監督:ジェームズ・キャメロン
主演:アーノルド・シュワルツェネッガー
(※ その他、詳細データはWikiを参照のこと)
※ このコラムは、ネタバレ注意です。
さて。
前回の「ターミネーター」に引き続き、「T2」である。
前作が、人智を超えたもの(T-800)に追われる恐怖を描いた
ものであったのに対して、こちらでは一転。
その恐怖に立ち向かう人智がテーマとなっている。
それは勿論、前作で人類の未来を知ってしまったサラが、その絶望的な
未来に対して叛旗を翻して闘うことを通じて語られることとなる。
それ以外のものは。
いくら、T-1000の映像効果が素晴らしかろうが。
いくら、シュワちゃん演じるT-800が、人々と触れ合うことを通じて
徐々に人間っぽくなっていく描き方が秀逸であろうが。
全ては枝葉に過ぎない。
人は、未知ののものに対する恐怖に慄(おのの)く弱い存在である。
だが、人はそこに留まることはない。
そこから立ち上がり、恐怖に向かって闘うことができる勇気と意思の
力を有している。
それこそがJ・キャメロン監督が描きたかったことだと、もう何十年
ぶりかで本作を見返してみた今、しみじみと思う。
そして。
そのことを何よりも端的に表したものが、本作のサブタイトルである
「ジャッジメントデイ(審判の日)」ではないだろうか。
前作では追われるのみだった主人公・サラが、本作では武器を取って
スカイネットが支配する世界の現出を阻止すべく、様々な戦いへと
その身を投じることとなる。
追われるヒロインから、追うヒロインへ。
このサラの変化は、T1とT2を繋ぐ時空間の中で、ドラスティックな
ターニングポイントとして記憶されることとなる。
その骨格を包み込むように、T-1000のCGが、シュワの肉体が、
様々なアクションが繰り広げられていくことが、本作の魅力を多層的な
ものとしているのだ。
と、まあ。
絶賛はするのだけれど。
どう考えても納得できない点も、この映画には幾つか有る。
その最大のものが、主人公サラ・コナーの扱いだろう。
映画の冒頭部では。
彼女は、精神化の病棟へ強制隔離入院させられている。
これは、世界の週末を説き続ける彼女が分裂症だと判断しての
ことだとされている。
実際、映像を観ても、そうした患者に対する以上の接し方はされて
いないようである。
だが。
彼女は、世界の行く末を知る、ただ一人のキーマンである。
勿論、そのことは他の人は知る由も無い。
それであれば、病人扱いもむべなるかなといったところなのだが、
どっこい重要なパーツが残されている。
そう。
「T1」で、破壊を免れたT-800の腕と、マイクロチップである。
サイバーダイン社では、これらを参考にしながら、スカイネットの基と
なる新世代コンピュータの設計に取り組んでいる。
となれば。
少なくとも、人智を超えた何かが、あの時確かにサラを追い続けていた
ことは事実なのであり、そのこととサラが語る未来のビジョンとは
容易に補完しあうのだから、サラを病人扱いする必然性が見当たらない。
むしろ、徹底的に、サラが知り得た未来の情報を引き出そうとする方が
余程自然だろう。
それをせずに、単にサラを幽閉し続けることに何の意味が有るのか?
FBI等は、「T1」事件を全く問題視せず、単にこの不可思議な腕と
チップが空から舞い降りてきたとしか思っていないのだろうか?
