リチャード・ウィッテル著、鳥影社刊
本書はヘリコプターと固定翼機のハイブリッドである特殊な機体(ティルト・ローター機)の開発を巡る長い物語です。著者は、「ダラス・モーニング・ニュース紙のワシントン特派員として22年近くオスプレイについて断続的に記事を書いてきた」中で、「この問題が中絶をめぐる議論と似ていることに気づきました」と謝辞で述べています。つまり客観的な事実に基づく議論は出来ないだろう、と気付いたのではないかと思います。そして「いつものとおり、良いことと悪いことの双方を取り上げ・・・」としていますが、本書は正しくその通りの記述であったと思います。
600頁余の長大な記述は、著者が入手した記録と関係者へのインタビューによって厳密に検証しつつ述べており、根拠が巻末に列挙されています。膨大な資料から、現実に起きた事象を取捨選択し、オスプレイとして実戦配備されるまでの起伏に富んだ経緯を物語った手腕に敬意を覚えました。
「2006年の秋に、このプロジェクトを初め」てから「2009年の初めに原稿を改訂し終わる」まで、著者は「本」以外のことをほとんど話したり、考えたりできなくな」ったのだそうです。濃密な二年数ヶ月であったことでしょう。
本書のタイトル「ドリーム・マシーン」は、本書の主人公とも言うべきディック・スパイビーがキャリアを賭けて実現に努力し、やがて、海兵隊や国会議員などの関係者をも巻き込んだ「夢」と言うべきティルト・ローター機を表現するに最適であると思います。
実は本書を読むまでは、アメリカ軍が日本に本機を配備する際に、その安全性を巡って騒ぎになったこと、さほど技術的なハードルが高くないのではないか、運用上のメリットは何かという3つの疑問がありましたが、本書でそれらはすべて解消しました。
客観的でありながら穏やかな著者の視点による記述は経緯の描写が主なので、読み通すのに若干苦労しましたが、読了して良かったと思います。そのような著作でありながらも、何度か共感し感動しました。現在も自衛隊機としての配備に懸念を示す声が上がっているようですが、事実に基づいた主張なのか、思い込みや主義主張によるものなのか、私は懸念を覚えます。
-----------------------------------------------------
URL => https://ja.wikipedia.org/wiki/V-22_(航空機)
-----------------------------------------------------
評価は5です。
※壁紙専用の別ブログを公開しています。
=> カメラまかせ 成り行きまかせ
=> カメラまかせ 成り行きまかせ その2
本書はヘリコプターと固定翼機のハイブリッドである特殊な機体(ティルト・ローター機)の開発を巡る長い物語です。著者は、「ダラス・モーニング・ニュース紙のワシントン特派員として22年近くオスプレイについて断続的に記事を書いてきた」中で、「この問題が中絶をめぐる議論と似ていることに気づきました」と謝辞で述べています。つまり客観的な事実に基づく議論は出来ないだろう、と気付いたのではないかと思います。そして「いつものとおり、良いことと悪いことの双方を取り上げ・・・」としていますが、本書は正しくその通りの記述であったと思います。
600頁余の長大な記述は、著者が入手した記録と関係者へのインタビューによって厳密に検証しつつ述べており、根拠が巻末に列挙されています。膨大な資料から、現実に起きた事象を取捨選択し、オスプレイとして実戦配備されるまでの起伏に富んだ経緯を物語った手腕に敬意を覚えました。
「2006年の秋に、このプロジェクトを初め」てから「2009年の初めに原稿を改訂し終わる」まで、著者は「本」以外のことをほとんど話したり、考えたりできなくな」ったのだそうです。濃密な二年数ヶ月であったことでしょう。
本書のタイトル「ドリーム・マシーン」は、本書の主人公とも言うべきディック・スパイビーがキャリアを賭けて実現に努力し、やがて、海兵隊や国会議員などの関係者をも巻き込んだ「夢」と言うべきティルト・ローター機を表現するに最適であると思います。
実は本書を読むまでは、アメリカ軍が日本に本機を配備する際に、その安全性を巡って騒ぎになったこと、さほど技術的なハードルが高くないのではないか、運用上のメリットは何かという3つの疑問がありましたが、本書でそれらはすべて解消しました。
客観的でありながら穏やかな著者の視点による記述は経緯の描写が主なので、読み通すのに若干苦労しましたが、読了して良かったと思います。そのような著作でありながらも、何度か共感し感動しました。現在も自衛隊機としての配備に懸念を示す声が上がっているようですが、事実に基づいた主張なのか、思い込みや主義主張によるものなのか、私は懸念を覚えます。
-----------------------------------------------------
URL => https://ja.wikipedia.org/wiki/V-22_(航空機)
-----------------------------------------------------
評価は5です。
※壁紙専用の別ブログを公開しています。
=> カメラまかせ 成り行きまかせ
=> カメラまかせ 成り行きまかせ その2
つたない翻訳にもかかわらず、著者のリチャード・ウィッテルが訴えたかったことを読み取っていただき、大変ありがとうございます。
今年は、いよいよ日の丸オスプレイが日本の空を羽ばたく姿が見られそうです。
少しでも多くの方が、ドリーム・マシーンを通じて、オスプレイへの理解を深めていただければ、と思っています。