T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

葉室麟著「陽炎の門」を読み終えて! -3/5-

2013-06-29 20:10:37 | 読書

(8) 渡辺次席家老の嫡男が右腕を無くした仇に、次席家老が綱四郎に罠をかけたと疑う。

 翌日、主水は朝から藩主の居間の黒書院に罷り出よと言い付かった。

 尾石家老と渡辺次席家老も出席していて、藩主興世から、芳村の息子が何ぞ勘違いしておるということも考えられる故、後々、疑念を抱かれぬようきっちり始末したがよいと言われる。

 でどうだ、上手くいきそうかと尋ねられ、主水は、綱四郎の切腹も後世河原騒動に関わりがあるかのように漏らす人物がおられますと言うと、異なことを申す者がおるのだなと、興世は首を傾げた。

 すかさず、渡辺次席家老も、それがしにも無縁であるとも思えませぬと言うと、尾石家老が御前の前だと止めたが、興世が続けろと言う。

 次席家老は顔を上げて、あの騒動で嫡男・一蔵が右手を失い、仏の道を歩ませましたが、御家の役に立てず、今でも歯がゆい思いでおりますと言って、あの騒動で腕が立った者は綱四郎か、それともと言って主水を見た。 主水は真剣は抜いてないときっぱりと弁明した。

 主水は後世河原騒動を思い出していた。

 荒川道場と諸井道場の門人の間に経緯は不明だったが、お互いを罵る言葉が行き交うようになり、ある日、後世河原で喧嘩が始まった。 綱四郎と主水は急ぎ仲裁に走った。 何人もの怪我人が出て、河原が夕闇に包まれ乱闘も終わった頃、頭巾を被った7人ほどの若侍が、怪我をして座り込んでいる門人に向かって来て、頭巾集団の二人の仲間が両手を抑えて、一人が気合とともに木刀を振り下ろし大怪我をさせていた。 傷ついて立てない者たちを打ち据えて楽しむとは、なんと下劣な心根であることか許せぬと、立ち上がろうとした主水は怪我をして動けなかった。綱四郎だけが頭巾の若侍の相手に走った。

 全ての騒ぎが終わった後、綱四郎が、主水に、ふと、主水が頭巾の連中の顔を見ずに済んでよかったと言った。 何故あんなことを言ったのだろうと、主水はあの若侍の中に一蔵がいて、綱四郎に腕を斬り落とされたとしたら、綱四郎の落書は、その仕返しをするための罠であったのではないか。それを知らずに綱四郎の介錯をしたのか、そのため、綱四郎は主水を憐れむような目で見たのか、それだけでなく、次席家老は、主水も罠に落とそうとして喬之助に手紙を送ったとも考えられた。

(9) 主水は後世河原騒動と落書や今回の一件は関わりがあると思われ出した。

 主水が下城すると、弧竹先生が来宅していた。 昨日は闇番衆がいたので、十分話ができなかったので参ったが、落書の手跡は確かに綱四郎に間違いない。 しかし、何故、百足の字に気付かなかったのだと、主水は問い質された。 主水は落書の中身に気を取られたとしか思われぬが、その罪は逃れぬところだ。 しかし、侘びる言葉を口にするのは嫌だと言う。

 そんな主水に、再度、弧竹は、後世河原騒動が、今回のことに関わりがあるのだと言った。

 その時、断りもなく、与十郎が座敷に入ってきたので、弧竹は儂が話せるのはここまでで、お暇いたすと言って帰って行った。

 与十郎が、弧竹先生が言いかけた話はと問うので、主水は、後世河原騒動と落書や今回の一件は関わりがあるとのことだと言われた。 その事は今日も御前の前で、そのようなことを申す者がいるとのことを申し上げた。 それで判ったことは、次席家老の嫡男・一蔵があの騒動の際に腕を斬り落とされたそうだが、その相手が儂か綱四郎ではないかと疑っておられたようだ。 それで、儂は、次席家老が仕掛けた罠ではないかと思っているいった。 

 しかし、与十郎は、そんな大胆な所業は渡辺様には荷が重いと否定した。

 与十郎が帰った後、由布は、先ほど与十郎が廊下ですれ違いに袂に入れたと思われる結び文を居間で見た。 桐谷様のためになる伝言があるので、明日、午の刻、妙蓮寺までお越し願いたいとあった。

