今日も小さな取引が完了した。
「本日届きました」と購入者の方からコメントがあった。普通はその後に「ありがとうございました」と続いて終わるはずのコメントには続きがあった。
取引した商品は、紙風船と竹とんぼのセットだった。日本の古くからある懐かしい玩具だが、メイド・イン・チャイナだった。
購入者の方から「竹とんぼが不良品でした」と指摘があった。
竹とんぼは、軸とプロペラ部分が分離して、袋の中に収まっていた。未使用品だったので、開封せずにそのまま保護材などで梱包して発送したものだ。
購入者の方曰く、「軸とプロペラの穴が合わず竹とんぼとして成立しなかった。紙風船はちゃんとふくらみ楽しめた。中国製だから仕方ない」ともあり、「一応お知らせします」と、柔らかな雰囲気で文章は終わっていた。
私は慌てて謝罪のコメントを送った。
未開封品だった為、不良品である事を把握していなかった事。今後はよく確認をしてから出品する様にする事。不快な思いをさせてしまったにもかかわらず、優しいコメントであった事へのお礼と謝罪をした。
私の送ったコメントに対しても、その方は、「これを教訓に私も出品の際には気をつけたい」といったコメントを返してくれた。
金額的には小さな取り引きだったが、購入者の方が良い方で良かったなあと胸をなでおろした。
夕食を終え、テレビを見ているうちにうたた寝をし、目覚めた時に頭に浮かんだのは、竹とんぼの件だった。
自分でも全く気づかないうちに、心の中に無意識に引っかかっている事柄がある時、時が経つうちに明確になる事がある。
「中国製だから仕方ない」
不良品が多いイメージがあるけれど、竹とんぼとして成立しない商品を売るだろうか?
メイド・イン・チャイナではあったが、確か販売元は日本の会社だったはず。
竹とんぼは、私も子供の頃遊んだことがある。そこで思い出したのは、竹とんぼには2種類あるという事だ。
軸とプロペラがくっついたタイプと、もう一つは軸にプロペラを置き、軸を回転させて、プロペラだけを飛ばすタイプ。
購入者の方のコメントを読み直してみた。すると、「竹とんぼの軸の方の2つに分かれた部分が小さすぎ、羽の部分の穴が大きすぎる」とあった。間違いない。プロペラ部分だけ飛ぶタイプだ。
私は竹とんぼをまだ捨てていない事を祈りながら、再度コメントをしてみた。
すると、「竹とんぼは軸がくっついたものだと思い込んでいました、そういうタイプもあるんですね。また、不良品と思い込み失礼しました」と、返信が来た。
結局、長いコメントのやり取りを経て、お互いが満足の行く気持ちの良い取り引きで終える事が出来た。
私がフリマアプリに掲載した紙風船と竹とんぼを買ってくださった、顔も知らないどこかの誰か。
コメントにお人柄が表れていて、きっと、とても素敵な方に違いないだろうなと思った。