T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

[ 「ささやく河」を読み終えてー4/5ー ] 5/25・月曜(晴)

2015-05-24 16:03:38 | 読書

◇目撃者

 伊之助は、翌日の夕方、石塚から知らされて、彦三郎が殺された柳橋に行き、彦三郎殺しは偶発的なものでなく、やはり先に本所で起きた長六殺しとの繋がりで調べるべき事件だろうと思われた。

 伊之助は、石塚に、押し込み強盗に関わった岡っ引の嘉助が亡くなっていたこと、それと盗人を見た女の人が見つかったことを報告し、その人に会いたいが、その前に、とにかく一度、鳥蔵に会ってみますと告げた。

 伊之助は、富之助に会って、彦三郎が殺された少し前に鳥蔵が会っていることを告げ、、鳥蔵がやったと思っていないので、鳥蔵の家を俺に教えることが鳥蔵のためだし、もし断っても自身番に引っ張られて疑われるばかりだと言って、富之助に、鳥蔵の家に同行してもらう。

 鳥蔵の家は、霊厳寺の裏門前の町屋にあった。伊之助が鳥蔵に尋ねると、鳥蔵は彦三郎と一緒だったことは認めたが、殺しはやっていないと言った。その対応で伊之助が感じたのは、鳥蔵は、次は自分ではないかと怯えているようで、鳥蔵が3人組の一人であることを白状したようなものだった。

 翌朝、伊之助は目撃者の桶屋のおしまの家を訪ねた。

 おしまの話では、駿河屋のおかみさんから夕方に豆腐を買ってくるように言われ、河岸通りまで戻ってくると、2人が頬かむりした変な3人が走ってきたので、軒下に隠れていた。その後ろ姿を見ているときに、大変なことが起こって大騒ぎになった。

 橋の上で、四つぐらいになる女の子が、変な男達に邪魔だと川に投げ込まれたのです。後ろから半狂乱になった女の声が聞こえ、橋のほうに走って行きました。女の子は、町の人が川を探してその死体を見つけました。それから三月ほどして今度は母親が身を投げて死んだとのことでした。

 伊之助が、父親の名を覚えているかと尋ねると、通い勤めをしていた幸七と言ったと思う。自身番で聞いたら名前が分かるはずだが、今は何処かに引っ越したと聞いている。女房、子供をいっぺんになくしちゃ、いたたまれなかったんじゃないですかと言った。

◇ひとの行方

 伊之助は、早速、帰りに4丁目の番屋により、大家の徳助から、名前は幸七に間違いなく、近江屋という糸問屋の通い手代だったことが分かった。しかし、近江屋が潰れて奉公人の行方も分からなくなっていた。

 伊之助から報告を聞いた石塚は、仮に幸七が犯人だとして、幸七が、長六や彦三郎が押し込みの一味じゃないかという話を何処から仕入れたのか、なぜ今頃になって続けさまに人殺しを始めたのか謎だと言われた。

 多三郎たちも帰ってきて、山城屋の引っ越し先と、山城屋の奉公人で殺された手代・蔵吉の身内が分かったと言って、石塚に知らせた。蔵吉の身内は弟の作次といい、富沢町の畳屋で職人をしているとのことだった。

 伊之助は、山城屋を尋ね、今の旦那の若旦那に会っていろいろと質問した。山城屋は"臆病な貝そのままに開けた戸を隙あらば閉めようと"何かを隠そうとしていることを感じた。 盗人が入ってきたときの様子、蔵吉が刺された時のこと、小僧の栄助が怪我をした時のこと、が言うたびに違っていた。4回もなぜ店を引越ししたのか、何か恐怖を感じているためのように思えた。

 帰りに向かいの鍛冶屋の主人に訊ねると、案の定、1年1回、夜遅く尋ねる男がいて、山城屋が戸を開けるまで、いつまでも外から戸を叩いていたと、何か脅かしを受けているのでないかと話てくれた。その男は50は過ぎていて髪が真っ白だったと言った。

