鹿の庵

鹿の書いた小説の置き場所です。
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第20話 初めての奉仕

2009年09月25日 21時54分24秒 | オリジナル
<今話は一部に性描写を含みます。18歳未満の閲覧はご遠慮下さい>

 二人とも隔離区画に住むようになったからか夕食の場所が近場に変わった。食堂の広さもテーブルの大きさも小さくなったけど、並んだ椅子同士の距離が狭くなった方が重要だ。

 座った状態での距離は肩が触れ合うぐらい近くて、それ自体も嬉しいが食事を始めると、俺が不器用なのと距離が近いのが合わさり、ヒスイさんの胸に肘が当たってしまう。ワザトジャアリマセンヨ。

「あっと、すみません……」
「トシ様のお傍に居たいので……構いません」

 恥ずかしそうに俯きながらもそんな事をのたまうヒスイさん。俺を萌え殺す気ですか!? 本当に触れ合うのが好きみたいで肩や肘がぶつかると、ほんのり嬉しそうな顔をするので食べちゃいたくなる。

 いっそ肘で胸を突きまくってしまいたくもなるし、それはそれで受け入れられそうな気もするけど、エスカレートした挙句に理性が消し飛ぶのが目に見えているから自制した。

 ところが肘を気にした姿勢で食事をしている俺を見て、楽しそうだったヒスイさんが一気にしょんぼりしてしまった。たぶんだけど、調子に乗ったと反省しているんだろう。

「申し訳ありません。ご迷惑でしたね……」
「いやいや、迷惑なんて事は有り得ませんからっ!」

 まいったな、この状況を解決しつつヒスイさんに喜んで貰うには……。

「もういっそ、あ~んを希望しますっ!」

 俺はヤケクソ気味に『はい、あ~ん』について説明をした。と言っても食べさせる時に合図の言葉を追加するだけだ。でも、なんとなくヒスイさんが気に入りそうな予感がしたのだ。

「とっても素敵ですっ! 是非ともさせてくださいっ!!」

 予想通りと言うか、予想以上の勢いでやる気になってくれた。

「はい、あ~ん♪」
「あ、あ~ん」

 それにしても初日に食べさせて貰った時よりも照れる。気持ちの変化と言葉の追加効果を甘く見た。ヒスイさんが満面の笑顔でやってくれている以上は、今更やめるとは口が裂けても言えないけどね。

 肘の問題は一応解決したけれど『はい、あ~ん』も習慣化した。




 俺は夕食後に話が有るとヒスイさんを自室に誘った。何気に夕食後の時間帯にヒスイさんが俺の部屋に入るのは初めてだ。これは恋人を自分の部屋に連れ込んでる状態なのでは……。

 そんな事を考えていると余計に緊張して来たし、俺の後ろを静々と付いて来てくれるヒスイさんにも緊張感は伝わっているだろう。もう行くところまで行ってしまいそうな雰囲気になっている。

 そうこうしながらもヒスイさんを自室に迎え入れ、テーブルの方と少し迷ったけどベッドに座る。ヒスイさんも俺の右隣に腰掛けてくれた。肩も腰も簡単に引き寄せられるし、押し倒すのも簡単な距離だ。

 これから話す内容を思うと緊張して手を固く握り締めてしまう。昼からずっと上手い言い方がないか考えていたけど、結局はお互いの気持ちしだいな訳で開き直って話してみるしかない。

「凄く自分勝手な話なのですが、なるべく最後まで聞いて欲しいです」
「聞かせて下さい。トシ様のお考えを知りたいです」

 そしてヒスイさんは力が入り過ぎて震えている俺の手に、レースの長手袋に包まれた細くて柔らかい手をそっと重ねてから、ゆっくりと何度も撫でてくれた。お蔭で緊張が和らぎ強張った手も解れた。

 こんなに良く出来た彼女はどの世界を探しても他に居ないだろう。こちらの機微を直に察してくれて、俺の身に余る好意で応えてくれる。そんなヒスイさんが相手だから、みじめな本音も白状できる。

「私は戦える事を証明するまで、自分に自信が持てそうにないんです。
 今もヒスイさんが欲しくて堪らないのに、
 もし期待を裏切る結果になったらと思うと、
 どうしても踏ん切りを付ける勇気が出ません」

 この迷い自体、ヒスイさんが受け入れてくれる事が前提だ。

「そういう訳で、私が勝手に我慢しているだけなのですが、
 触れ合う事で感情が高ぶると、欲求を押えつけるのが辛いんです。
 何度も、なし崩し的に押し倒してしまいたくなりました」