(10) 元勘定方の井澤泰輔から、綱四郎が書いた「百足」の字についての詳細を知る。

 主水は、町奉行の大橋が言っていた10年前の綱四郎の百足の筆跡を確かめようと書庫に向かった。 

 幸い、一度訪ねようと思っていた元勘定方で、一度は問題の落書を綱四郎の筆跡と認めた井沢泰輔に書庫で会った。

 証言を変えたのは何故かと問うと、百足の字が違っていたからだと言う。そして、桐谷殿が確かめたいと思っている綱四郎が書いた百足の字は、10年前の当時、百足の旗や幟を新調するほどでなく作らなかったので、勘定方には残っておらず、それがしも見ておらず、大橋殿に騙されたのではないかと言う。

 それで、落書に書かれた百足の字を何処かで見た覚えがあり、桐谷様も見られたはずだと言う。しかし、主水は思い出さなかった。

(11) 十郎が由布に懸想する。弧竹先生が殺される。

 由布は寺に出向いた。 与十郎から、喬之助殿が仇討と称して現れるならば、桐谷様は奥方様を気遣い満足に相対することも出来ぬのではありませんか。 奥方様が側におられぬ方が、桐谷様は気兼ねなく刀を取り、身を防げましょうと言って、与十郎は由布の手を掴み、片方の手で口を塞いで由布を抱きすくめた。 しかし、与十郎はそれ以上は求めなかった。 しかも、半日ほどして、与十郎は家来に命じて由布の下女を寺に呼び寄せた。

 主水は、その夜、一睡もできず、翌朝、登城で玄関に出ると、与十郎がいて、昨日、井沢泰輔に話を聞かれたそうで何か分かりましたかと問う。 何も聞き出せなかったと主水が言うと、与十郎は、それは重畳でした、さもなくば弧竹先生と同様の目に遭われたかも知れたかもしれませんと言う。 弧竹先生は、昨夜、自宅に賊が侵入して絶命されたと聞いたと告げた。 そして、どうやら桐谷様の身辺には忌まわしい気が漂っておるようですので、奥方様に身を隠すようにお勧めしたのですと言う。

 主水は登城後に家老の執務室に行き、町奉行の大橋に、弧竹先生の死について尋ねた。他藩に聞こえが悪いので病で亡くなったことにしたと言う。 主水が、それがしを罪に陥れたいと思う方がおられるようで、弧竹先生の死亡も関わりがあるようだと言うと、家老は、気の迷いだと一蹴した。

(12) 与十郎は、少し自分の身の上を現わす。

 由布が家に戻りたいと言うと、与十郎は、貴女は父上の冤罪を晴らしたいと思われてしかるべきではないかと思っている。  

 それがしは、近しき者の事で桐谷様にいささか怨恨がござる。 ただし、いまのところ定かでなく、事の真偽を糺し、その上で恨みを晴らすべきかを見極めたいと考えております。 いうなれば、奥方様と同じ身の上と思っており、其れで援助したいと思っているのだと言う。そういって与十郎はゆっくりと由布の肩に手を掛けた。

(13) 落書の一件にある罠に微かな光明を見い出す。

 町奉行の大橋から落書の一件は諦めたのかと言われ、焦りがあったが、ふと思案が湧いた。

 弧竹先生の妻の藤は賢夫人の評判が高かったので、後世河原騒動と落書の件との関わりについて僅かなりとも聞いておられるかもと、弔問をしていなかったので、訪ねてみた。

 藤は昔話をした後、もし、再度、主水が訪ねてきて、全ての事を知りたいといえば、監物殿を訪ねればよいと主人が申しており、先日、桐谷様が帰られた後、監物殿に手紙を認めておられたので、監物殿も桐谷様がお出でになるのを待っておられるかもと言われた。

 主水は、暗闇に微かな光明を見出した気がして、弧竹先生の家を辞した。 門の外に与十郎がいて、武井辰蔵が領内に入ったことを知らせた。 主水は辰蔵が容易に領内に入れることを不審思っていた。

 由布から手紙が届いていて、家を出て、与十郎からいろんな話を聞かされ説得されたが、旦那様を信じていますと、由布の切々たる心底からの本心が書かれていた。

(14~16) 監物殿を訪ねる途中、主水は辰蔵と斬り合いになり、刺殺させた。

        自分も重傷を負うが、与十郎に助けられる。

 翌朝、町奉行の大崎に、監物殿を尋ねると告げて、独り、馬で行徳村に旅経った。

 行徳村に入ったところで辰蔵が待ち伏せしていた。 斬り合いになり、辰蔵を刺殺させた。 主水も重傷を負ったが、与十郎の助けで監物の屋敷に連れてこられて三日目に意識をとり戻した。 由布も駆けつけた。

 監物は主水と話をするときは、与十郎が同席してと約束しているので、もう少し待てと言う。 それは、与十郎は渡辺次席家老の四男で妾腹の子であったため早瀬家に養子に行ったのだ。それと次席家老は旧熊谷派だったからだと言う。

 

                                  つづく

 

 

 

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