず盃へ注ぎ、卓に一味七味あらば(双方なら一味優先、共に無くても苦しからず)、目高が、くさめせぬほどに飾り(これは「風邪除けの咒」)、二杯呑んで、お勘定御馳走様。
 暖簾くぐれば町は夕暮れ。人々が慌ただしく行き交う、師走の商店街を抜け、ほろ酔い機嫌で家路をたどる。  <以上、呑々草子より>

「福湊庵」の書は、殿様の筆。そして十割蕎麦も美味しかった。満足。
蕎麦の太さは選べるようです。次は、細切をいただくことにしよう。

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