 勝手に我慢して勝手に板挟みになって、勝手に苦しんでる。

「しかし、抑制の為に距離を取る方法は選びたくありません。
 そこで考えたと言いますか、欲望そのままの望みなのですが、
 最後までしない形で欲求を解消できればと……」

 つまり抱く度胸はないのに性欲は発散したいと言っている上に、結局は具体的な事を口に出してない訳で何重にもいろいろと情けな過ぎる。流石に愛想を尽かされそうで怖い。

 とか思いつつも、ヒスイさんならばと期待していたりもする……。

「トシ様のご心痛を、わたくしは重く受け止めていなかったと思います。
 気持ちが通じたから恋仲になったからと、そのつどに浮かれ……。
 ご負担になる言動を繰り返してしまい、申し訳ありませんでした」

 って、なんでヒスイさんが謝る流れになっているんだ?

「いやいや、ヒスイさんは全く悪くないですよ。私に問題が……」
「恋人同士なのですから、二人の問題だと思わせてください」

 俺が一方的に責任を感じるのも独り善がりだったのか……。

「ですから、トシ様に悩みを打ち明けて貰えた事がとても嬉しいのです」

 優しい声に誘われて右側を向くとヒスイさんが微笑んでいた。

「それに距離を取る方法を選ばれなかった事に、心から安堵しました。
 もしそうなっていたら、わたくしは悲しくて……寂しくて……。
 泣きながらトシ様に縋り付いてしまったと思います」

 相変わらずヒスイさんは俺の身勝手をフォローしてくれる。

「それは私が、ヒスイさんと離れる事に耐えられないからなんです」
「そういうところも大好きなんですよ。今後もお傍に置いてください……」

 いろいろと堪らなくなった俺は右手でヒスイさんを抱き寄せた。

「ヒスイさんが望んでくれる限り、一生でも一緒にいます」
「いつまでも望み続けますから、とこしえに離さないでくだ、ぁんっ」

 その言葉が終わるのさえ待てずに俺はヒスイさんの薄桜色の唇に貪り付いた。左手でヒスイさんの頭を引き寄せるようにして、ひたすらに柔らかくてプルプルした唇の感触を味合う。とんでもなく美味しい。

 強引にキスしたのに少しも嫌がる素振りがないヒスイさんは、すぐに身体から力を抜いて受け入れてくれた。左手に触れる髪の毛のさらさらした手触りも良いが、右手で引き寄せている腰を撫で回すのも堪らない。

「ふぁ……あむっ……ぅん、ん、んふぅ……はむっ……はぁんっ……」

 興奮を抑えきれずに左手も引き寄せると唇の柔らかい感触が増してさらに甘美だ。ただ、あまりの気持ちよさに射精してしまいそうになり、断腸の思いで唇を離したけど名残惜しい事この上ない。

 キスが終わった後にゆっくりと目を開く仕草も、この上なく色っぽい。

 その後はキスで乱れた息を整えながらも見詰め合う。これほど激しいキスをしたのは初めてだ。そしてヒスイさんは潤みきった瞳で俺を見詰めながら、俺の欲望を叶える言葉を口にしてくれた。

「わたくしは……。その、はしたない女だと、思わないでください、ね?
 トシ様さえ望んで下さるのならば、どのようなご奉仕でもして差し上げたいです……

 ぐわぁっ! 不安そうに上目使いで懇願されるのって強烈過ぎだ。後半は俺の耳元にヒスイさんが口を近づけて消え入りそうな声で囁いてくれた。それにしても『奉仕』って単語は破壊力が高すぎる。

「……手で、してくれますか?」

 俺の欲望丸出しな要望に対してヒスイさんは羞恥に頬を染めながらも可愛らしく微笑んで、コクリと頷いてくれた。もうね、愛しすぎて頭がおかしくなりそうだよ。どんだけ健気なんだ。

 そしてヒスイさんは準備の為に高級そうなレースの長手袋を脱ごうとして苦戦してる。普段の所作は洗練されていて完璧なのにこういう事ではたどたどしいとか、どんだけ俺を萌えさせる気なんだろう。

 俺の方はと言うと性欲が羞恥心を遥かに上回っているのと、もう股間が窮屈で我慢できなかったのでズボンと下着を一気に脱いで下半身を露出させた。横から僅かに息を飲んだような気配を感じる。