 伊之助は、鳥蔵だと思って一瞬、背筋に寒気が走ったのを感じた。鳥蔵は20年余り喋ればこうなるのだと耳元で恐ろしいことを囁き脅し続けていたのだろう。

 伊之助は、これでは、怪我をした栄助を探すほうが早いと思った。

◇浮かんだ顔

 庄助に聞いてきた作次がいる畳屋はすぐ判った。

 伊之助は仕事が終わった作次に、蕎麦屋で話を聞こうと言うと、妻子が帰りを待っているとのことだったので、ゆっくり歩きながら兄の蔵吉のことを尋ねた。押し込みの中に兄さんが顔を知っていた男がいたとかいうことを誰かに聞かなかったか。怪我をした小僧の栄助さんに会ったことがあるか。蔵吉さんは手代になって家に戻ってきていたかと。作次は陽気な声色で笑顔でよく知らないのだと答えてくれた。

 伊之助は、兄が殺されているのに、あまり陽気でなので、本来の性質を隠しているのではないかと思った。それで、後戻りして、居残りしていた他の職人に、そっと聞いてみたら、独身だし、下っ引をしているので、みなが一目置いているとの返事だった。

 作次を使っている岡っ引が、伊之助が知合いの清吉だということで、作次がとくに怪しいとは思わなかったが、清吉の家に回ってみた。

 庄助が居て、清吉に幸七のことを尋ねているところだった。その幸七を清吉が知っていたのだ。名前も幸右衛門といって今は隠居して深川にいるとのことだった。伊之助は衝撃を受けた。深川西町の大家をしている人なんだ。同一人だということが分かった。

 伊之助は二つの殺しに関連して、最も疑わしい男の顔が浮かび上がってきたのを感じた。

◇人間の闇

 伊之助は庄助と左官の勘助を訪ねた。長六が死んだことを知っているかと伊之助が尋ねると、知っている、殺されたことも、共に後から知らされたと言う。作兵衛店の大家さんも遠縁ということを知っていたのにと言うと、長六と喧嘩別れをしたのをしているからねと言った。引き取ってくれと言われても断ったでしょう、御赦免願いを出して島から呼び返してやったのに、我々を裏店から追い出した男ですからと言う。

 その御赦免のことを伊之助が詳しく聞くと、長六の母親は我々が引っ越す5、6年前に死んでいて、空き家になっていて安くするからと大家の幸右衛門に言われて引っ越ししてきて、御赦免のことは何も知らずに大家さんが書いた書類に爪印を押しただけだと言った。

 庄助は、幸右衛門は和泉屋という立派な糸屋になって、どうして今頃になって人殺しに気を入れ出したのだろうと不思議がっていた。伊之助は確かにもう少し幸右衛門のことを調べたいから手伝ってくれと庄助に頼んだ。

 3日後の夕方、庄助と落ち合って、庄助には他の調べを頼み、伊之助は独りで作兵衛店の元の大家の六兵衛に会った。長六のことを聞くと、子供の頃からどうにもならない悪で、島流しになったときの御赦免の話については母親から断られたとのことだった。また、独り暮らしで働けなくなっても、家賃も入れ、薬も貰ったりしていたが、私だけには内緒で長六が残していったものだと打ち明けてくれたと話してくれた。

 伊之助は話を変えて、幸右衛門に差配の仕事を変えられた事情を訊きたいと言うと、不意打ちを食らった気持で、事情は地主の上総屋さんか幸右衛門さんのほうにあったのではないか、幸右衛門さんを作兵衛店の大家にしなければならない事情があったのでしょうと言う。

 近くの蕎麦屋で庄助が調べたことを聞いた。幸右衛門が言っていた長六が喧嘩口論をしていたと言う話は、誰も見た者がいなかったと知らされた。伊之助は幸右衛門が少し怪しい陰を付きまとわせておく方が自然だと考えたのだろうと思った。

 そして、庄助から拾いものの話を聞かされた。それは、庄助が幸右衛門の息子の和泉屋の若旦那と話をしていたとき、若旦那から、作次が和泉屋によく出入りして、幸右衛門と翌ないしょ話をしているとのことだった。

 もう一つ付き合ってくれと、三笠屋に向かった。長六と彦三郎が会ったときに隣りの部屋にいた男が幸右衛門だったか、おきみに首実検をしてもらいたいのだと言う。

 後日、自身番から出入りする幸右衛門を見てもらうと、おきみが間違いないと言った。

 これで、幸右衛門が長六を殺したことに、まず間違いないと思ったが、なぜ今頃になって復讐を思い立ったかはまだわからなかった。しかし、覗いても見えない深い闇が幸右衛門という人間にあるのを伊之助は感じた。

                               (次章に続く)

 

 

 

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