T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

葉室麟著『潮鳴り』を読み終えて! -1/6ー

2013-12-23 13:44:12 | 読書

(概要)

帯封より

直木賞受賞作「蜩の記」の感動から二年。

豊後・羽根藩を舞台に再起を描く入魂作!

どん底を、なお生きてこそ………

落ちた花を再び咲かすことはできるのか?

襤褸蔵と呼ばれるまでに堕ちた男の不屈の生き様。

 

 生きることが、それがしの覚悟でござる………

 俊英と謳われた豊後・羽根藩の藩士・伊吹櫂蔵は、狷介(ケンカイ=片意地)さゆえに役目をしくじりお役御免、今や"襤褸蔵"と呼ばれる無頼暮らし。

 ある日、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀をめぐる藩の裏切りが原因と知る。前日、何事かを伝えに来た弟を無下に追い返していた櫂蔵は、死の際まで己を苛(サイナ)む。

 直後、なぜか藩から弟と同じ新田開発奉行並として出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がる決意を固めるが………。

 

MSNサイト…牛島信氏の書評より

 出世を目指す武士に弄ばれて身を娼婦に持ち崩したお芳は、狷介さゆえにお役御免になり襤褸蔵と呼ばれるまでに落ちぶれた伊吹櫂蔵と出会い、その後、櫂蔵が弟の切腹を気にして自殺をするところを救う。

 当然のように二人は惹かれあう。しかし、再びお役に付き出仕することになった櫂蔵の求愛に、お芳は応えることができない。女中として働くと言う。もう自分には資格がないとは思いながらも、近くにいたいのである。人情である。

 櫂蔵には継母があり、武士の妻としての誇りに生きている継母は、お芳を受け入れない。酌婦から女中になったお芳は、櫂蔵の継母である染子に、身が汚れていればこそ、たった一つのことを守って生きてきたと言う。それは嘘をつかないということだ。染子はお芳の言うことを信じない。しかし、次第にお芳の一途な生き方にほだされる。そして、ついには「嘘をつかぬとは己を偽らぬということ、本当にそういう生き方をしているなら、それは良いことことだ」と言って、お芳の生き方を認めるようになる。それだけではない。染子は、過去の自分を恥じるお芳に、「女子は昔など脱ぎ捨てて生きるのです」と、ドキリとするような励ましまで言う。以上が横糸である。……

 

 太い縦糸がある。藩の財政改革とそれを利用して儲けを企む悪徳商人が登場する。しかし、本当の悪は、その奥深くに巣食っている。

 櫂蔵は、弟の新五郎が藩の財政改革の志に燃えながらも、犠牲になって腹を切った事件の真相を探る。

 藩のために天領日田の商人から借りた5千両が消えた謎である。不思議にも金が消えてしまったから、弟は命をもって責任をとらねばならなかったのである。金はどこに消えたのか。

 そもそも、なぜ藩の財政が逼迫したのか。藩主の吉原での道楽がすべての原因と分かり、染子は、昔仕えた藩主の実母を動かす。

 この縦糸に横糸が交わっていく。

 

私の読後一行感想

 襤褸蔵と呼ばれた伊吹櫂蔵、娼婦になったお芳、駆け落ちするほど愛していた妻を捨てて放浪の旅に出た俳諧師・咲庵の三人が同様の「落ちた花」の人生を味わい、その後、他人のために、相手のために、「より美しい二度目の花」を咲かせることに自分の生きがいを感じ、それは自分にとっても二度目の花だ知りえたことを描いた作品だと思った。

 

(登場人物)

伊吹櫂蔵: 主人公。藩校で俊英と謳われ、剣術と居合術の腕前も評判で、勘定方に出仕して

        いたが、狷介から役目をしくじりお役御免となり、今や漁師小屋で"襤褸蔵"と

        呼ばれる無頼暮らし。

       後を継いだ義弟が切腹したので、再度、藩命で義弟と同じ役職で出仕する。

伊吹新五郎: 櫂蔵の異母弟。兄の後の家を継ぎ、新田開発奉行並の役付となり、

         新田開発のために借用した金を江戸屋敷の勘定方が横取りし、

         結果は、使用で借りたことになり切腹させられた。

伊吹染子: 後妻で新五郎の実母。奥女中として、昔、藩主の実母・妙見院に使えていた。

        家事全般に秀でた賢夫人と知られていて、

        お芳と相容れない武士の妻としての誇りに生きている。

お芳: 足軽の娘であったが、父の死により料理屋で働いていて、

     出世を目指す若い藩士(井形)に心を奪われた。

     しかし、弄ばれて、その藩士は江戸詰めとなる。

    その後、身を売るようになり、その貯えで飲み屋を開き、生活していた。

咲庵: 江戸の三井越後屋の大番頭だったが、その仕事と妻子を捨てて、

         風雅を求め旅に出る。

    俳諧師として庄屋の家に滞在し、お芳の店で櫂蔵と知合い、

    櫂蔵から請われて御雇(家来)になる。

宗平: 櫂蔵の父・帆右衛門が船手奉行を勤めていたときに水子頭をしていて、

    その後、漁師となる。

    お役御免となった櫂蔵の面倒をみる。

妙見院: 徳川一門の血を引く家から嫁いだ先代藩主の正室。現藩主の実母。

井形清左衛門(清四郎): 若い時にお芳を弄び、江戸詰めとなり勘定奉行となる。

小倉屋義右衛門: 天領日田の大名貸しの商人。新五郎と櫂蔵を援助する。

播磨屋庄左衛門: 博多の富商で、羽根藩領内の田畑を買い漁っている大地主。

            長崎で唐明礬の輸入を取り仕切っていた商人。

小見陣内: 新田開発方の役人。元横目付で、井形勘定奉行のための見張り役。

長尾四郎兵衛、浜野権蔵、重森半兵衛: 新田開発方の役人。元江戸詰めの勘定方。

笹野信弥: 新田開発方の山周りの若い役人。

 

                      (あらすじ)に続く 

 

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