 露出させたブツはかつて無い程に激しく勃起していて、ガチガチを通り越してビキビキになっている。亀頭は大量に出続けている先走りでテカテカに光っていて、自分で見ても凶悪すぎると思うぐらいだ。

 自慰の時はもう少し大人しいフォルムなのに興奮の度合いでここまで変化するとは……。角度もへそに届きそうとまでは言わないけど、その表現が比喩として通用するぐらいまでにせり上がっている。

 いまさら嫌がられるとは思いたくないけど、これは慣れるまで待ったりする時間が辛いかなと思ってヒスイさんの様子を伺うと、俺を安心させる為にだろうか、はにかみながらも微笑んでくれた。

 手袋を脱ぎ捨て素肌を曝した腕は、白磁とも比較にならない程に白く透き通っていて正に王族の御手に相応しく。手の甲にでも口付けを許されるならば終生忠誠を誓う。と思わせるには充分な高貴さを放っている。

 これほどに流麗な手を俺の醜悪な男根に触れさせても良いものかと大いに迷うが、手が綺麗すぎるからって止めるのは違うと思うし、ヒスイさんが嫌がっていないからと自己正当化する。

 ここまで来ると例え嫌がられても止めれる自信は全くない。それどころか嫌がられたりしたら逆上して、無理矢理にでも最後までしちゃいそうな気がする。そうなりそうになったら、《転移》でも使って距離を取ろう……。

 とまあ、俺が躊躇を思考で誤魔化している僅かな間にヒスイさんの覚悟は固まったようで、「失礼します」と囁いてから恐る恐るといった手付きながらも、左手を伸ばして俺の男根に触れてくれた。

 ヒスイさんの長く美しい指が先走り汁で汚れるのさえも厭わず、俺の男根を優しく撫でさすってくれている。その柔らかくもすべらかな指の感触に俺は本当に息が止まりそうになった。

 さらに鈴口から止め処なく滲み出すガマン汁が、ヒスイさんの指を次々と汚していく様は高潔な存在を穢しているようで、強い罪悪感を覚えると同時に背徳感で背筋がゾクゾクする。

 ヒスイさんは濡れて滑りが良くなった指で形を確かめるように上から下へと肉棒を撫で回し、それから硬さを確かめるようにゆっくりと指に力を込め俺の肉棒を握り締めてくれた。感動で思わずうめいてしまう。

「ヒスイさんが、俺のをっ……」
「これが……トシ様の生殖器……」

 その呟きに嫌悪の響きは感じられず、むしろ深い愛情を感じた。

「とても苦しそうです……すぐ楽にして差し上げますね……」

 続く労わりに満ちた声を聞いて緊張が解れて来ると不安に割かれていた意識が快感に向く。さらに肉棒を握った手を上下に動かして、ヒスイさんが俺の肉棒を扱いてくれているのだから童貞の俺は一溜まりもない。

「あぁ……くっ、出そうですっ!」
「どうぞ存分に、わたくしの手に出してください……」

 俺がうわずった声で叫ぶと暖かい息と共に耳打ちされた。そんな事を言われたら最後、理性が消し飛ぶのも当然だ。もう俺は射精する事だけを考えてヒスイさんが与えてくれる極上の快感に目を閉じて集中した。

 左手の動きが徐々に速まって行くのと平行して右手で亀頭を包み込むよう握ってくれた。さらにヒスイさんは右手にも先走り汁をまぶしてから優しい手付きで括れの下を擦ってくれて、それが最後の止めになった。

「――――っ!」

 俺は歯を噛み締めて声無き叫びを上げながら欲望を解き放つ。

――ぴくっ、どくっ、びくっ、ぐちゅっ、ぴじゅっ、ぬちっ。

 絶頂感が強すぎて目も開けられないが自慰とは比較にならない速度で精液が尿道を通過して行き、吐き出された精液はもの凄い勢いで次々とヒスイさんの手に当たって掌に溜まって行く。

 自慰と違い受け止めてくれる相手がいる充足感と、遂にヒスイさんの手を先走りだけではなく、自分の精液でも染め尽くした事による征服感とが相乗効果で更なる射精を促し、それがまた快感を持続させた。

「ふぅー、はぁー、ふぅー、はぁー」

 俺は興奮でろくに呼吸もできなかったので荒い息をなんとか整えようとして深呼吸をする。必然的に精液の匂いが鼻に付いたけれど、普段と違って不思議にも臭いとは感じなかった。