唯一考えられる可能性は、サイバーダイン社(「T1」で、シュワが
演じるT-800がプレスされて機能停止した工場を有する会社)が
T-800の残骸を秘匿してしまった、ということだ。
となれば、FBIも警察も、T-800の存在そのものを認知して
いない訳であり、サラは単なる終末思想にかぶれた分裂症患者という
位置づけになる。
勿論、サイバーダイン社としては、入手したこの不可思議なパーツの
来歴を探るべく、サラの供述調書等も裏から手を回して入手するだろう。
そうして歴史の真相を知った後でも、彼の会社は自社がこの未来のパーツを
理解し、コピーしうる能力を得ることのみに腐心し、人類の未来なんぞに
一片の関心も責任感も持たなかった。そう考えるしか無くなるのだ。
それはそれで、いささかエキセントリックに過ぎる会社としての在り様にも
思えるし、何よりあれだけの事件(警察署への襲撃と多数の警官の殺傷~
タンクローリーの路上爆破)が起こったことについて、FBI等が全く
捜査に乗り出さなかったとすれば…。
もしくは、乗り出したものの、サイバーダイン社が秘匿したパーツまでは
調査が及ばなかったとすれば…。
随分お粗末な話と思えるではないか。
ましてや。
「T2」では、「T1」で警察署を襲撃中のT-800(つまりはシュワ)
の写真(警察署内のモニターカメラで撮影された画像の静止画?)を持って
警察がサラを尋ねてきていたのだから。
「T1」の中で、T-800の足取りをサイバーダイン社まで追うことが
出来ず、結果としてサイバーダイン社によるパーツの秘匿を見逃したと
すれば、それは警察にしろ、FBIにしろ、大失態と言えるだろう。
と、まあ。
突っ込んではみても、この映画が一級品の面白さを具備していることには
変わりない。
さて。
また時間の有るときに、こちらはまだ初見の「T3」にでも手を出すと
するかな。
(この稿、了)
(付記)
追われるものから、追うものへ。
この構図、前もあったなあと考えて、ふと合点がいったのが、
故・長浜忠夫監督作品の「超電磁マシーン・ボルテスV」。
地球に攻めてきた敵を迎え撃つという王道パターンから、
敵星に攻め込んで独裁政権を打倒してしまうという
とんでもなく斬新なストーリーを、1978年に既に商用
TVアニメでやっていたんだよなあ。
う~ん。長浜忠夫、侮りがたし。
この表紙が渋いなあ。
こちらのディスクには、幻のラスト映像が収録されているそうな。
それも、通常の再生では見れず、特定のコマンドを入れて観えるように
なるというから恐れ入る。
結構評価の高いこの映像部分だが、確かに蛇足という感はある。
当初、キャメロンが上映バージョンから敢えて外したのも分かる気が
する。
ただ、こうした情景も在ったんだということを知るには、有意義な
ショットと言えるだろう。
何だか、凄いものが出来上がるらしい。
しかし、ペーパークラフトとは恐れ入った。
主演:アーノルド・シュワルツェネッガー
(※ その他、詳細データはWikiを参照のこと)
※ このコラムは、ネタバレ注意です。
さて。
前回の「ターミネーター」に引き続き、「T2」である。
前作が、人智を超えたもの(T-800)に追われる恐怖を描いた
ものであったのに対して、こちらでは一転。
その恐怖に立ち向かう人智がテーマとなっている。
それは勿論、前作で人類の未来を知ってしまったサラが、その絶望的な
未来に対して叛旗を翻して闘うことを通じて語られることとなる。
それ以外のものは。
いくら、T-1000の映像効果が素晴らしかろうが。
いくら、シュワちゃん演じるT-800が、人々と触れ合うことを通じて
徐々に人間っぽくなっていく描き方が秀逸であろうが。
全ては枝葉に過ぎない。
人は、未知ののものに対する恐怖に慄(おのの)く弱い存在である。
だが、人はそこに留まることはない。
そこから立ち上がり、恐怖に向かって闘うことができる勇気と意思の
力を有している。
それこそがJ・キャメロン監督が描きたかったことだと、もう何十年
ぶりかで本作を見返してみた今、しみじみと思う。
そして。
そのことを何よりも端的に表したものが、本作のサブタイトルである
「ジャッジメントデイ(審判の日)」ではないだろうか。
前作では追われるのみだった主人公・サラが、本作では武器を取って
スカイネットが支配する世界の現出を阻止すべく、様々な戦いへと
その身を投じることとなる。
追われるヒロインから、追うヒロインへ。
このサラの変化は、T1とT2を繋ぐ時空間の中で、ドラスティックな
ターニングポイントとして記憶されることとなる。
その骨格を包み込むように、T-1000のCGが、シュワの肉体が、
様々なアクションが繰り広げられていくことが、本作の魅力を多層的な
ものとしているのだ。
と、まあ。
絶賛はするのだけれど。
どう考えても納得できない点も、この映画には幾つか有る。
その最大のものが、主人公サラ・コナーの扱いだろう。
映画の冒頭部では。
彼女は、精神化の病棟へ強制隔離入院させられている。
これは、世界の週末を説き続ける彼女が分裂症だと判断しての
ことだとされている。
実際、映像を観ても、そうした患者に対する以上の接し方はされて
いないようである。
だが。
彼女は、世界の行く末を知る、ただ一人のキーマンである。
勿論、そのことは他の人は知る由も無い。
それであれば、病人扱いもむべなるかなといったところなのだが、
どっこい重要なパーツが残されている。
そう。
「T1」で、破壊を免れたT-800の腕と、マイクロチップである。
サイバーダイン社では、これらを参考にしながら、スカイネットの基と
なる新世代コンピュータの設計に取り組んでいる。
となれば。
少なくとも、人智を超えた何かが、あの時確かにサラを追い続けていた
ことは事実なのであり、そのこととサラが語る未来のビジョンとは
容易に補完しあうのだから、サラを病人扱いする必然性が見当たらない。
むしろ、徹底的に、サラが知り得た未来の情報を引き出そうとする方が
余程自然だろう。
それをせずに、単にサラを幽閉し続けることに何の意味が有るのか?
