goo blog サービス終了のお知らせ 

読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

静かなる大恐慌

2015年10月26日 17時21分07秒 | ■読む
柴山佳太著、集英社新書刊
経済学の専門書を読む気力も能力もないので、片端から初学者や一般向けの書籍を読み続けているうちに、少しずつ色々な知識が積み重なって来たように感じます。しかし、資本主義の限界と、市場の制御という、最も関心のある事柄に関しては、中々思う任せずに適当な書籍に出会えません。
そんな中で本書は、新たな世界を見せてくれました。著者の専門は経済思想と現代社会学だそうで、そうした学問分野故の問題意識が、本書の執筆の動機になっているのかもしれません。本書は2012年9月発行で、リーマンショックによる世界経済の不調の最中に書かれています。その後の著者の見通しが今の所外れているように見えます。
著者によれば、今日のグローバル化は最初ではなく、第一次グローバル化が第一次世界大戦の前にあり、それが行き過ぎ破綻して世界大戦に至ったとのことです。つまり、グローバル化が、各国の国内経済や政治に及ぼす影響が甚大で、やがて国々が国内経済を守る方向に揺れ戻す動きとならざるを得ないとの指摘です。確かに現実世界を見るとそのような政治過程が想定されます。
また、グローバル化が、国内産業の急速な構造の変化をもたらし雇用状況が悪化し国民生活が脅かされることから、福祉政策を充実せざるを得り、グローバル化は大きな政府を招来する必然性があること。2012年時点で、日本の歳入構造が内需ではなく輸出に大きく依存する状況にあるため、日本経済の動向は世界経済の不調に大きく影響を受けざるを得ないと指摘しています。
著者は、第二次グローバル化の終焉が予測されるが、「資本主義は終わらない」とし、ケインズが提唱した「投資の社会化」が今後の発展の鍵を握っていると考えています。現在の日本が、医療と同じように介護を社会システム化し、そのため、従来個人に委ねられていた個人の領域まで市場が浸食しています。しかしその一方で、失われた、あるいは失われつつある地域社会や知縁の再生を目指していることはその現れと評価できるのかもしれません。
経済学は、生態学などと同じように、現実の現象を注意深く観察し、現象の解釈を通して、対象の世界を概念として構築する学問なのかもしれません。それ故に不確かで興味の尽きない分野であると思います。
評価は5です。

※壁紙専用の別ブログを始めました => カメラまかせ 成り行きまかせ

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ギャラクシー街道/劇場映画 | トップ | トゥモローランド/DVD »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

■読む」カテゴリの最新記事