 思いのほか長く感じた至福の時間は過ぎ去り睾丸に溜まっていた全ての精液をヒスイさんに右手に吐き出し終えたので、俺は快感の余韻に呆けながらも何とか目を開けてヒスイさんの様子を伺う。

 すると、あちらも俺の様子が気になっていたようで目が合った。恥ずかしい所を見せてしまったから羞恥で顔が熱くなるのを感じたけど、ヒスイさんの不安に揺れる瞳を見ては黙っていられない。

「最高に気持ちよかったです。ありがとうございました」
「安堵いたしました……。喜んで貰えて嬉しいです♪」

 正直に感謝するとヒスイさんは見るからにホッとした様子で、一度深く息を吐いてから表情を緩めた。出した精液の量からすれば気持ちよかったのは一目瞭然だと思うけど、心配性な所もいじらしくてかわいい。

 ヒスイさんの両手は未だに俺の肉棒を優しく握ったままだ。改めて見てみると右手は一度の射精量とは思えないほどの白濁液でドロドロになっているし、左手もカウパー腺液に濡れテカテカしてる。

「……初めて見ましたけれど、不思議な液体ですね」

 俺の視線に誘われてかヒスイさんは興味深そうに精液を見ながら呟いた。まじまじと見られると気恥ずかしいけど、やはり初めて発言を聞くと嬉しさと安心感が込み上げて来る。

 見た事もなければ射精量で気持ちよさを推測できなくて当然だ。それにしても気持ちの高ぶりが落ち着いて来たせいか、精液まみれになったヒスイさんの手に対して、罪悪感がふつふつと沸いてくる。

「こんなに汚してしまって、すいません」
「トシ様の子種ですから、大切に思いこそすれ汚いなんて思えません」

 一旦は収まっていた欲望が、その言葉で膨れ上がった。

「……軽く絞るようにしてくれますか?」
「こうでしょうか……?」

 ヒスイさんのドロドロでテカテカな両手が動いて、尿道に残っていた僅かな精液も搾り出してくれた。射精直後で少し柔らかくなった肉棒を、ぬるぬるの両手で丁寧に弄られる陶酔感は堪らないものがある。

 そして何よりも俺の精液に対して微塵の忌避感もない様子が嬉し過ぎる。さらに、これだけエロい事をしているのに可愛らしく小首を傾げる仕草はお姫様のそれで、気品と清楚さには些かの翳りも見えない。

 肉体的にも精神的にも心地よいとなれば一回イッタ程度は簡単に回復する。ヒスイさんさえ良ければこのまま続けてくれるように頼もうかと思ったところで、申し訳なさそうに切り出された。

「よろしければ一先ず準備をする為、自室へ戻りたいのです。
 十分ほど後に、わたくしの部屋を訪ねて戴きたく思います」

 正直なところ一分でも長く感じそうだけど、ヒスイさんにだって都合があるだろうから仕方ないと考えていたら、俺がよっぽどガッカリしているように見えたのか、取り下げようとされたので慌てて承諾する。

「トシ様がお辛いのでしたら、このまま……」
「あっ、いえ、解かりました。十分後に伺います」

 俺の意思を優先してくれるのは凄く嬉しいけど、今後はなるべく即答するように気をつけよう。それにヒスイさんの都合というより、たぶんだけど主に俺の為なんだろうと思う。自惚れかもしれないけど。

 しかし、この体液だらけの惨状をどうしたものかと思っていると、ベッド脇の棚にタオルが入っていると教えて貰えた。ヒスイさんの手の感触が名残惜しいけど余韻でふらふらの脚を叱咤して取りに行く。

 棚にはいろんな肌触りのタオルが沢山入っていたので二人して情事の後始末をする。なんとも微妙な空気で少し恥ずかしかったけど、前戯だけとはいえ確かにヒスイさんとエッチをしたんだとの実感が沸いて来た。

「……では、失礼致します。先に自室で待っていますね」
「はい。また十分後に……」

 ヒスイさんは優雅に礼をすると、そそくさと出て行ってしまった。いつもは何度も振り返ってくれるので少し寂しい。しかし、冷静に考えると十分は短いから何かを準備するにはギリギリなんだろう。

 なるべく俺を待たせない為の時間設定なのだ。これだけ想われていて我侭を言ったら罰が当たる。時間潰しはさっきの棚でも見てみよう。自分の部屋とはいえ居候の身だからと今まで特に調べなかった。

 結果――用途不明の物までイロイロと入ってた。見なかった事にする。



続く

【前話 侍医の診察】 【目次】 【感想掲示板】 【次話 手淫と子種】


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