FBI等は、「T1」事件を全く問題視せず、単にこの不可思議な腕と
チップが空から舞い降りてきたとしか思っていないのだろうか?
唯一考えられる可能性は、サイバーダイン社(「T1」で、シュワが
演じるT-800がプレスされて機能停止した工場を有する会社)が
T-800の残骸を秘匿してしまった、ということだ。
となれば、FBIも警察も、T-800の存在そのものを認知して
いない訳であり、サラは単なる終末思想にかぶれた分裂症患者という
位置づけになる。
勿論、サイバーダイン社としては、入手したこの不可思議なパーツの
来歴を探るべく、サラの供述調書等も裏から手を回して入手するだろう。
そうして歴史の真相を知った後でも、彼の会社は自社がこの未来のパーツを
理解し、コピーしうる能力を得ることのみに腐心し、人類の未来なんぞに
一片の関心も責任感も持たなかった。そう考えるしか無くなるのだ。
それはそれで、いささかエキセントリックに過ぎる会社としての在り様にも
思えるし、何よりあれだけの事件(警察署への襲撃と多数の警官の殺傷~
タンクローリーの路上爆破)が起こったことについて、FBI等が全く
捜査に乗り出さなかったとすれば…。
もしくは、乗り出したものの、サイバーダイン社が秘匿したパーツまでは
調査が及ばなかったとすれば…。
随分お粗末な話と思えるではないか。
ましてや。
「T2」では、「T1」で警察署を襲撃中のT-800(つまりはシュワ)
の写真(警察署内のモニターカメラで撮影された画像の静止画?)を持って
警察がサラを尋ねてきていたのだから。
「T1」の中で、T-800の足取りをサイバーダイン社まで追うことが
出来ず、結果としてサイバーダイン社によるパーツの秘匿を見逃したと
すれば、それは警察にしろ、FBIにしろ、大失態と言えるだろう。
と、まあ。
突っ込んではみても、この映画が一級品の面白さを具備していることには
変わりない。
さて。
また時間の有るときに、こちらはまだ初見の「T3」にでも手を出すと
するかな。
(この稿、了)
(付記)
追われるものから、追うものへ。
この構図、前もあったなあと考えて、ふと合点がいったのが、
故・長浜忠夫監督作品の「超電磁マシーン・ボルテスV」。
地球に攻めてきた敵を迎え撃つという王道パターンから、
敵星に攻め込んで独裁政権を打倒してしまうという
とんでもなく斬新なストーリーを、1978年に既に商用
TVアニメでやっていたんだよなあ。
う~ん。長浜忠夫、侮りがたし。
この表紙が渋いなあ。
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こちらのディスクには、幻のラスト映像が収録されているそうな。
それも、通常の再生では見れず、特定のコマンドを入れて観えるように
なるというから恐れ入る。
結構評価の高いこの映像部分だが、確かに蛇足という感はある。
当初、キャメロンが上映バージョンから敢えて外したのも分かる気が
する。
ただ、こうした情景も在ったんだということを知るには、有意義な
ショットと言えるだろう。
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何だか、凄いものが出来上がるらしい。
しかし、ペーパークラフトとは恐れ入った。
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作られた時代を考えると、確かにTSCCを先に観てからT2という流れもありえますね。
ということで、コラムの先頭にもネタバレ注意を追記しときました。
T3も観たので、これからはTSCCに手を出していこうと思います。